【週間為替レポート】2025年8月第2週の振り返りと第3週の展望|ドル円161円台での攻防と円安長期化リスク

【週間為替レポート】2025年8月第2週の振り返りと第3週の展望|ドル円161円台での攻防と円安長期化リスク


はじめに

2025年8月第2週(8/11〜8/15)の為替市場は、ドル円が161円台に到達し、円安圧力が継続した週となりました。米国の経済指標が引き続き堅調である一方、日本国内では景気減速懸念や賃金の伸び悩みが意識され、金融政策の方向性に大きなギャップが生じています。

また、欧州ではドイツ経済指標の弱さが浮き彫りとなりユーロ売りが優勢に。一方で、英国・豪州・カナダなどは比較的堅調な動きを見せ、**「円独歩安」**という相場構造が鮮明化しました。

本稿では、まず8月11日週の為替動向を主要通貨ごとに振り返り、そのうえで8月18日週の展望をファンダメンタルズとテクニカル両面から分析します。


1. 先週の為替市場の動向(8/11〜8/15)

◆ ドル円(USD/JPY):161円突破で歴史的円安が続く

  • 始値:160.25円

  • 高値:161.68円

  • 安値:159.92円

  • 終値:161.42円(週足+1.17円)

ドル円はついに161円台に定着しました。きっかけは、8月14日に発表された米7月小売売上高が予想(前月比+0.4%)を大きく上回る+0.7%となったこと。さらに、米10年債利回りが4.4%台へ上昇し、ドル買いを後押ししました。

日銀の金融政策は依然として緩和スタンスが続いており、短期金利はマイナス圏。市場では「為替介入の可能性」が意識されつつも、実際のアクションはなく、投機筋による円売りポジションの積み増しが進んだ格好です。


◆ ユーロ円(EUR/JPY):ドイツ経済指標の弱さでユーロ売り、ただし円安が勝る

  • 始値:174.85円

  • 高値:176.22円

  • 安値:173.48円

  • 終値:175.40円(週足+0.55円)

ユーロは対ドルでは弱含みました。特に、8月13日に発表された**ドイツZEW景況感指数(8月)**が予想を下回り、ユーロ売りが広がりました。しかし円に対しては依然として円安トレンドが強く、175円台を維持。

ECB(欧州中央銀行)は9月に利下げを行うとの観測が強まっており、今後ユーロの上値は限定的になりそうです。


◆ ポンド円(GBP/JPY):インフレ懸念が根強くポンド堅調

  • 始値:209.18円

  • 高値:211.75円

  • 安値:208.60円

  • 終値:211.22円(週足+2.04円)

英国の7月雇用統計は賃金上昇率が依然として前年比+5.5%と高止まり。BOE(イングランド銀行)は利下げに慎重姿勢を崩さず、ポンドは買われました。円に対してはさらに強さを見せ、211円台に到達

テクニカル的にも200日移動平均線を大きく上抜けしており、次は212円台突破が焦点となります。


◆ 豪ドル円(AUD/JPY):中国支援策と鉄鉱石価格上昇で底堅い

  • 始値:107.55円

  • 高値:109.02円

  • 安値:107.12円

  • 終値:108.68円(週足+1.13円)

中国政府が不動産市場の安定化に向け追加支援策を発表し、中国株が上昇したことから、豪ドルはリスクオンの流れに乗りました。資源価格も堅調で、豪ドル円は109円目前まで上昇


◆ カナダドル円(CAD/JPY):原油価格の上昇に支えられる

  • 始値:118.15円

  • 高値:119.85円

  • 安値:117.60円

  • 終値:119.42円(週足+1.27円)

WTI原油価格が83ドル台まで上昇したことで資源国通貨が堅調。カナダドルは対ドルで強含み、円に対しても大幅上昇。心理的節目となる120円台突破が目前となっています。


2. マーケットを動かした主な要因(8/11〜8/15)

