ゴールデンウィーク入りした日本を横目に、2025年5月第1週の為替市場ではドル円が一時145.80円台をつけ、年初来高値を更新。クロス円全般でも円売りが進行し、市場は日本の金融政策と米国の金利動向の綱引きに明け暮れました。
本稿では、今週の主要通貨ペアの動向とファンダメンタルズ要因を振り返り、来週(5月6日〜)の展望をお届けします。
◆【1】今週の為替市場まとめ(4月29日〜5月3日)
▶ ドル円:日銀のハト派スタンスと米景気指標がドル高・円安を加速
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週初(4/29):ドル円は144.30円台でスタート。日本は祝日で薄商い、米株反発やリスクオンの流れによりじわじわ円売り。
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4月30日(火):米消費者信頼感指数が予想外に上振れ、米10年債利回りが上昇。ドル買い優勢に。
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5月1日(水):米ISM製造業が好調、日銀総裁の「緩和維持」発言も重なり、145.70円台まで急騰。
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5月2日(木):米新規失業保険申請件数・製造業受注ともに堅調で146円手前まで上昇。
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5月3日(金):注目の米雇用統計(NFP)では非農業部門雇用者数が予想(+18万人)を上回る+20.1万人。平均時給も前年比+4.1%。これを受けて一時146.15円台まで上昇。
✔ 週間高値:146.15円(5/3)
✔ 週間安値:144.20円(4/29)
✔ 週間騰落:+1.95円
▶ その他通貨:クロス円上昇、ドルストレートはまちまち
通貨ペア | 今週の動き | 背景要因 |
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ユーロ円(EUR/JPY) | 153.80 → 156.40 (+2.60円) | 円安主導。ユーロ圏CPIがやや上振れも、ECB利下げ期待は継続。 |
豪ドル円(AUD/JPY) | 95.70 → 98.10 (+2.40円) | 豪CPIが高止まりし、RBAの利下げ見送り観測が強まる。 |
ポンド円(GBP/JPY) | 182.10 → 185.50 (+3.40円) | 英住宅市場の回復気配+円売りで加速。 |
一方で、ドルストレートではユーロドル・ポンドドルとも上値重く、ドル高の圧力がじわり。来週の米指標次第ではトレンド反転も視野に。
◆【2】今週のファンダメンタルズ要因:ドル買い・円売りの土台は堅い
▶ 日銀:ハト派色がより鮮明に
日銀は4月26日の政策会合で政策金利を据え置いたうえ、成長見通しを引き下げ、物価見通しは据え置きました。また上田総裁は「緩やかな物価上昇が継続する限り、緩和継続が適当」と発言。
市場は「利上げが遠のいた」と受け止め、円売りが継続。また日本の実質金利が依然マイナス圏にあることも、構造的な円安圧力の背景となっています。
▶ 米国:経済指標はおおむね堅調、利下げ観測は後退
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ISM製造業景況指数(4月): 49.7(前回49.2)
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新規失業保険申請件数: 21.5万件(予想21.8万)
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雇用統計(NFP): +20.1万人(予想+18万人)
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平均時給: 前年比+4.1%
これらを背景に、米10年債利回りは週を通じて4.6~4.7%台に上昇。市場では「FRBは7月までは据え置き継続、その後も利下げは慎重に進める」との見方が優勢です。
◆【3】来週(5月6日〜)の展望:要注目イベントと相場予測
来週はゴールデンウィーク明けで日本勢が市場に戻る一方、米国ではインフレ指標(CPI・PPI)やFOMCメンバー発言が相次ぐため、ボラティリティが高まる可能性があります。
▶ 経済イベントカレンダー(日本時間)
日時 | 内容 | 重要度 |
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5月7日(火)23:00 | 米FRBパウエル議長発言 | ★★★★☆ |
5月8日(水)21:30 | 米CPI(4月) | ★★★★★ |
5月9日(木)21:30 | 米PPI(4月) | ★★★★☆ |
5月10日(金)22:00 | 米ミシガン大消費者信頼感(速報) | ★★★☆☆ |
CPIとPPIが予想以上に高止まりすれば、ドル高再加速&円安更新の可能性が高まります。一方、インフレが鈍化すれば146円台がピークとなり反落の可能性も。
◆【4】テクニカル・センチメント分析:ドル円は“調整か上抜けか”の分岐点
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サポートゾーン:145.30〜145.50円(5日移動平均線)
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レジスタンス:146.30円(2024年12月高値)/147.80円(2022年10月高値)
市場のセンチメントは「円安継続」が優勢ながら、短期的には過熱感も。CPIの結果と金利動向次第では、一時的な調整(下落)→押し目買いというシナリオも十分に考えられます。
◆【5】戦略とトレードアイデア(個人投資家向け)
スタンス | 理由 |
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✅ ドル円:押し目買い継続 | 米指標堅調・日銀ハト派で金利差意識。145.30円台は買い意欲強い。 |
✅ 豪ドル円:短期ロング | RBAタカ派観測と資源価格上昇で支援。98.50円を試す動きも。 |
⚠️ ユーロドル:様子見~戻り売り | ECBの利下げが近く、ドル高に逆らえず。1.10割れに注意。 |
◆【結論】“米指標vs日銀”の構図続く。流れに逆らわず、押し目を拾う
2025年5月第1週は、日銀のハト派姿勢と米景気の底堅さが交錯する形でドル円・クロス円の円安が加速した1週間でした。来週もその構図に大きな変化はないとみられ、「円安トレンドに乗る」戦略が基本線となります。
ただし、米CPIやパウエル議長発言など「方向転換のきっかけ」になりうるイベントも控えており、高値追いには慎重さも必要。中長期での調整局面も念頭に置いたポジション構築が求められます。
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