2025年8月22日 為替市場レポート
ジャクソンホール会議を前に様子見ムード広がる中、ドル円は143円台で方向感を欠く展開
1. 市場全体の振り返り
2025年8月22日の為替市場は、世界的に重要イベントとされる「ジャクソンホール会議」を目前に控え、市場参加者の多くが積極的な取引を控える中での膠着感の強い一日となりました。ドル円は143円台後半から前半にかけて狭いレンジで推移し、明確なトレンドを形成できないまま引けています。
米国では依然としてインフレ率が高止まりする一方、個人消費や住宅市場の減速が見られ、FRBの利下げタイミングをめぐる思惑が交錯。米長期金利も小幅に上下を繰り返す不安定な値動きとなりました。これによりドルの強弱感が交錯し、主要通貨の多くはレンジ内での小動きに終始しています。
欧州市場ではユーロが対ドルで軟調となりました。ユーロ圏の製造業PMI速報値が再び低迷を示し、域内景気の弱さを確認させたためです。加えてECBの追加利下げ観測も根強く、ユーロは対ドル・対円双方で上値を抑えられました。
一方、英ポンドは小幅ながら反発。前日までの急落の反動に加え、一部BOE関係者が「インフレ警戒を続けるべき」と発言したことで、利下げ観測の後退がポンドの下支えとなりました。
資源国通貨では、豪ドル・NZドルが再び弱含み。中国当局が小規模な景気刺激策を発表したものの市場の期待を下回り、豪州経済への影響を懸念した売りが優勢となりました。カナダドルは原油価格の堅調さに支えられたものの、ドルの方向感が定まらない中で上値は重く、106円台半ばでの持ち合いが続きました。
2. 主要通貨ペアの動向
2.1 ドル円(USD/JPY)
現状:143.50円前後で推移。
背景:米国経済指標に方向感を与える強い材料はなく、米長期金利の動きに追随しながら小幅な上下を繰り返しました。ジャクソンホール会議でのFRB議長発言を前に、新規ポジションの構築を控える投資家が多く、出来高も細りがち。
展望:イベント通過までは143円前後を中心としたレンジ取引が続く見通し。万一パウエル議長がタカ派的発言をすれば145円方向を試す可能性があり、逆にハト派的な姿勢が鮮明になれば142円台割れも警戒されます。
2.2 ユーロドル(EUR/USD)
現状:1.0850ドル付近。
背景:ユーロ圏PMIが予想を下回り、製造業の停滞が続いていることが意識されました。ECBの利下げ観測も強まっており、ユーロは対ドルで軟調。ただし米ドル側も積極的な買い材料がないため、下げ幅は限定的。
展望:来週以降のECB理事会で追加利下げが行われるか否かが焦点。1.08ドル台前半を割り込めばテクニカル的に1.07台が視野に入る一方、1.09ドルを超えるには強い材料が必要です。
2.3 ユーロ円(EUR/JPY)
現状:155.80円前後。
背景:ユーロドルでの軟調地合いとドル円の上値の重さが相まって、ユーロ円は弱含み。156円を挟んでの持ち合いに終始しました。
展望:ECBのスタンス次第では155円割れのリスクもあります。特に市場が利下げに確信を持てばユーロ売りが強まりやすい状況です。
2.4 豪ドル円(AUD/JPY)
現状:92.60円付近。
背景:中国当局が不動産融資に関する小規模な支援策を発表したものの、市場の期待を大きく下回り豪ドル売りが強まりました。鉄鉱石価格も軟調で、豪ドル円は93円を割り込んだまま。
展望:RBAの政策よりも中国経済の行方が最大のカギ。92円台前半を割り込むと91円台への下落余地が広がります。
2.5 NZドル円(NZD/JPY)
現状:86.90円付近。
背景:NZ経済指標は目立った材料にならず、豪ドルに連れ安となる形でNZドルも軟調。投資家心理の悪化がリスク通貨を圧迫しました。
展望:87円を明確に割り込むと、次の節目は86円半ば。短期的には下落リスクが意識されやすい局面です。
2.6 カナダドル円(CAD/JPY)
現状:106.50円付近。
背景:原油価格は1バレル=79ドル台まで反発し、カナダドルを下支えしました。ただしドル円自体の方向感が乏しいため、上値は限定的。
展望:原油市場がさらに堅調さを増せば107円台を試す可能性がありますが、現状はレンジ圏内の取引が続く公算が高いです。
2.7 スイスフラン円(CHF/JPY)
現状:176.10円前後。
背景:地政学的な不透明感が続く中、安全資産としてのスイスフラン需要が根強く維持されています。ただし直近では過熱感もあり、177円を上抜ける力強さは不足。
展望:短期的には175円台半ばから177円までの範囲での推移が続きそうです。
2.8 ポンドドル(GBP/USD)
現状:1.2820ドル前後。
背景:前日までの急落の反動と、BOE関係者のタカ派発言が支援材料となり、ポンドは小幅に反発しました。ただしインフレ鈍化傾向は変わらず、中長期的には利下げ観測がくすぶります。
展望:1.28台前半を維持できるかどうかが焦点。下方向は1.27ドル台前半がサポートとなります。
2.9 ポンド円(GBP/JPY)
現状:184.20円付近。
背景:ポンドドルの小幅反発に支えられたものの、ドル円が方向感を欠いたため横ばい気味。
展望:183円台半ばから185円台前半までのレンジ内での推移が想定されます。
2.10 ユーロポンド(EUR/GBP)
現状:0.8460ポンド前後。
背景:ユーロ安・ポンド小幅高の組み合わせにより、ユーロポンドは下落。0.85を割り込んで推移しました。
展望:0.84台半ばがサポートとして意識される一方、反発しても0.85台前半を上抜けるには材料不足。
3. 今後の注目材料
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ジャクソンホール会議(本日開催)
・最大の焦点はFRB議長パウエル氏の講演。タカ派かハト派かでドル円の方向性が大きく変化します。
・市場は9月会合での利下げの有無を注視しており、わずかなニュアンスの違いにも敏感に反応するでしょう。 -
米国経済指標
・来週は耐久財受注やPCE物価指数など、FRBの判断材料となる指標が相次ぎます。
・特にPCEはインフレの粘着性を測る上で重要であり、利下げ時期を見極める材料になります。 -
欧州経済指標とECB理事会
・製造業の低迷に加え、サービス業も鈍化の兆し。ECBが9月会合で利下げに踏み切るかどうかが焦点。 -
中国経済対策
・景気刺激策の規模が市場期待を下回っており、今後追加策が打ち出されるかどうかに注目。
・豪ドル・NZドルの動向を左右する最大の材料です。
4. まとめ
2025年8月22日の為替市場は、ジャクソンホール会議を目前に控え、全体的に方向感を欠いた展開となりました。ドル円は143円台半ばでの持ち合いに終始し、主要通貨の多くも狭いレンジでの推移にとどまりました。
ユーロは景気減速懸念とECB利下げ観測で軟調。ポンドは小幅反発したものの根本的な下押しリスクは残ります。資源国通貨は中国経済への懸念により弱含み、豪ドル・NZドルの下落基調が続きました。一方、原油に支えられたカナダドルと、安全資産需要を背景にしたスイスフランは比較的底堅さを見せています。
本日の最大イベントであるジャクソンホール会議は、今後の為替市場の方向性を決定づける重要な分岐点となります。特にFRB議長の講演は、ドル円をはじめとする主要通貨に大きなインパクトを与える可能性が高く、短期的なボラティリティの高まりに注意が必要です。
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