2025年8月26日 為替市場レポート
ジャクソンホール通過後、ドル買い優勢も利下げ観測がくすぶり不安定な相場展開
1. 市場全体の振り返り
2025年8月26日の為替市場は、先週末に開催されたジャクソンホール会議を受けて、市場心理が一段と揺れ動く一日となりました。FRBパウエル議長は「インフレの鈍化が確認されるまで利下げを急がない」としつつも、「必要に応じて年内に政策スタンスを調整する用意がある」と述べ、タカ派・ハト派の両方の側面をにじませる内容でした。
この発言を受け、市場は一時的にドル買いに傾きました。FRBが直ちに利下げに踏み切るとの期待が後退したため、米長期金利は小幅に上昇し、ドル円は144円台半ばまで買われました。しかしその後、「インフレ抑制に自信がある」というニュアンスが意識されると、逆に利下げ観測が再浮上し、ドルの上昇は一服。終盤は143円台後半で引けました。
欧州では、ECB理事の一部から「景気減速を受け追加利下げを検討すべき」との発言が相次ぎ、ユーロは対ドルで軟調。一方、英ポンドはBOE関係者がインフレへの警戒姿勢を崩さず、比較的底堅さを維持しました。
資源国通貨は引き続き軟調。中国の不動産市況悪化と鉄鉱石価格の下落が豪ドルを押し下げ、NZドルも連れ安。カナダドルは原油価格が下げ渋ったことで下値を限定したものの、ドル高の圧力に抗しきれず弱含みました。
2. 主要通貨ペアの動向
2.1 ドル円(USD/JPY)
現状:143.80円前後。
背景:ジャクソンホール会議でのFRB議長発言を受け、一時144.50円まで買われましたが、その後利下げ観測が再燃し反落。米10年債利回りは4.20%近辺まで上昇したものの、その後は4.15%台へ戻りました。
展望:今後の焦点は米8月雇用統計とPCE物価指数。利下げ開始時期を見極める材料となり、結果次第でドル円は142円台半ばから145円台まで幅広い値動きが想定されます。
2.2 ユーロドル(EUR/USD)
現状:1.0830ドル付近。
背景:ECB当局者のハト派的発言がユーロを圧迫。ユーロ圏景気の減速感が強く、特に製造業PMIが低迷を続けていることが市場心理を冷やしました。
展望:1.08ドル割れが目前。割り込めばテクニカル的に1.07台半ばが意識される可能性あり。上値は1.09ドルが依然として重い状況。
2.3 ユーロ円(EUR/JPY)
現状:155.70円前後。
背景:ユーロドルの下落が重石となり、ユーロ円も156円を割り込みました。ドル円が比較的堅調だったため下げは限定的ですが、戻りの弱さが鮮明です。
展望:155円台前半を割り込むと売りが加速する可能性。ECBの追加利下げが現実味を帯びれば152円方向も視野。
2.4 ポンドドル(GBP/USD)
現状:1.2840ドル付近。
背景:BOE当局者が「インフレ目標達成にはまだ時間が必要」と発言し、利下げ観測をやや後退させたことでポンドは底堅く推移。
展望:短期的には1.28ドルを下値に堅調さを維持できるかが焦点。上値は1.29ドル台前半で上値抵抗が意識されます。
2.5 ポンド円(GBP/JPY)
現状:184.70円前後。
背景:ドル円の反落とポンドドルの底堅さが交錯し、185円台を回復できず。方向感に欠ける展開が続いています。
展望:183円台後半を下値、185円台半ばを上値としたレンジ相場が続きそうです。
2.6 豪ドル円(AUD/JPY)
現状:92.30円付近。
背景:中国の景気減速懸念が強まる中、豪ドル売りが継続。鉄鉱石価格が下落し、資源輸出国通貨としての弱さが目立ちました。
展望:92円を割り込むと心理的な節目の91円台へ下落余地が広がる。中国当局の追加景気刺激策が出なければ豪ドルは上値が重い展開が続く公算。
2.7 NZドル円(NZD/JPY)
現状:86.70円前後。
背景:豪ドル同様、中国懸念によるリスク回避の流れでNZドルも下落。NZ国内の材料が乏しく、外部要因に振られやすい状況。
展望:短期的には86円割れを試す展開が警戒されます。
2.8 カナダドル円(CAD/JPY)
現状:106.30円付近。
背景:原油価格は1バレル=78ドル台で下げ渋ったものの、ドル高優勢の流れに押されてカナダドルも軟調。
展望:原油価格次第で107円方向に反発する可能性はあるが、ドル円が軟化すれば再び106円割れを試す公算。
2.9 スイスフラン円(CHF/JPY)
現状:176.40円前後。
背景:世界経済の不透明感が続く中、安全資産としてのスイスフラン需要は根強い。ただし直近の上昇で買われすぎ感も出ており、上昇の勢いは鈍化。
展望:175円台半ばをサポートに持ち合い推移が続く可能性。
2.10 ユーロポンド(EUR/GBP)
現状:0.8440ポンド付近。
背景:ユーロ安・ポンド堅調の組み合わせで、ユーロポンドは0.84台前半へ下落。
展望:0.84割れを試す可能性がある一方、短期的には売られすぎの反発余地も。
3. 今後の注目材料
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米経済指標
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今週発表される耐久財受注、個人消費支出(PCE)物価指数はFRBの政策判断に直結するため、ドル相場に大きな影響を与える可能性が高い。
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ECBの政策動向
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ユーロ圏の景気後退懸念が強まる中、9月会合で利下げが行われるか注目。ユーロドルは一段安リスクを抱える。
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中国の景気対策
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豪ドル・NZドルにとって最大の外部要因。追加刺激策の有無によって方向性が左右される。
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原油市場
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原油価格が再び下落すればカナダドルに逆風。供給面の要因や地政学リスクに注意。
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4. まとめ
2025年8月26日の為替市場は、ジャクソンホール会議通過後も不安定さを増しています。FRB議長の発言はタカ派・ハト派双方の要素を含んでいたため、市場は明確な方向感をつかめず、ドル相場は乱高下を伴いながらレンジ取引にとどまりました。
ドル円は144円台を試すも定着できず143円台後半へ戻り、ユーロはECB利下げ観測で軟調。ポンドはBOEのタカ派姿勢で底堅さを維持しましたが、資源国通貨は中国リスクで下押しが続いています。
今後は米経済指標、特にPCE物価指数が注目されます。これによりFRBの利下げ時期に対する市場の見方が大きく変化する可能性があり、為替市場は短期的に大きな値動きが出ることが予想されます。投資家にとっては引き続きリスク管理を徹底すべき局面です。
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