025年8月21日 為替市場レポート 米国経済指標の不透明感と世界的なリスク回避姿勢が強まる中、ドル円は小幅な反発も依然として上値は重い展開

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2025年8月21日 為替市場レポート

米国経済指標の不透明感と世界的なリスク回避姿勢が強まる中、ドル円は小幅な反発も依然として上値は重い展開


1. 市場全体の振り返り

2025年8月21日の為替市場は、前日の米国経済指標の結果や、米国金融政策をめぐる不透明感、さらに中国・欧州経済の減速懸念といった要素が複雑に絡み合い、主要通貨が神経質な値動きとなった一日でした。特にドル円は一時144円台半ばまで反発したものの、その後は米金利の低下やリスク回避の円買い需要が再び強まったことで143円台後半へ押し戻され、方向感の定まらない展開が続きました。

ユーロは対ドルで小幅安となり、欧州景気の減速とECBの追加利下げ観測が引き続きユーロ売り圧力につながっています。一方でユーロ円はドル円の動きに引きずられる形でやや下落。ポンドは英インフレ指標が市場予想を下回ったことから対ドル・対円で弱含みました。

資源国通貨では、豪ドルとNZドルが共に軟調で、これは中国景気の減速懸念が再び意識されたことによるものです。特に豪ドルは鉄鉱石価格の下落も重石となり、対円で93円を割り込む場面が見られました。カナダドルは原油価格が持ち直したことでやや下支えされましたが、大きな上昇には至らず。スイスフランは依然として安全資産需要が強く、対円でも高止まりの推移を続けました。

総じて市場全体は、米国の次回雇用統計やジャクソンホール会議でのFRB議長発言を見極めようとする「様子見ムード」が支配的で、積極的なポジション形成は抑制されている状況です。


2. 主要通貨ペアの動向

2.1 ドル円(USD/JPY)

現状:143.80円前後で推移。
背景:前日の米小売売上高は堅調だったものの、同時に発表された住宅関連指標や企業景況感が弱く、米経済の減速懸念が再浮上しました。米長期金利が低下する中、ドル円は144円半ばから上値を抑えられ、再び円高方向へ戻されています。
展望:米国債利回りの動向次第では142円台へ下押す可能性がある一方、FRB関係者がタカ派的な発言を行えば144円台半ばへの再上昇もあり得ます。レンジ相場の中での綱引きが続くでしょう。

2.2 ユーロドル(EUR/USD)

現状:1.0880ドル前後。
背景:ユーロ圏8月の消費者信頼感指数が市場予想を下回り、域内景気の減速懸念が強まったことでユーロ売りが優勢となりました。一方、米ドルも利下げ観測から積極的な買いは入りづらく、結果的に下値は限定的。
展望:来週に控えるECB理事会が焦点。利下げ幅や総裁のスタンス次第でユーロは再び方向感を探る展開となります。

2.3 ユーロ円(EUR/JPY)

現状:156.50円付近。
背景:ユーロドルでの軟調地合いとドル円の反落が重なり、ユーロ円も売り優勢となりました。前日比では約50銭の下落。
展望:ECBの政策動向が見極められるまでは方向感が出にくく、155円台後半から157円前半のレンジ内での推移が続く可能性が高いです。

2.4 豪ドル円(AUD/JPY)

現状:92.80円前後。
背景:中国の不動産市場の低迷に関する報道が再び材料視され、豪ドル売りが優勢となりました。鉄鉱石価格が下落したことも心理的に重荷となり、豪ドル円は93円を割り込む動き。
展望:豪準備銀行(RBA)の金融政策見通しよりも、中国経済の安定化策がどこまで実効性を持つかに注目が集まります。

2.5 NZドル円(NZD/JPY)

現状:87.10円付近。
背景:NZ準備銀行(RBNZ)の金融政策スタンスは据え置きですが、インフレの鈍化傾向が確認される中、利下げへの期待がじわじわと高まりNZドルは上値が重い展開。
展望:87円を下抜けるとテクニカル的には86円台半ばまでの下落も視野に入ります。

2.6 カナダドル円(CAD/JPY)

現状:106.10円前後。
背景:原油価格の持ち直しが支援材料となり、カナダドルは底堅さを維持。ただし米ドル安の影響で大幅な上昇は抑制され、106円台での推移が続いています。
展望:WTI原油価格がさらに上昇すれば107円方向を試す可能性もありますが、米ドル全般安が続くと上値は限定的となりそうです。

2.7 スイスフラン円(CHF/JPY)

現状:176.20円付近。
背景:地政学的リスク回避と株式市場の不安定さから、安全資産としてのスイスフラン需要が依然強い状況。
展望:円も安全資産として買われやすいものの、相対的にスイスフラン需要が上回っており、177円台をうかがう動きも考えられます。

2.8 ポンドドル(GBP/USD)

現状:1.2800ドル付近。
背景:英国の7月CPIが予想を下回り、インフレのピークアウト観測が強まったことでポンド売りが優勢となりました。
展望:BOE(イングランド銀行)が追加利上げを見送る可能性が高まっており、ポンドドルは下押しリスクが続きます。1.27ドル割れを試す展開に警戒が必要です。

2.9 ポンド円(GBP/JPY)

現状:184.20円付近。
背景:ポンドドルの下落に加えてドル円の反落も重なり、ポンド円は前日比で約70銭下落。
展望:183円台半ばまでの調整はあり得ますが、中長期的には日英金利差が依然として大きいことから下値は限定的と見られます。

2.10 ユーロポンド(EUR/GBP)

現状:0.8500ポンド付近。
背景:ユーロとポンドが共に弱含みとなる中で、相対的にユーロがやや優勢。結果としてユーロポンドは0.85台を維持しました。
展望:ECBとBOEの金融政策スタンスの差が鮮明になるまでは0.84~0.86のレンジ取引が続く公算です。


3. 今後の注目材料

  1. ジャクソンホール会議:FRB議長パウエル氏の発言内容が最大の焦点。市場は利下げの可能性を探っており、発言のトーン次第でドルが大きく動く可能性があります。

  2. 米国雇用統計:来週発表予定。労働市場の鈍化が明確になれば、利下げ観測が強まりドル安要因に。逆に強い数字となればドルの反発余地が広がります。

  3. 中国経済の安定化策:不動産市場や地方政府の債務問題への対策が実効性を伴うかどうかが、豪ドル・NZドルなど資源国通貨の動向を左右します。

  4. 欧州経済指標とECB理事会:ユーロの方向性を決める重要イベント。追加利下げの可能性が意識される中、市場は慎重な姿勢を維持しています。


4. まとめ

2025年8月21日の為替市場は、米国経済の不透明感、欧州・中国の景気減速懸念、そして地政学的リスクという複数の要因が同時進行し、主要通貨は方向感を欠いた展開となりました。ドル円は144円台に届く場面があったものの、その後は再び円高方向へ押し戻され、上値の重さが鮮明となっています。

ユーロは引き続き軟調で、ECBの利下げ観測が上値を抑制。ポンドもインフレ鈍化により弱含みました。資源国通貨は中国経済懸念に振らされやすく、豪ドル・NZドルの下落が際立つ一方、原油価格に支えられたカナダドルは底堅い動き。安全資産としてのスイスフランは高止まりを続けています。

当面の注目は、ジャクソンホール会議でのFRB議長発言と米雇用統計の内容です。これらの結果次第で、ドル円を中心に主要通貨が大きく動意づく可能性が高く、短期トレーダーにとっては重要な分岐点となるでしょう。

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