2025年10月15日 為替市場レポート
ドル軟化、円反発の兆し。利下げ期待と通商リスクが焦点
米ドルは前日に続き圧迫される展開となり、為替相場ではドル安/円高基調が目立つようになりました。米金融当局の発言では利下げ観測が改めて強まる一方で、米中貿易摩擦の再燃懸念も浮上。ドル円は152円台手前で反落圧力を受け、円買いの動きが目立つ局面もありました。ユーロやポンドといった欧州通貨は、欧州経済指標の弱さと米ドルの軟化を背景に対ドルで上昇傾向が継続。資源国通貨は原油や金属市況との連動性を強め、クロス円通貨では明確なトレンドが出にくい相場となりました。
以下では、相場を取り巻くマクロ環境や政策動向を整理した後、主要10通貨ペアそれぞれの動向と見通しを解説します。
1. マクロ・政策背景:ドルの軟化とリスク警戒
ドル安圧力と利下げ観測の強まり
米国では、FRBパウエル議長が未公開の財政・金融情報遮断期間(ブラックアウト期間)にもかかわらず、米景気減速と労働市場の冷え込みに触れ、「利下げ余地を評価する姿勢」を示唆したと報じられています。これが改めて市場に利下げ観測を呼び戻しました。Reuters+1
また、米ドル指数(DXY)は99ポイント台前半で停滞しており、ドル買いの余地が抑えられる状況が続いています。Reuters
米中通商リスクの復活
米中間で関税・輸送関連への対立が激化の兆しを見せ、投資家心理に冷や水を浴びせました。トランプ前大統領が一部の対中貿易関係を断つ可能性に言及したことを受け、通商リスクが改めて警戒されています。Reuters+1
このため、ドル円では上昇のピーク感を警戒する声が強まり、151~152円前後での反動調整が観察され始めました。FXStreet+1
日本の政治混乱と円の安全資産性
日本では、政権をめぐる混迷が深まり、与党の連立与党の離脱などが市場に不透明感をもたらしています。Reuters この政治的不安定性は、リスク回避ムード時に円買い圧力を高める要因となりえます。
また、海外要因で円が買われやすい局面では、円が相対的に安全資産通貨としての性格を発揮する可能性があります。ドル軟化+円買いという構図が進行すれば、ドル円は152円を上抜けしきれない状況に陥る可能性があります。
2. 主要10通貨ペアの動向と展望
以下に、主要10通貨ペアの「現状・背景・見通し」を整理しておきます。
| 通貨ペア | 現状付近レート* | 背景・材料 | 今後の見通し・戦略 |
|---|---|---|---|
| USD/JPY | 約 151.68円(10月15日時点) トレーディングエコノミクス+1 | ドル弱・利下げ期待+通商リスクで上値抑制。USD/JPYは152円台手前で反落。FXStreet+2FXStreet+2 | 151.80円〜152.50円が抵抗帯。152円を抜けられなければ、150円台前半への調整も視野。150円割れを否定できれば押し目買い検討。 |
| EUR/USD | 約 1.1606ドル(記事時点) Reuters | ドル安を背景にユーロ買い優勢。ただし欧州経済指標の弱さ、ECB利下げ観測が重し。 | 1.1550~1.1650のレンジを想定。1.1650突破できれば上昇延長。下降時は1.1550がサポート。 |
| EUR/JPY | 約 175.8円(EUR/USD × USD/JPY換算目安) | ユーロの強さ × 円安トレンドの掛け合わせ。 | 175〜177円を試す展開。176.50円付近が注目抵抗。下値は174円台前半が目処。 |
| GBP/USD | 約 1.29ドル付近 | 構造的なポンド強さある一方、英国内景気減速が警戒材料。 | 1.2850〜1.30レンジ。上抜けなら1.3050方向。下抜け時は1.28台後半へ調整可能。 |
| GBP/JPY | 約 195円台 | ドル円、ポンドドルの動きが連動。 | 194〜197円レンジ。196〜197円が上値。下値は194円割れ注意。 |
| AUD/JPY | 約 99円台前半 | 豪ドルは中国景気リスク、資源市況に敏感に反応。 | 98.50〜100円のレンジ。99円突破なら上値トライ。96円台前半がネックサポート。 |
| NZD/JPY | 約 91円台半ば | NZ経済・利下げ予想が重し。ただし円安追随で下支え。 | 90.50〜92.50円レンジ。91.50円を下抜けると調整加速の可能性。 |
| CAD/JPY | 約 122円台 | 原油高支援要素が強く、CADが対円で堅調。 | 122〜124円レンジ。原油次第で123円台維持可能。121円前後割れは注意。 |
| CHF/JPY | 約 192円台 | 安全資産としてのスイスフランが円に対しても一定の支持。 | 190〜195円レンジ。リスクオフ時は買われやすい構図。 |
