【2025年7月29日 為替ファンダメンタルズ徹底分析】
— 米インフレ再燃の兆しとFRBの苦悩、ドル円は150円手前で正念場へ
🔍 本日の要点まとめ
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米PCEデフレーターが再加速し、年内利下げ観測が後退
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ドル円は150円台目前まで上昇、リスク選好と日銀の緩慢な引き締め姿勢が背景
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中国の景気下振れ懸念がアジア通貨に波及、一部の資源国通貨も売り圧力に
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欧州通貨はECBの利下げ示唆を受けて上値重く、ユーロは対ドルで横ばい
1️⃣ 米国:インフレ指標で利下げ期待が後退、ドル買い加速
● PCEデフレーターの上昇がサプライズ
7月26日に発表された**6月のコアPCE価格指数(前年比+2.6%、前月比+0.3%)**は市場予想をやや上回り、インフレの粘着性が再び意識される展開となりました。
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これにより、FRBの9月・11月利下げの可能性が後退。CME FedWatchでは9月利下げ確率が前週の約60%→45%程度に低下。
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一方で、労働市場は引き続き堅調で、失業保険申請件数も低位に安定。景気減速は限定的と捉えられています。
これを背景に、米長期金利は4.30%台まで反発し、ドルの買い戻しが強まる結果に。ドルインデックス(DXY)は一時106.1台へ上昇しました。
2️⃣ 日本:日銀のハト派姿勢が円売り材料に
● 日銀は金融緩和継続の姿勢を堅持
7月26日の日銀金融政策決定会合では、政策金利を0.1%に据え置き、国債買い入れ方針も「当面は現状維持」との姿勢を再確認しました。
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植田総裁の記者会見では、「賃金と物価の好循環は定着していない」「デフレ脱却の確認には時間が必要」との慎重な発言が目立ちました。
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これを受けて円売り圧力が再燃。ドル円は会合後に一時149.70円台まで急騰しました。
● 政策の転換時期が「後ズレ」するとの観測
一部エコノミストは、次回の利上げは10月以降に持ち越される可能性が高いと見ています。日本の物価・賃金動向が「緩やかな改善」止まりである限り、急な引き締めは難しいという認識が市場に浸透しています。
3️⃣ 欧州:ECBは年内2回利下げがコンセンサスに
7月25日の欧州中央銀行(ECB)理事会では政策金利を据え置いたものの、「9月と12月の2回利下げを検討する」との示唆が市場に与えられたことが話題となりました。
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ユーロ圏のインフレは着実に減速しており、7月CPI速報値(予想+2.4%)の結果次第でさらに利下げ圧力が強まる見通しです。
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ユーロドルは1.085〜1.09での推移が続いており、ドルの上昇圧に押されて上値が重い状況です。
4️⃣ 中国・新興国:景気懸念が通貨安圧力に
● 中国のPMI悪化と人民元の動揺
中国では、国家統計局が7月31日に発表予定の製造業PMI(予想49.6)が注目されています。景気回復の鈍さが意識され、人民元は対ドルで7.28元前後まで下落。
これにより、韓国ウォン、台湾ドル、マレーシアリンギットなどアジア通貨も軟調となりました。
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特に、中国関連の輸出依存度が高い韓国ウォンはUSD/KRWが1370ウォンを超える水準に。
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原油や金属の消費減退懸念から、資源国通貨(CAD、AUD、BRLなど)にも調整売りが波及。
5️⃣ 通貨ペア別の動向(7/29 15:00時点)
通貨ペア | レート | 動きの背景 |
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USD/JPY | 149.65円前後 | 米PCE上昇+日銀ハト派姿勢でドル高円安 |
EUR/USD | 1.086台 | ECBの利下げ観測が重石に |
GBP/USD | 1.294前後 | BOEは慎重姿勢、レンジ内の値動き |
USD/CAD | 1.376台 | 原油下落と米ドル買いでCAD軟調 |
AUD/USD | 0.667台 | 豪インフレ鈍化見通しと中国懸念で下押し圧力 |
USD/CNH | 7.28付近 | PMI控えて不安定、元安継続中 |
6️⃣ 今後の注目イベントと見通し
日付 | イベント | 市場への影響 |
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7月30日(火) | 米消費者信頼感指数 | 消費動向の確認材料。50を下回るとドル売り要因 |
7月31日(水) | 中国PMI、ユーロ圏CPI速報値 | アジア通貨・ユーロ圏の政策判断に影響 |
8月1日(木) | 米ISM製造業景況感指数 | 50を超えられるか注目。サプライズならドル動意 |
8月2日(金) | 米雇用統計(NFP) | 次回FOMCへ向けた利下げ期待の材料に |
7️⃣ テクニカル分析:ドル円は150円の攻防戦
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移動平均線(20日):148.15円
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RSI(14日):68(過熱気味)
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MACD:強気クロス継続
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短期レジスタンス:150.00円
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サポート:148.50円、147.80円
150円は2015年、2022年、2024年にも何度も跳ね返された「節目」ラインであり、介入警戒感が強まる水準でもあります。
8️⃣ ファンダメンタルから見た戦略提案
● シナリオ①:ドル高続伸(インフレ再加速+景気底堅さ)
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推奨戦略:USD/JPYロング(149.50円→150.20円)、EUR/USDショート(1.087→1.075)
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ヘッジ手段:ドルコールオプション、リスク資産売り
● シナリオ②:経済指標悪化でドル反落
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推奨戦略:USD/JPYショート(150円→148.30円)、USD/CADショート
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注目ペア:AUD/USDの反発狙い(対中リスク後退を前提)
🧭 総括:政策の間隙を突いたドル買いにピーク警戒も
本日は、米国のインフレ再加速懸念と日本の政策遅行が交錯し、ドル円は150円の大台目前まで上昇する展開となりました。
しかし、テクニカル的にも介入警戒水準が意識され、さらなるドル高には心理的・制度的な壁が存在します。
今週は重要な米中指標が控えており、イベント通過後のポジション解消・巻き戻しにも備える必要があります。
トレーダーは、短期的な流れに乗りつつも、中長期的な政策転換の兆候やボラティリティ増大に備えた柔軟な運用が求められます。
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