【2025年9月24日 為替市場ファンダメンタル分析】
— ドル反落と円の買い戻し、BOJ正常化観測が再び台頭
1.本日の市場全体像
24日の東京・欧州序盤の為替市場は、ドル売り・円買い優勢の展開でスタートしました。ドル円は一時 147.50円台まで下落。前日、米国債利回りが低下した流れを引き継ぎ、アジア時間では輸入企業のドル売り、海外投機筋のショートカバーが重なっています。
背景には、
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米国経済指標の鈍化による利下げ期待の再燃
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BOJによる政策正常化観測の強まり
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欧州通貨の底堅さによるドルインデックス(DXY)の軟調
といったファンダメンタル要素があります。
リスク選好度合いはやや不安定ながら、株式市場は落ち着きを保っており、ドル安が主要なドライバーになっています。
2.米国:利下げ期待が再浮上
2-1.弱めの米経済指標
前夜発表された 米コンファレンスボード消費者信頼感指数(9月) は予想の108を下回り、103.2 まで低下。高金利環境の長期化と雇用の鈍化懸念が消費マインドを押し下げています。
同時に、中古住宅販売件数も前年比▲4.5%減と低調で、住宅市場の停滞が改めて浮き彫りになりました。
これにより「12月FOMCでの追加利下げ」観測が再び市場に広がり、米2年債利回りは一時4.1%台から 3.95%台 へ急低下。金利差縮小を意識したドル売りが強まりました。
2-2.FRB高官の発言
セントルイス連銀のブラード総裁は「インフレ鈍化が続けば政策金利の調整も検討の余地」と発言。タカ派よりも中立〜ハト派寄りのメッセージが市場に安心感を与えています。パウエル議長は慎重姿勢を崩していませんが、次回FOMC(11月)に向けて利下げ派と慎重派の分裂が意識される可能性があります。
3.日本:BOJ政策正常化観測が再燃
3-1.植田総裁の発言が注目材料に
本日午前、植田日銀総裁は国会答弁で「物価安定目標の持続的・安定的な実現が視野に入ってきている」と発言。これが市場では「10月末会合での利上げの可能性」を再び織り込みに行く動きにつながっています。
先週までは「追加利上げは早くても年末」との見方が優勢でしたが、この発言を受けて 日米金利差縮小期待が急浮上。ドル円は東京時間後半から急速に147円台半ばまで下落しました。
3-2.日本のインフレと消費
8月全国消費者物価指数(CPI)のコアは前年比+2.8%と、BOJの目標2%を上回る状態が継続。輸入インフレの鈍化にもかかわらず、サービス価格の上昇が目立っています。
加えて、春闘賃上げの効果が秋口の給与に反映されており、実質賃金も持ち直しつつあります。これらはBOJが「物価安定と賃金上昇の好循環」を認める方向に追い風です。
3-3.円の短期ポジション状況
IMMポジションでは依然として円ショートが多く残っており、突発的な円高圧力がかかりやすい環境です。今日のような日銀要人の一言は、ショートカバーを誘発しやすく、ドル円の変動幅が拡大しています。
4.欧州・英国:金利据え置き観測と通貨の回復
4-1.ユーロ圏
ECB理事会メンバーの一部から「年内は追加利下げに慎重」という発言が出ており、ユーロは対ドルで持ち直しています。EUR/USDは 1.097台まで上昇。米金利低下と同時進行で、相対的なユーロ買いが優勢になっています。
ただし、ドイツIFO景況感指数は依然として弱めで、ユーロ上昇はあくまでドル安に伴うリバランスの範疇。1.10前後では上値が重くなる可能性があります。
4-2.英国
英国では8月のCPIが前年同月比+3.2%と予想よりやや高く、BOEの利下げ余地を狭めています。ポンドは対ドルで堅調に推移し、GBP/USDは 1.276〜1.278付近。ユーロ同様、ドル安が主因ですが、英国独自のインフレ圧力がポンドを支える形となっています。
5.資源通貨・コモディティ
5-1.豪ドル(AUD)
中国人民銀行(PBoC)が週明けに追加的な流動性供給を行ったことが好感され、AUDは対ドル・対円ともに底堅い。AUD/USDは0.67台後半を維持。豪中銀(RBA)のタカ派姿勢が残っていることも支えです。
5-2.カナダドル(CAD)
原油は一時1バレル=77ドル台まで下落後、やや反発。CADもドル安を受けて対ドルでじり高。USD/CADは1.34前後で推移中。
5-3.金
金先物はドル安の影響で 1オンス=3,800ドル台前半を維持。リスクヘッジ資金の流入は限定的ですが、金利低下環境下では底堅さが意識されています。
6.テクニカル視点
通貨ペア | 現状 | サポート | レジスタンス | コメント |
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USD/JPY | 147.5 | 147.00 | 148.50 | BOJ観測で下方向。147割れなら145台も視野 |
EUR/USD | 1.097 | 1.09 | 1.102 | ドル安優位で1.10を試す展開 |
GBP/USD | 1.277 | 1.27 | 1.285 | 英CPI支え、レンジ上抜けなら勢い増す |
AUD/USD | 0.678 | 0.672 | 0.685 | 中国材料次第で0.68超えトライ |
USD/CAD | 1.34 | 1.335 | 1.35 | 原油の持ち直し次第で下方向余地あり |
ドル円は特に要注意。日銀の発言で147円を割り込めば、一気に145円台まで円高が進む可能性があります。
7.リスク要因とシナリオ分析
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BOJのサプライズ政策転換リスク
10月会合前でも要人発言が続けば円ショート巻き戻しが激化し、ドル円急落の可能性。 -
米景気減速の深刻化
今夜発表の米新築住宅販売が弱ければ、ドル売り加速。逆に強ければ反発も。 -
地政学リスク
中東や台湾情勢に突発的なヘッドラインが出た場合、円と金への逃避需要が急増する恐れ。
8.トレーディング・戦略案
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USD/JPY:戻り売りスタンス
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現在の147.5〜148円は上値が重く、戻り売り優位。
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短期では147円割れを確認してショート拡大も選択肢。
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EUR/USD:押し目買い
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米金利低下を背景に1.10台乗せトライ。
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ただし1.102〜1.105にはテクニカル抵抗あり。
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GBP/USD:中期ロング
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BOEのタカ派スタンスとドル安が重なりやすい環境。
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AUD/USD:レンジ内上昇期待
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中国支援策が材料なら0.685突破狙い。
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9.総括
9月24日の為替市場は、「ドル安+円高バイアス」 がメインテーマになっています。米経済の減速シグナルが再び意識される一方で、BOJの政策正常化観測が円のショートカバーを誘発。結果、ドル円は148円の上値が重く、147円台へと軟化しました。
欧州通貨や資源通貨は、米金利低下とリスク選好の回復を追い風に対ドルで堅調に推移。リスクシナリオとしてはBOJ要人発言の継続と米指標のさらなる悪化が同時に進んだ場合、ドル円の急落(145円割れ)が起こり得ます。
現時点では「ドル安トレンドがじわじわ進行しつつ、BOJ材料による円高が断続的に発生する相場」と整理できます。短期的には戻り売り中心、中期的にはドル安・非ドル資産への資金シフトを基本戦略とするのが合理的です。
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