| EUR/GBP | 約 0.90ポンド付近 | ユーロ買い、ポンド買いが交錯。 | 0.89〜0.92ポンドレンジ。ユーロ優勢なら0.91台への上昇余地。 |
※ “現状付近レート” は公開ニュース・換算値などを元にした目安値です。実際の市場レートとは異なる場合があります。
3. テクニカル分析・チャート所見
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ドル円(USD/JPY)は、上昇ウェッジ(rising wedge)構造からの 上限反発シグナル が観察されています。直近152円台後半を試した後、売り圧で押し戻されており、チャート上は下放れリスクが高まっていると見る向きもあります。FXStreet
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サポートラインは150円〜150.50円付近に集中しており、これを明確に割り込めば調整トレンド入りの可能性も考慮。
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ユーロドルはレンジ相場ながらも、1.1550ドルあたりが中立ゾーン。1.1650ドル突破で上振れ基調が加速。
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ポンドドルは1.2850〜1.30ドル間での攻防が鍵。トレンドを追うならこのレンジの上下ブレークを狙う方向が有効。
4. 今後の注目イベントとリスク要因
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米10月利下げ見通し(10月末FOMC):市場は10月29-30日のFOMCでの利下げ実施を1回前提に織り込みつつあります。パウエル議長の発言や経済指標がその観測を揺さぶる可能性。Reuters+1
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米CPI・消費指数:インフレ指数が強ければ利下げ期待後退、ドルの巻き返し材料にも。
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米中通商政策・関税リスク:報復関税・貿易摩擦の激化はリスクオフを誘う要因。
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日本の政策不確実性・為替介入警戒:政治混迷、与党連立崩壊などが円買い圧力を強める可能性。Reuters
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欧州景気・ECB政策:欧州指標の低迷が継続すればユーロ圏通貨は売られやすくなる。
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商品市況(原油・金属など):資源通貨(CAD、AUD、NZD)はこれらの影響を強く受けるため、価格変動が相場を動かすキー要因。
5. 戦略・トレードアイデア
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ドル円押し目買い or 戻り売り併用
抵抗帯付近での戻り売り戦略が現実的。抜ければ150円ミドル〜151円台トライも。 -
ユーロドルはレンジ戦中心
1.1550〜1.1650ドルレンジを基軸に、抜けを狙うストラテジー。 -
ポンドドル:レンジアウトを意識した戦略
1.2850〜1.30ドル間でブレーク方向の追従が効果的。 -
資源国通貨:トレンド変化に注意
原油価格の反発が続くならCAD/JPY上昇余地。AUD・NZDはモメンタムが明確化すれば短期売買機会あり。 -
リスク管理重視
主要イベント時にはポジション縮小、ストップ設定徹底が肝要。
6. まとめ
10月15日の為替相場は ドルの軟化+円の反発兆し を主題に展開されました。米ドルは利下げ期待と通商リスクの板挟みに直面しながらも、上値追いは抑制される形となっています。ドル円は152円台を試した後、調整圧力に直面。ユーロ・ポンドは対ドルで上昇を継続するも、欧州経済の脆弱性が上値圧となる構図です。資源国通貨は商品市況の動向次第で上下しやすい展開となるでしょう。
今後は米CPI発表やFOMCへの注目が集まり、15日以降の相場動向を左右するカギとなります。ドル円のレンジを中心に、主要通貨ペア全体のトレンド転換点を探る視点が重要な相場環境と言えるでしょう。

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