● 米国:利下げ後ずれ観測がドルを支える

米経済は引き続き堅調。小売売上高や消費者信頼感が予想を上回り、FRBの9月利下げ観測は後退。結果、米長期金利は上昇し、ドル買い要因となりました。

● 日本:円安放置に市場の苛立ちも

政府・日銀は為替に関して発言を繰り返すものの、実際の介入はなく、市場では「口先介入だけで実効性がない」との見方が広がっています。結果的に投機筋は円売りを加速。

● 欧州:ユーロ圏景気後退懸念

ドイツを中心に経済指標が弱含み、ECBの利下げ観測が強まったことでユーロ売り。円に対しては依然として円安が優勢だが、対ドルでは軟調。

● コモディティ市場:原油・資源高が資源国通貨を支援

WTI原油が83ドル台に乗せ、鉄鉱石・石炭価格も堅調。これにより、豪ドル・カナダドルが底堅く推移。


3. 来週(8/18〜8/22)の為替市場展望

◆ 注目経済イベント

日付 指標・イベント 重要度
8/19(火) 日本 第2四半期GDP速報 ★★★★
8/20(水) 英国 消費者物価指数(CPI) ★★★★★
8/21(木) 米国 新規失業保険申請件数 ★★
8/22(金) 米国 PMI(製造業・サービス業)速報 ★★★★
8/22(金) 米国 ジャクソンホール会議(パウエル議長講演) ★★★★★

来週は米ジャクソンホール会議が最大の注目材料です。パウエル議長が利下げ時期について言及する可能性があり、相場の方向性を決定づける要因となるでしょう。


◆ ドル円:162円突破なるか、それとも調整か

短期的には上昇圧力が強いものの、162円手前には実需の売りオーダーが厚く、介入警戒感も高まっています。ジャクソンホールでパウエル議長が「利下げを年内に実施する可能性」に触れれば、ドル円は一時的に反落する可能性も。

見通し:160.80〜162.20円レンジ、上昇一服の可能性も意識


◆ ユーロ円:ECB利下げ観測が重石

ユーロは引き続き対ドルでは弱含み。ただし円安が続いているため、下値は限定的。来週は175円〜177円のレンジでの推移が有力。

見通し:174.80〜177.20円レンジ、上値重い展開


◆ ポンド円:CPI次第でさらなる上昇も

8/20のCPIが高止まりすれば、BOEのタカ派スタンスが意識され、212円台突破の可能性。一方、インフレ鈍化が鮮明となれば、ポンド売り・円買いの調整も。

見通し:209.50〜213.00円レンジ、イベントリスク大


◆ 豪ドル円:中国経済とリスクオン次第

中国の追加刺激策が続けば豪ドルはさらに買われ、109円突破も現実味。ただし、中国株が再び売られると豪ドルは弱含む可能性も。

見通し:107.80〜109.80円レンジ、上昇バイアス


◆ カナダドル円:原油高が続けば120円突破へ

原油相場が堅調なことに加え、カナダ経済も安定しているため、120円突破トライが見込まれる。ただし、ドル円が調整に入れば一時的に上値が抑えられる可能性も。

見通し:118.50〜120.50円レンジ、資源高が追い風


4. 投資家向け戦略と注意点

  1. ドル円は高値警戒感強まるも、流れは依然円安

    • 介入警戒感はあるものの、根本的な金利差が解消されない限り円安は続く可能性が高い。

  2. イベントリスクを意識

    • 英CPI、米ジャクソンホールは大きな値動きを誘発する可能性が高いため、ポジションは小さめに調整するのが賢明。

  3. クロス円は押し目買いが有効

    • 特に豪ドル円・カナダドル円は資源市況に支えられ、調整局面では買いの好機となりやすい。


まとめ:円安はさらに続くのか、それとも転換点を迎えるのか

2025年8月第2週は、ドル円が161円台に突入する歴史的円安局面となりました。背景には日米金利差拡大がある一方、日銀・政府の対応は依然として後手に回っており、市場は円売りを加速しています。

しかし来週は、米ジャクソンホール会議英国CPIといった重要イベントが控えており、相場は一方向ではなく上下に振れる可能性が高まっています。トレーダーは円安の流れを基本シナリオとしつつ、イベントドリブンの急変動に備える柔軟な戦略が求められる1週間となるでしょう。

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