2025年5月1日の外国為替市場では、米ドル/円(USD/JPY)相場が再び大きく動きました。米中関係の改善期待と堅調な米経済指標、そして日銀のハト派姿勢を背景に、ドル円は145円後半まで上昇。ユーロ/ドル(EUR/USD)もドル高の影響で軟調に推移しました。本記事では、これらの動きをファンダメンタルの観点から振り返りつつ、2025年5月2日の展望を示します。
◆ 2025年5月1日(木)の為替市場:ドル円は145.92円まで上昇、円売りが加速
1日の為替市場で特に注目されたのはドル円の動向です。前日まで144円台後半で推移していたドル円は、東京時間からじわじわと上昇し、ロンドン時間・ニューヨーク時間にかけて145.92円をつけました。
このドル高・円安の背景には複数のファンダメンタル要因が重なっています。
▶ 米中貿易交渉の進展報道がリスクオンを誘発
米国と中国の間で進展が見られるとの報道があり、グローバル市場ではリスクオンの動きが強まりました。株式市場は堅調に推移し、リスク回避的な円買い圧力が後退。代わりにドルや高金利通貨への需要が高まったことが、ドル円を押し上げました。
▶ 米経済指標の堅調推移でFRBのタカ派姿勢が意識される
4月のISM製造業景況指数は前月比で上昇し、市場予想を上回る結果となりました。また、先週分の新規失業保険申請件数も堅調な水準にとどまっており、米国経済が依然として底堅さを維持していることが確認されました。
これを受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)が早期利下げに踏み切る可能性が低下し、利上げ継続あるいは据え置きの可能性が高いとの観測が再浮上しました。これが米金利の上昇とドル買いを誘引しています。
▶ 日銀の成長見通し下方修正とハト派スタンス維持
日銀は4月末の金融政策決定会合で政策金利の据え置きを発表した上で、2025年度の成長見通しを下方修正しました。このことは、日本経済の先行きに慎重な姿勢を強めたと解釈され、日銀が年内の利上げに踏み切る可能性はさらに低下したと見られています。
このハト派的な見通しが市場に円売り圧力をもたらし、ドル円の上昇に拍車をかけました。
◆ ユーロドルは1.12ドル前半まで下落
ユーロドルは、米ドルの全面高の影響を受けて1.12ドル台前半まで下落しました。ユーロ圏では、ドイツの製造業PMIなど複数の経済指標が予想を下回り、景気減速懸念が広がっています。一方でECB(欧州中央銀行)は、インフレ低下傾向を背景に早期利下げに踏み切る可能性も指摘されており、ユーロ売りの地合いとなっています。
◆ 2025年5月2日(金)の為替展望:注目は米雇用統計と146円の壁
本日、5月2日は米国の4月度・非農業部門雇用者数(NFP)の発表が予定されており、為替市場では最大の注目イベントとなっています。この指標の結果次第で、FRBの次の一手に対する市場の見方が大きく変わり得ます。
▶ ドル円は146円突破の可能性
もし本日のNFPが市場予想(+18万人程度)を上回る内容であれば、FRBの利上げ長期化観測が強まり、ドル円は一段高となる可能性があります。146円は2024年末以来の高値圏にあり、テクニカル的にも注目される水準です。
一方、雇用統計が予想を下回るような弱い内容であれば、ドル売り・円買いに転じる可能性があり、145円を割り込む展開も想定されます。
▶ ユーロドルは方向感欠くも、ドル主導での推移
ユーロドルについては、欧州の経済指標に乏しいことから、米ドル主導の展開になると見られます。NFPが強ければユーロドルは1.11ドル台後半に向けて軟化、逆にNFPが弱ければ1.13ドル台回復を試す動きとなる可能性があります。
◆ 主要通貨ペアのファンダメンタル材料(2025年5月2日時点)
通貨ペア | 上昇要因 | 下落要因 |
---|---|---|
ドル円(USD/JPY) | 米中貿易交渉の進展 米経済指標の堅調 日銀のハト派姿勢 |
米経済指標の下振れ 地政学リスクの高まり |
ユーロドル(EUR/USD) | 米経済指標の堅調 FRBのタカ派姿勢 |
米経済指標の下振れ ユーロ圏の経済減速 |
◆ 結論:本日の注目は米雇用統計、ファンダメンタルズの変化に敏感な1日
2025年5月2日は、米国雇用統計というビッグイベントを前に、神経質な展開が予想されます。ドル円は146円の節目を上にブレイクするかどうか、ユーロドルは1.12ドル台を維持できるかが焦点です。
中長期的には、各国中央銀行の政策スタンスや経済成長率の格差、そして地政学リスクの行方が為替市場の方向性を決定づける要因となります。日々の値動きに惑わされず、経済の本質を見抜くファンダメンタル分析を軸に、冷静な判断を下すことが求められます。
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