【2025年7月11日 為替市場レポート】
100点満点の注目日——関税懸念再燃、Fed分断鮮明、ドル・円が方向感探る一日に
1. 市況概観
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米大統領が再度カナダ・EUに高関税を示唆し、市場にトレード・ショックの懸念を再喚起。カナダには35%関税、他国に15〜20%関税起算点の警鐘を鳴らし、株式・通貨ともに揺れ――リスクオンの期待感は一気に後退しました 。
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ドルは対ユーロ・円・カナダドルで堅調推移。ドル円は147円台に乗せ、日足では+0.6%上昇。週次では1.7%上昇と、年内最大の週次伸びとなりました 。
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連銀議事録で利下げ慎重論強調。FOMC議事録(6/17–18)では数名が7月利下げ支持を示したものの、多数派がタリフ加速による物価上昇懸念から急速利下げには否定的という構図が鮮明になりました 。
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夏の薄商いと相まって乱高下注意報。リスク・セーフティ・イベント材料が重なり、ボラティリティが高まりやすい状況です。
2. 主要10通貨ペアの解説
以下、7月11日の10通貨ペアを値動き・背景・今後の焦点・戦略の観点から整理しました。
2.1 USD/JPY(ドル/円)
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水準:147.12円前後、高値レンジでは147円台を回復 ReutersReuters+12Reuters+12Reuters+12。
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背景:トランプ再関税発言→リスク回避→ドルが安全資産として買われ、同時に円売り圧力が強まる“ドル買い円売り”の構図。
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今後の焦点:トレード進捗動向、BOJの為替見解、米金利とのスプレッド調整が鍵。
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戦略:146–148円レンジでの短期売買が主軸。148円超えでの順張りと、回れ右で145円台半ばへの調整を狙う動きも視野。
2.2 EUR/USD(ユーロ/ドル)
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水準:1.1676–1.169前後、約0.2%下落 Reuters。
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背景:ドル買い戻し優勢でユーロ軟化。Fed高止まりスタンスと関税懸念がドル支援材料。
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注目点:欧州との貿易交渉進展やECBの政策トーンによる動き。
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戦略:1.16–1.18レンジ軸で、ドルショート圧力が続く限り上限圏で軽く売るスタンスがお勧め。
2.3 EUR/JPY(ユーロ/円)
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水準:約172円台 。
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背景:ドル円とユーロドル両方の動きが加わり高値圏へ。
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注目点:米欧関係動向がユーロ円に反映、材料次第で172–174円台へ試す可能性。
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戦略:170–173円レンジ中心に、明確なトレードトリガーが出ない限り範囲内での回転戦略。
2.4 AUD/JPY(豪ドル/円)
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水準:0.68%ほど下落だが96円台維持 Reuters+7Reuters+7Reuters+7U.S. Department of the Treasury。
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背景:リスク通貨扱い。トランプ関税リスクに引っ張られて米金利との利差影響で一時下振れ。
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焦点:中国・豪経済指標、原油・銅など商品市況の強弱。
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戦略:94–98円レンジを基軸とし、商品価格に連動した押し目買いと戻り売りを組み合わせ。
2.5 NZD/JPY(NZドル/円)
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水準:オーストラリア同様、ほぼ横ばいの88円強推移。
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背景:豪ドルとの連動、“リスク通貨”として売られる場面もありつつ円行動が追随。
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焦点:RBNZの金融政策、商品市況、市場センチメント。
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戦略:86–90円レンジ。豪ドルと同様、連動的に売買。
2.6 CAD/JPY(カナダドル/円)
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水準:カナダリスク高により106円台維持 。
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背景:カナダ関税発言により原油など商品通貨への懸念とドル買い要因で方向感分かれる。
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焦点:原油価格・カナダ雇用・BoC発言。
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戦略:105–108円レンジで上下にバイ&セル戦略。
2.7 CHF/JPY(スイスフラン/円)
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水準:179–182円付近をキープ。
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背景:トレード・ショックでドル備蓄のフラン需要が増加、円同様買い圧力が分散。
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焦点:地政学リスクとFedスタンス変化による安全通貨としての需要。
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戦略:178–183円レンジのレンジ売買。急騰は利確検討ゾーン。
2.8 GBP/USD(英ポンド/ドル)
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水準:1.354–1.357ドルで約0.27%下落 。
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背景:ドル買い戻しの影響が大きく、リスク通貨としてポンドも売られる。
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焦点:BoEコメント、英国経済指標、米英貿易協議。
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戦略:1.35–1.37レンジ内での押し目買い/戻り売り。
2.9 GBP/JPY(ポンド/円)
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水準:約198円、レンジ下限に近い位置。
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背景:ポンドドル下落+ドル円上昇の連携で割高感が押し下げ要因。
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焦点:ポンドドル反転か、ドル円勢いの有無。
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戦略:195–200円レンジ。需給転換見極めで上下どちらでも対応。
2.10 USD/CAD(ドル/カナダドル)
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水準:約1.370台に回復 。
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背景:ドル買い+カナダの関税懸念でドル買い優勢。
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焦点:原油、貿易政策、米金利&債券利回り動向。
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戦略:1.36–1.38レンジ。ドル買い勢いなら上限狙い。
3. マクロ・政策・心理背景
🔹 米関税発言のインパクト
関税リスクが再浮上し、トレード戦争再燃の懸念がシステム全体に波及。株式・通貨・商品にクロス資産影響。
🔹 Fed政策分断と議事録
6月議事録ではタリフ影響への慎重姿勢が強調され、「利下げは見送り」方向が主流。にも関わらず、一部が夏利下げ支持との二極化構図に。
🔹 ドル構造不信
米国債務拡大、政治の影響でドルは年初来で10%超下落。IMF・ECBもドルシェア減少感を指摘し、ユーロ・円・フランの比重を高めている。
🔹 夏薄商いとボラティリティ
薄商いは価値あるトレンドも歪みや誤動作に注意を喚起。特にNYクローズ後のアジアから欧州にかけて要人発言や貿易材料に敏感。
🔹 円圧力の限界
浅川前為替官が指摘するように、米の円圧力は枠組み的制限があり、プラザ合意型の介入可能性は現在低く評価されている。
4. テクニカル・戦略視点
通貨ペア | 注目レンジ | 戦略ポイント |
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USD/JPY | 146–148円 | レンジ売買優先。148円ブレイク→順張りドライブ |
EUR/USD | 1.165–1.175 | 押し目買い中心。下抜けは1.16への戻り想定 |
AUD/JPY | 94–98円 | リスク通貨として方向性を確認しつつ参戦 |
CHF/JPY | 178–183円 | 安全通貨買い巻き込み時は利食い優先 |
★ イベント連動トレード戦略
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関税関連発表→リスク通貨売り/安全通貨買い応答
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金利観測→Fed議事録→ドル買いor売り転換
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米企業決算→株価動じ→リスク通貨振る舞い
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夏物薄商い→誤動作トレードに警戒
5. 今後の注目イベント
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関税レター送付状況(カナダ・EU対象)
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来週の米決算シーズン開幕
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CPI・コアインフレ指標(7/12以降)
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貿易協議・統一協定の進展
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週明け材料により薄商いでブレイクの可能性
🔍 総括
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ドル・円は147円台維持、上下レンジの動意がかき乱される状況だがトレンドは明確。
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ユーロ・リスク通貨は上値圧力優位も、関税リスク次第で方向転換あり。
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フラン・円などの安全通貨には逆相関の恩恵、戦略的持ち高調整の余地あり。
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Fedの分断と米政治・貿易の交錯相場で、夏の薄商いにより局所的なトレンド発生が予想される。
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