【2025年5月6日・為替市場レポート】円安進行と世界経済のクロスロード:10通貨ペアから読むグローバル為替の今

2025年5月に突入し、為替市場では円安トレンドの継続と、主要国の金融政策への思惑が交錯しています。アメリカ経済の堅調さが続く一方、欧州やオセアニアでは利下げ議論が強まり、世界の金融政策が次第に分岐する兆しが見えています。

本稿では、主要通貨ペア10種を取り上げ、最新の相場動向・背景要因・今後の展望を包括的に解説します。


■ 主要通貨ペアの概況

◇ 1. ドル円(USD/JPY):円安基調続くも160円が節目

ドル円は2025年5月初週、159.70円前後で取引されており、4月末に一時160.20円台を付けた後の調整局面が続いています。

  • 米国の4月雇用統計は堅調で、FRBの利下げ観測はやや後退

  • 一方、日銀は追加利上げに慎重であり、金利差の維持による円売り圧力が継続中。

  • 4月末の為替介入疑惑も、相場の反転材料とはならず。

今後も160円台の攻防が続く見通しであり、米インフレ指標(CPI)や日銀の発言次第で上値ブレイクの可能性があります。

短期目標:160.50円〜161.00円
下値目処:157.00円(介入観測ライン)


◇ 2. ユーロ円(EUR/JPY):170円突破の可能性

ユーロ円は現在169円台半ばで推移し、年初来高値圏を維持しています。

  • ECBはインフレ鈍化を受け、7月利下げ観測が優勢。

  • それでも円の弱さが主因となり、ユーロ円は上昇。

  • 欧州経済は製造業が回復傾向、サービス業は堅調。

テクニカル的にも上昇トレンドが継続しており、170円の突破は時間の問題という見方もあります。


◇ 3. ポンド円(GBP/JPY):再び200円を伺う展開

ポンド円は199円台で取引されており、200円の大台が目前です。

  • 英中銀(BOE)は、インフレ高止まりを警戒し利下げに慎重姿勢

  • 英国の経済成長は緩やかに回復中。

  • 円の弱さとポンドの金利優位性が共存する形。

今週のBOE会合ではハト派姿勢が強まる可能性もあるが、円売り圧力の方が強く、上昇余地は残る


◇ 4. 豪ドル円(AUD/JPY):資源価格と中国指標が支え

豪ドル円は108.50円前後で推移。豪州のCPI上昇や強い雇用統計を背景に、RBAの利上げ可能性が残っており、豪ドルは底堅い動き。

  • 中国の景気回復の兆し(PMI改善)が豪ドルに好影響。

  • 資源相場(特に鉄鉱石)が堅調に推移。

  • 日豪の金利差も豪ドル買い材料。

110円突破にはさらなる外部支援材料が必要ですが、押し目は拾われやすい地合いです。


◇ 5. NZドル円(NZD/JPY):底堅いが伸び悩み

NZドル円は95円台前半で推移。RBNZ(NZ準備銀行)はインフレ抑制姿勢を続けつつも、追加利上げは見送りの可能性が高まっています。

  • ニュージーランドの景気回復が鈍く、通貨買い材料が限定的。

  • 豪ドルとの連動性が強く、連れ高する場面も。

  • 日NZ金利差の拡大が支え。

ただし、豪ドルに比べてファンダメンタルズの好材料が乏しいため、上昇は限定的です。


◇ 6. カナダドル円(CAD/JPY):原油価格が追い風に

カナダドル円は117円台後半で堅調に推移。WTI原油価格の反発と、カナダ中銀(BOC)の利下げ開始時期が不透明なことがカナダドルをサポートしています。

  • 原油高=カナダドル高という伝統的な関係が復活。

  • 米国と連動した景気回復もプラス材料。

  • テクニカル的には120円台も視野。


◇ 7. スイスフラン円(CHF/JPY):安全資産でも円より強い

CHF/JPYは176円台と、歴史的高値圏にあります。

  • スイス中銀(SNB)はインフレ鈍化を受けて3月に利下げを実施。

  • それでも円がより弱いため、フランは円に対して上昇。

  • リスクオフ局面ではフラン買いが強まりやすい。

為替介入懸念は低く、レンジは175〜178円と安定的な動きが予想されます。


■ ドルストレート通貨ペアの動向

◇ 8. ユーロドル(EUR/USD):1.07ドル台で小動き

ユーロドルは1.0740〜1.0780ドルの狭いレンジで推移。

  • 米国の強い経済指標がドル高圧力を強める一方、

  • 欧州の利下げ観測がユーロの重石。

FOMCや米CPI次第で、1.07割れ→1.06台への下落も視野に入ります。


◇ 9. ポンドドル(GBP/USD):底堅く推移も上値重い

ポンドドルは1.2530〜1.2580ドルで推移。

  • 英経済の粘り強さとBOEのタカ派姿勢が支え。

  • 米ドル高地合いの中ではポンドの上昇も限定的。

今後の米英金融政策の温度差が広がれば、レンジブレイクの可能性もあります。


◇ 10. 豪ドル米ドル(AUD/USD):資源価格のサポートで反発傾向

AUD/USDは0.6620〜0.6660ドルで底堅い動き。

  • RBAの追加利上げ観測が豪ドルを支える。

  • 中国PMIや鉄鉱石市況との連動性が依然として強い。

豪ドルはドルインデックスと逆相関関係にあるため、米ドルが弱含めば0.67台回復も視野


■ 総合展望とリスク要因

◇ 金融政策の転換点:利下げvs利上げのせめぎ合い

世界各国の中央銀行は、インフレ抑制から景気支援への転換を模索しています。

  • 米FRBは「2025年内3回の利下げ」を視野に入れるも、時期は不透明。

  • ECB・RBA・BOCなどは夏以降の緩和開始を検討。

  • 日銀は「量的引き締めも視野」と発言するも、実際の行動は慎重。

各国の温度差がクロス円の変動を生み出しています。


◇ 地政学的リスクとその影響

  • 中東情勢(イスラエル・イラン)

  • 米中対立

  • 台湾海峡問題
    など、地政学的リスクが常に背景にあり、突発的な円買い要因になる可能性があります。


◇ 日本政府・日銀の介入の可能性

ドル円160円突破で4月末に介入があったとされるが、明確な声明は出されず。

今後、161円〜162円を突破した場合には再介入の可能性が浮上。

ただし、過去の介入の「効果が一時的」であることを市場が認識しており、介入そのものの抑止力は限定的となっています。


■ まとめ:多極化する為替市場をどう読むか?

現在の為替市場は、「ドル高トレンド」と「円安トレンド」が同時進行しており、クロス円を中心に強い円売りバイアスが見られます。

  • 通貨ごとのファンダメンタルズ

  • 中央銀行の姿勢

  • 地政学的要因

これらを複合的に分析することが、今後のトレード戦略の鍵となります。

今後の重要イベントを念頭に置きつつ、各通貨ペアの特性を踏まえた戦略的アプローチが求められます。


今後の注目イベント:

  • 5月7日(水):パウエルFRB議長講演

  • 5月10日(金):米CPI(インフレ指標)

  • 5月13日(月):日銀金融政策決定会合・議事要旨公表

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