【2025年8月15日 為替市場ファンダメンタル分析まとめ】
— PPI急騰でドル強含み、GDP好調で円が反発、しかし利下げ期待や中銀政策の綱引き続く微調整相場
1|本日のマーケットサマリー
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米PPI(卸売物価指数)が3年ぶりの大幅上昇となり、インフレ圧力への警戒感が再燃。その結果、利上げ継続や利下げ後退の思惑から、ドルが若干強含みで推移しました。市場は50bpの大幅利下げの可能性を完全に織り込む方向から、25bp程度の控えめな利下げへと軸を修正しています Reuters+1。
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日本の第2四半期GDPが予想を上回る強い成長を見せたことで、円がドル、ユーロ、ポンドなどに対し一時的に上昇。さらに、米財務長官の発言を受けて、BOJがインフレ対応で遅れを取り戻す可能性が意識されるようになりました Reuters。
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米国では、**9月に利下げを見込む割合がほぼ90%**に上昇。市場はさらなる利下げを織り込んでおり、今後のFRBの政策スタンスに注目が集まっています Reuters+1。
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地政学的には、トランプ大統領とプーチン露大統領のアラスカ会談に関心が集まり、ウクライナ和平への期待がリスク志向の後押しとなりました。また、金やビットコインには資金が流入し、安全資産にも注目が集まりました Reutersザ・ガーディアンバロンズ。
2| 生産者物価の急上昇が意味するもの:ドル抑制どころか強支え
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PPIが急騰した背景には、原材料費・流通マージンの上昇があり、これによってインフレ収束のシナリオには依然として不確実性が付きまといます。40bp〜50bpの利下げ期待が消える形で、ドルにとっては一定の支援材料となりました Reuters+1。
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ただ、市場が依然として利下げを見込んでいる点には注目が必要。これは、「Fedは物価上昇の兆しを確認しながらも、景気への配慮を優先する」と見られているからであり、今後も物価と雇用指標が為替のメインドライバーとなります。
3|日本のGDPブーストと円の“選好戻り”
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第2四半期のGDPが予想を上回ったことで、円に対して強い反発圧力がかかり、ドル円は一時軟化しました。これは、BOJが金融政策正常化へ動く可能性も市場が織り込み始めたためです Reuters。
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ただし、円の方向性は今週末の米国経済指標やFRB人事、さらには米債利回り動向にも左右されるため、短期ポジションには注意が必要です。
4| 中銀の綱引きと地政学ショックへの感応度
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FRBは9月の25bp利下げ期待が90%近く、ただし経済データによっては修正の余地ありという状況です Reuters。
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BOJも日銀総裁の示唆やGDP動向から“正常化期待”が湧いてきています。現在は為替と金融政策の“微調整競争”。
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一方で、トランプ・プーチン会談におけるウクライナ和平の可能性がリスク資産と通貨に新たな材料として作用しています Reutersザ・ガーディアンバロンズ。
5| 通貨別動向整理
通貨ペア | 本日の動きと背景 |
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USD/JPY | PPI上昇で一時ドル支援も、日本GDP上振れで一時円高。149〜150円付近で推移。 |
EUR/USD | ドル調整に応じて若干のユーロ上昇。ただECB利下げ継続観測で上値は限定的。 |
GBP/USD | 英利下げ観測なしでポンド堅調。ドル調整の流れを受けて上値余地あり。 |
AUD/USD, NZD/USD | 上昇。ドル弱と利下げ観測で資源・リスク通貨買い戻し進む。 |
INR, KRWなどアジア通貨 | PPI→ドル抑制+日銀期待から割安圧力和らぐ動き。 |
金・BTC | 安全資産需要とドル弱に支えられ、価格上昇。 |
6| テクニカル展望:ドル円の攻防戦
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テクニカル予測では、ドル円の抵抗帯は150〜151円、サポートは148〜147円とされており、現状その間での推移が想定されているとの見方もあります RoboForexReuters。
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月末にかけて150円突破への示唆が続くなら短期トレンド継続見込みですが、失速すれば148円割れテストの可能性も留意すべき状況です。
7| 投資戦略提案(ショート~中期)
短期(〜1週間)
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USD/JPY:150円到達で戻り売りチャレンジ。SL=150.5/TP=148.5前後。
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EUR/USDロング:1.165超えでエントリー。TP=1.17前後。
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GBP/USD:ボラティリティ高い局面で順張りロング検討。
中期(数週間)
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ドル構造的弱前提:USD/JPY142〜145円、EUR/USD1.18〜1.20、GBP/USD1.36台目標。
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通貨バスケット戦略:EUR、AUD、INRなどへの分散エクスポージャー。
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金・債券などの非ドルヘッジ戦略強化。
8| 注目イベント今後
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Jackson Holeシンポジウム(8月22〜24日):パウエル発言で相場の舵が決まる可能性。
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米債入札・インフレ指標(CPI、PPI)の継続チェック。
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BOJ会合(8月末):政策の転換有無が円の見通しに大きく影響。
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米中・米欧通商交渉進展および石油需給関連状況。
9| 総括
本日は、一本調子のドル安・円高ではなく、「PPIインフレ」「日本GDP」「FRB・BOJ政策期待」「地政学リスク」など複層するファンダメンタルが交差した調整相場でした。
150円前後のドル円攻防は今週最大の焦点であり、市場参加者には「短期レンジ対応+中期トレンドを見据えた分散戦略」が求められる局面です。今夜以降も金利・インフレ・政治の波に敏感に対応しつつ、冷静にポジションを組み立てる姿勢が肝要です。
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