【2025年7月10日 為替市場ファンダメンタル総括】
— 米副大統領関税見直し・ドル回復の兆し、アジア通貨連鎖、金利見通し変化が交差する相場
1️⃣ 市場総覧:停滞しないドル、アジア通貨に注目
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米国は「銅に50%関税(8月1日適用)」、ブラジルや複数国にも関税発動通達。ただし、アジア通貨・株式市場には限定的反応。ドル指数は97.35付近で安定し、昨日の2週間ぶり高値から戻し調整中。
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アジア通貨、とりわけインドルピーは85.59〜85.60付近への小幅戻し。市場は85.40〜86.00レンジで調整ムード継続。
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一方、ブラジルレアルは新たな関税懸念で最大2.8%下落。これは米関税見直しの直接的な反応で、リスク国通貨の分化が加速しました。
2️⃣ 米ドルの歩み寄り:利下げ示唆の再度顕在化
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Fed6月・7月の議事録で「利下げ支持の声」再浮上。市場の利下げ期待は抑制され、ドルに一時的な支援材料として作用Reuters。
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ただし、Trumpの関税圧力や財政不安が背景にあり、「構造的ドル弱」の潮流は容易に否定されていません。
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米10年債利回りは4.33%付近で横ばい。これ以上の低下はドルへの支援要因にはなるものの、再上昇の兆しも見られています。
3️⃣ アジア市場の肌感覚:ドル以外の潮目
● インドルピー(USD/INR)
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約85.60台の均衡レンジに戻し。アジア通貨の連動と、インド商務代表団による対米交渉期待が支援Reuters+1Reuters+1。
● その他アジア通貨
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韓国ウォン、台湾ドルなどもアジア通貨上昇ムードを引き継ぎ、昨今の地政学懸念による戻り後の調整局面で狙い目。
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中国元も米関税発動警戒に控えつつ、PBOCの介入姿勢と国内緩やか経済指導が支え材。
4️⃣ 地域通貨別動態:分断化する反応
通貨ペア | 当日の動き | 背景・コメント |
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USD/JPY | ゆるやかに円安傾向 | トレンド継続。関税影響少なく、DXY連動で横ばい支持背景 |
USD/INR | 小幅反発(85.59→85.60) | アジア通貨連動と市場心理安定 |
USD/BRL | 大幅下落(−2.8%) | 米関税直撃。南米通貨にネガティブ圧 |
EUR/USD | ゆるやかに上昇 | 関税圧力がEU除外観測要因、ドル側に圧力か |
USD/CHF | 安定推移 | スイスフランは安全資産維持 |
5️⃣ 金と債券:ドル手控えと安全資産
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金価格は0.1%上昇、3,316ドルを突破。ドルの微弱と10年債利回りの低下が後押しReuters。
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10年債利回りは再び4.33%で低下方向へ圧力。ドルにつながる要因として注視。
6️⃣ 市場心理:関税ストレスよりFed見通し優位
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米関税拡大は「Tariff fatigue(関税慣れ)」とされ、アジアでは既に織り込み済との見方Reuters。
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Fed議事録による金利低下示唆が、依然として為替相場の主要ドライバー。関税よりもインフレ見通し・金融政策に反応が集中しています。
7️⃣ テクニカル評価:ドル円を軸とした視座
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ドル円:145ミドル〜146円が当面の上限レンジ。下値は144円が短期サポートライン。
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チャネル上限を突破できなければ、戻り売り圧力が優勢に。RSI/MACDは中立だが横ばい圧力優勢。
8️⃣ 投資戦略の整理:短期~中期アプローチ
🔹 短期(〜今週)
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ドル円ロングは慎重:145ミドル突破できるかだけを見極め中。
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USD/BRLショート、USD/INR押し目ロングなど、通貨別に戦略差分化。
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金ロング+米債ブル戦略:金と長期債は安定ターゲット。
🔹 中期(数週間~)
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ドル構造弱継続前提:ドル円142〜143円試算、EUR/USDで1.18台再突入狙い。
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アジア通貨連動ポートフォリオ:INR・KRW・TWDなどインド太平洋アセットを組み合わせ。
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ヘッジ重視:関税、財政、Mid-Eastリスクなどの短期的変動に対するポジション保険(コール/プット)を検討。
9️⃣ 本日注視のトリガーポイント
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✅ 米関税交渉の進展(特に日本・韓国・ブラジル関連)
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✅ Fed関係者の追加コメント(利下げ議論)
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✅ 米10年債利回り・ドルインデックス動向
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✅ アジア通貨市場(INR/KRW・CNH)のフォローアップ
🔚 総括:関税ショックを超えた”ドルの動きの本質”
本日は、米関税強化の報により、ドルは一時混乱が見られるも、アジア通貨やドル見通しには大きな影響なし。
むしろ、市場の焦点は「Fedの利下げ観測・10年債利回りの方向性・米財政見通し」に置かれており、構造的なドル安の潮流は継続しています。
**当面の戦略は“通貨別戦略の差分化+金・債券など非ドル資産の分散”**が中心。短期の押し目/戻りで戦いつつ、中長期はドル弱トレンドに沿ったポジション設計が有効です。
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