【週間為替レポート】2025年7月第3週の振り返りと第4週の展望|ドル円160円突破で見えてきた新局面

【週間為替レポート】2025年7月第3週の振り返りと第4週の展望|ドル円160円突破で見えてきた新局面


はじめに

2025年7月第3週(7/14〜7/19)の為替市場は、ドル円がついに160円の節目を突破し、円安トレンドが一段と強まった歴史的な週となりました。主要中央銀行の金融政策の方向性、経済指標の発表、地政学的要因、そして投機筋の動向が複雑に絡み合い、主要クロス円通貨ペアは軒並み円安圧力に晒されました。

この記事では、1週間の為替動向を主要通貨ごとに丁寧に振り返るとともに、7月21日週の注目イベントと相場の見通しを、ファンダメンタルズテクニカルの両面から解説していきます。


1. 先週の為替市場の動向(7月14日〜19日)

◆ ドル円(USD/JPY):ついに160円台突破

  • 始値:158.75円

  • 高値:160.35円

  • 安値:157.98円

  • 終値:160.18円(週足+1.43円)

ドル円はついに160円の大台を突破しました。大きなきっかけとなったのは、7月17日に発表された**米小売売上高(6月)**が予想を上回る強さを見せたことに加え、**パウエルFRB議長が「インフレに対しては依然慎重姿勢」**を維持したことです。

市場ではFRBの利下げ期待が一時的に後退し、米長期金利が上昇したことでドル買い・円売りが加速。日銀が依然として緩和スタンスを続けていることもあり、金利差に基づくキャリートレードの加速がドル円160円突破を後押ししました。


◆ ユーロ円(EUR/JPY):ECB利下げ観測も円安が上回る

  • 始値:174.62円

  • 終値:175.88円(週足+1.26円)

ユーロは対ドルではやや軟調な場面が見られましたが、円に対しては強さを維持。ECBは7月の利下げを一度見送ったものの、9月にも利下げがあるとの観測が残っており、ユーロの積極的な買いは限定的。

しかし、対円では円安バイアスの強さが上回り、175円台後半に乗せる結果となりました。


◆ ポンド円(GBP/JPY):インフレ鈍化で一服も上昇基調続く

  • 始値:206.82円

  • 終値:208.05円(週足+1.23円)

英国の6月CPIが前年同月比+2.0%とインフレ鈍化を示したため、ポンドは一時売られる場面もありましたが、円売りの勢いに支えられ結局は上昇。BOE(イングランド銀行)が利下げを急がないとの市場の見方もポンドの下支え要因となりました。


◆ 豪ドル円(AUD/JPY):中国の経済指標改善でリスクオン

  • 始値:106.30円

  • 終値:107.92円(週足+1.62円)

中国のGDPや小売売上高が予想を上回り、資源需要への期待から豪ドルが買われました。さらに、RBA(豪準備銀行)が次回会合で再びタカ派姿勢を強めるとの観測も浮上し、豪ドル円は107円台に回復


◆ カナダドル円(CAD/JPY):原油価格の上昇が追い風に

  • 始値:117.25円

  • 終値:118.94円(週足+1.69円)

WTI原油先物が再び80ドル台に回復するなか、エネルギー価格と連動性の高いカナダドルは対円で上昇基調。BOC(カナダ銀行)は「利下げは慎重に判断」としており、当面は金利維持を続ける見通しです。


2. マーケットを動かした主な要因(7月第3週)

● 米国:経済指標の強さと利下げ観測の微修正

米6月小売売上高が+0.5%と予想(+0.3%)を上回ったこと、ミシガン大学消費者信頼感指数が改善したことなど、米景気の底堅さが改めて確認されました。これにより、9月利下げの確率はやや後退(50%→43%程度)しました。

● 日本:円安放置の姿勢が加速

日銀は7月30〜31日の金融政策決定会合を控え、積極的な発言を控える姿勢。ただし、財務省や金融庁からの為替口先介入も限定的であり、市場では「円安を黙認している」との印象が強まりました。

● 世界情勢:地政学リスクはやや後退

中東情勢やウクライナ危機などは依然として不安定ではあるものの、市場はリスクオンモードが優勢。特に、中国経済の底打ち期待が高まり、豪ドルやカナダドルなどコモディティ通貨が強含みました。


3. 来週(7月21日〜25日)の為替市場展望

◆ 注目経済イベント

日付 指標・イベント 重要度
7/22(月) 日本 貿易収支(6月) ★★
7/23(火) 英国 製造業PMI速報値 ★★★
7/24(水) ユーロ圏 PMI(製造業・サービス業)速報 ★★★
7/25(木) 米国 新規失業保険申請件数 ★★
7/25(木) 欧州 ECB政策金利発表 ★★★★★

◆ ドル円:160円台の攻防と実需の売り圧力に注目

短期的には上昇バイアスが続くものの、160円台後半には輸出企業の売り圧力が控えているとの見方も強く、160.50〜161.00円あたりはテクニカルな天井となる可能性も。7/25の米指標が弱ければ、短期調整局面に入る恐れもある。

見通し:160.20〜161.20円レンジ、高値警戒感あり


◆ ユーロ円:ECBの政策判断が材料に

ECBは今会合で利下げに踏み切るとの観測が強いが、「9月まで様子見」との可能性も。実際の行動よりも声明文やラガルド総裁の発言が焦点。ユーロの方向性が決まれば、175〜177円のレンジブレイクが視野に。

見通し:175.00〜177.50円レンジ、材料待ちの展開


◆ ポンド円:英国指標次第では200円台再トライも

ポンドは7月中旬にやや弱含みましたが、インフレ鈍化による利下げ観測後退で再び上昇モードへ。7/23のPMI次第で上方向に加速も。対円では210円が心理的な節目。

見通し:207.50〜210.00円レンジ、やや強含み


◆ 豪ドル円:中国株の動向とPMI次第

中国の政策期待に市場は敏感に反応中。さらに、RBA理事の発言なども注目されており、リスクオン継続なら108円台突破も。

見通し:106.80〜108.50円レンジ、押し目は買い優勢


◆ カナダドル円:原油価格次第で続伸の可能性

WTIが80ドルを維持するなら、カナダドル円は引き続き上昇余地あり。118円台後半〜119円台乗せが次の焦点。

見通し:117.50〜119.50円、エネルギー市況がカギ


4. 投資家向けの戦略と注意点

● キャリートレード強化中だが高値警戒を

金利差が生み出すキャリートレード需要が円売りを支えていますが、為替当局の介入リスク(特にドル円160円台後半〜)がくすぶっているため、高値掴みに要注意。

● 短期調整に備え、逆指値や利益確定を意識

夏場は流動性が薄く、突発的な動きが出やすい時期。ポジション管理と柔軟な戦略変更が重要となります。


まとめ:円安継続か、転換点か

2025年7月第3週は、「ドル円160円突破」という歴史的な動きが為替市場にインパクトを与えました。日米の金融政策差は依然大きく、円安圧力は継続。しかし、国内外の政治・経済の変化が円買いに転じる可能性も常に意識する必要があります。

来週は、ECB理事会・欧州と英国のPMI・米雇用統計など、重要イベントが目白押しです。イベントドリブン相場となるため、トレーダーは情報収集と素早い対応が鍵を握る1週間となるでしょう。

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