2025年4月最終週から5月初頭にかけて、為替市場は複数の注目イベントに揺れ動く1週間となりました。日米金利差の拡大期待、欧州・英国経済の指標発表、豪州とカナダの景気動向などが複雑に絡み合い、クロス円通貨ペアは一段の円安圧力を受ける展開が続いています。本記事では、今週1週間の動きを主要通貨ペアごとに振り返り、来週の相場展望をファンダメンタルズ中心に解説します。
◆ 今週の為替市場まとめ(2025年4月29日〜5月3日)
● ドル円(USD/JPY):日銀据え置き&FRB据え置きもタカ派維持で円安続行
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始値:155.22円
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高値:156.78円
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安値:154.80円
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終値:156.45円(週足+1.23円)
4月26日に行われた日銀金融政策決定会合では政策金利を現状維持(0.10%)とし、YCC(イールドカーブコントロール)も据え置き。市場は「次の利上げはまだ先」との見方を強め、円売りが加速しました。
5月1日にはFOMCが開催され、政策金利は予想通り5.25〜5.50%に据え置き。ただし、パウエル議長は「年内の利下げ開始には慎重」と発言し、ドル高要因となりました。
要点:
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円買い材料乏しく、金利差主導でドル円は156円台を維持
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米雇用統計(5月3日)で非農業部門雇用者数が市場予想をやや下回ったものの、ドルは底堅い
● ユーロ円(EUR/JPY):インフレ低下もECBは慎重姿勢
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始値:166.04円
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終値:167.32円(週足+1.28円)
ユーロ圏ではCPI速報値(4月分)が発表され、前年比+2.4%と予想に一致。ただし、コアインフレは+2.8%と高止まりしており、ECBが6月以降も段階的にしか利下げを進めないとの見方が広がりました。
要点:
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金利差からユーロ買い継続、対円で上昇トレンド
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ドイツPMIの改善がユーロの底堅さを支える
● ポンド円(GBP/JPY):高インフレと金利高維持で200円目前
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始値:195.68円
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終値:198.25円(週足+2.57円)
英国では4月分のPMI(製造業・サービス業)がいずれも予想を上回り、景気の底堅さが確認されました。インフレも引き続き高水準で、イングランド銀行は5月の会合でも利下げを見送るとの見通しです。
要点:
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利下げ期待の後退と円安が重なりポンド円は200円目前
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英国の実質賃金上昇も中期的にポンドを支える材料に
● 豪ドル円(AUD/JPY):RBA利上げ観測で豪ドル上昇基調
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始値:101.90円
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終値:103.45円(週足+1.55円)
豪州のインフレ統計が市場予想を上回ったことを受け、RBAが5月の会合で再利上げに動く可能性が浮上しています。中国経済指標(製造業PMI)の改善も豪ドルをサポートしました。
要点:
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豪インフレ再加速で政策金利引き上げ観測が強まる
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豪ドル円は104円台が視野に入りつつある
● カナダドル円(CAD/JPY):原油価格上昇と経済堅調でCAD堅調
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始値:112.78円
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終値:114.20円(週足+1.42円)
原油価格(WTI)が1バレル=84ドル台まで上昇し、資源国通貨であるカナダドルを支える展開となりました。カナダの3月GDPは+0.3%と堅調で、利下げ開始はもう少し先になるとの思惑もCAD買いを後押し。
要点:
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エネルギー価格がカナダドルを支える
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BOEもタカ派色を維持し、CAD円は上昇基調
◆ 来週(5月6日週)の注目イベントと展望
▼ 経済指標カレンダー(日本時間)
日付 | 指標 | 対象国 | 重要度 |
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5月6日(祝) | ISM非製造業景況指数 | 米国 | ★★★ |
5月7日(水) | RBA政策金利発表 | 豪州 | ★★★★ |
5月9日(木) | 米新規失業保険申請件数 | 米国 | ★★ |
5月10日(金) | カナダ雇用統計 | カナダ | ★★★ |
5月10日(金) | 英GDP(速報) | 英国 | ★★★★ |
※日本はGW後半のため流動性が低下しやすい点に注意。
◆ 来週の為替見通しと戦略
● ドル円:FOMC後も円売り継続、157円試す展開も
米経済が底堅さを維持している限り、FRBの利下げは後ズレする可能性が高く、日銀の現状維持との金利差が円安を促進します。今週のISMと失業統計次第では、157円台突破の可能性も。
戦略:短期トレーダーは押し目買い。中期は158円までの上昇を想定。
● ユーロ円・ポンド円:ECB・BOEともにタカ派維持で円安トレンド継続
金利面での優位性が続くユーロやポンドは、円との組み合わせで引き続き買い優勢。特にポンド円は200円の大台突破が現実味を帯びてきています。
戦略:ポジションを持っている場合はトレールストップで利益確保。新規参入は押し目を丁寧に拾う形が安全。
● 豪ドル円:RBAが利上げなら104円台視野
インフレ再加速が確認されれば、RBAは利上げを選択肢に入れる可能性あり。これが実現すれば豪ドル円は104〜105円台に乗せる余地があります。
戦略:政策発表前後はボラティリティが高まるため、逆指値を活用したリスク管理を。
● カナダドル円:資源高と雇用統計が焦点
5月10日の雇用統計が堅調であれば、BOCの利下げ観測はさらに後退し、カナダドル買い継続。114〜115円台までの上昇も視野に。
戦略:原油と連動するため、資源市況のチェックを欠かさずに。押し目は買い戦略継続。
◆ まとめ
2025年5月第1週は、日銀・FOMC・インフレ指標・PMIなど多数の材料が出揃い、円売り圧力が全体に波及しました。特に日銀のスタンスが円の持続的な売り要因となっており、クロス円は軒並み上昇トレンドにあります。
来週は以下の点に注目が必要です。
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RBAが利上げに踏み切るかどうか(AUD/JPYの方向感を左右)
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英GDP速報値の結果(ポンド円の200円突破に影響)
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米指標が「景気減速」を示すか否か(ドルの反応に注目)
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