2025年8月20日 為替市場レポート
米金利低下とFRBの金融政策への思惑が交錯、ドル円は151円台で不安定な展開
1. 市場全体の振り返り
2025年8月20日の外国為替市場は、米国の金利動向とFRBの金融政策見通しをめぐる思惑が交錯し、ドルを中心とした値動きが大きく揺れ動いた一日となりました。特にドル円は、東京市場の早朝に151円台半ばで取引されたものの、米国債利回りが低下する局面では円高が進み、一時150円台後半まで押し戻されました。その後、ニューヨーク市場ではややドル買いが戻ったものの、全般的には方向感の乏しい展開でした。
背景としては、米国で発表された7月小売売上高が市場予想を下回り、米景気の減速懸念が広がったことが大きいといえます。また、ジャクソンホール会合を目前に控え、パウエルFRB議長をはじめとする金融当局者の発言が注目される中で、市場参加者は積極的なポジションを取りづらく、ドル相場全般に神経質な値動きが続きました。
2. 主要通貨ペアの動向
2.1 ドル円(USD/JPY)
20日のドル円は151円台前半から半ばで始まり、日中は150.90円付近まで下落する場面がありました。米長期金利が低下し、米経済指標の弱さを背景にドル売りが優勢となったためです。もっとも、日銀が追加緩和に踏み切るとの観測は後退しており、円の上値は依然として重い状況です。
今後の焦点は23日に予定されるジャクソンホール会合でのパウエル議長の講演です。市場はFRBが利下げに傾くかどうかを見極めようとしており、その結果次第ではドル円が150円を割り込む可能性もあれば、逆に152円台へ反発する可能性もあり、方向感が定まりにくい状況です。
2.2 ユーロドル(EUR/USD)
ユーロドルは1.0940ドル前後で推移しました。米ドルの軟調さを背景に一時1.0960ドル付近まで上昇したものの、ユーロ圏の8月ZEW景況感指数が予想を下回ったことで上値が抑えられました。
ECB内部では、追加利下げの可能性を巡る意見が割れており、政策スタンスが不透明な点もユーロ買いを限定的にしています。短期的にはドル主導での値動きが続くと考えられますが、中長期的にはユーロの底堅さも意識されています。
2.3 ユーロ円(EUR/JPY)
ユーロ円は165円台半ばで推移しました。ドル円の下落に引っ張られて円高が進んだものの、ユーロ自体が対ドルで比較的堅調に推移したため、下値は限定的でした。
ユーロ円は年初から大きく上昇してきており、テクニカル的には過熱感がある一方で、欧州の景気減速懸念が強まれば調整局面入りする可能性があります。165円を明確に割り込むかどうかが、次の展開を占う分岐点となりそうです。
2.4 豪ドル円(AUD/JPY)
豪ドル円は99円台で推移しました。オーストラリア準備銀行(RBA)が当面は現行金利を維持する姿勢を示していることが背景にあり、対ドルでの底堅さが円相場でも確認されました。
一方で、中国経済の指標が引き続き弱い内容となっており、豪ドルの上昇余地は限定的です。豪ドル円は心理的節目である100円を前にして上値が重くなりやすく、材料次第では98円台へ押し戻される可能性があります。
2.5 NZドル円(NZD/JPY)
NZドル円は88円台前半での推移となりました。ニュージーランド準備銀行(RBNZ)はインフレ抑制を優先しており、早期利下げの思惑が後退しているため、NZドルは相対的に底堅く推移しています。
ただし、世界的なリスク回避ムードが強まると、資源国通貨として売られやすい特性を持つため、円高局面では下落のスピードが速まる可能性に注意が必要です。
2.6 カナダドル円(CAD/JPY)
カナダドル円は111円台前半で推移しました。原油価格が1バレル=74ドル台で下げ止まっており、カナダ経済の安定感が意識されました。
もっとも、米景気減速による原油需要の減退懸念は引き続き上値を抑える要因となっています。111円台を維持できるかどうかが、次の展開を占う重要な水準となっています。
2.7 スイスフラン円(CHF/JPY)
スイスフラン円は171円前後で推移しました。地政学リスクの高まりを背景に、安全資産とされるスイスフランには断続的な買いが入りました。
一方で、円もリスク回避通貨として買われやすく、両者のバランスから大きな値動きにはつながっていません。中期的には170円台を中心としたレンジ相場が続くと見られます。
2.8 ポンドドル(GBP/USD)
ポンドドルは1.2780ドル付近で推移しました。英国のインフレ率が依然として高水準にあることから、イングランド銀行(BOE)が年内の利下げを見送るとの見方が支えとなっています。
ただし、英国経済の成長が鈍化している点が重荷となっており、ポンドの上値追いは限定的です。米ドルの動向に左右されやすい地合いが続くと見られます。
2.9 ポンド円(GBP/JPY)
ポンド円は193円台半ばで取引されました。ドル円の下落に連れ安となったものの、ポンド自体の堅調さが下値を支えています。
英国の経済指標次第ではボラティリティが高まる可能性があり、短期的には192円台半ばから194円台前半のレンジでの値動きが予想されます。
2.10 ユーロポンド(EUR/GBP)
ユーロポンドは0.8550ポンド付近で推移しました。ユーロ圏と英国の景況感の差があまり明確でないため、方向感のない展開が続いています。
中長期的にはECBとBOEの金融政策スタンスの違いが注目され、どちらが先に利下げに踏み切るかが通貨ペアの大きな動きにつながると見られています。
3. 今後の注目材料
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米経済指標
今週後半に発表される米新規失業保険申請件数や製造業関連の指標は、米景気減速懸念をさらに強める可能性があります。 -
ジャクソンホール会合
パウエル議長が利下げに前向きな姿勢を示せばドル安が進み、逆にインフレ警戒を強調すればドル高に反転する可能性があり、市場の最大の注目点となっています。 -
地政学リスク
中東情勢やアジア地域の緊張は依然としてマーケットに不安を与えており、安全資産への資金シフトが為替市場に影響を与える可能性があります。
4. まとめ
2025年8月20日の為替市場は、米経済指標の弱さとジャクソンホール会合を控えた思惑が交錯し、ドル円を中心に不安定な展開となりました。主要通貨ペアは総じてドルの方向性を探る展開となっており、短期的には米金利とFRBのメッセージ次第で上下に振れる可能性があります。
通貨ペアごとに見ると、ドル円は150円台後半から152円台のレンジを意識、ユーロドルは1.09ドル台半ばを中心に上下、豪ドル円やNZドル円は資源国通貨特有のリスクに敏感な動きが続くと予想されます。投資家にとっては、イベントリスクを前に過度なポジションを避け、慎重に相場を見極めることが求められる局面といえるでしょう。
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