2025年8月29日 為替市場レポート
米PCE発表前で様子見ムード、ドル円は145円目前で上値を抑えられる
1. 市場全体の振り返り
2025年8月29日の為替市場は、翌日に控える米PCEデフレーター(FRBが最も重視するインフレ指標)を前に、全体的に取引が控えめな一日となりました。市場参加者はポジションを積極的に傾けにくく、主要通貨は狭いレンジでの値動きが中心でした。
ドル円は145円手前で上値を試す場面があったものの、利益確定売りや当局の警戒感を背景に伸び悩み、144円台後半での推移となりました。米10年債利回りは前日同水準の4.23%付近で安定しており、金利要因による大きな変動も見られませんでした。
ユーロは引き続き軟調。ユーロ圏景気の低迷が意識され、1.08ドルを割り込んで推移。ポンドは小売売上高の好調さを背景に堅調さを維持しました。資源国通貨は、中国政府が小規模ながらも追加の景気刺激策を発表したとの報道で下支えされましたが、反発力は限定的でした。
2. 主要通貨ペアの動向
2.1 ドル円(USD/JPY)
現状:144.75円前後。
背景:前日までのドル高基調を引き継ぎつつも、145円を目前に上値の重さが目立ちました。米経済の底堅さからドル高材料は揃っているものの、当局の介入警戒感が市場に広がっているため、買い進めにくい状況。
展望:本日の米PCEが市場予想を上回れば145円突破も視野に入るが、弱ければ143円台半ばまでの反落もあり得ます。短期的には「イベント待ちの膠着」が続きそうです。
2.2 ユーロドル(EUR/USD)
現状:1.0780ドル付近。
背景:ユーロ圏経済指標の低調さが改めて意識され、1.08ドルを明確に下回って推移。ECB関係者のハト派発言もあり、投資家心理はユーロ売りに傾いています。
展望:1.0750ドルを下抜けすると、1.07ドル台前半まで下落する可能性。反発局面では1.0830ドルが上値抵抗。
2.3 ユーロ円(EUR/JPY)
現状:156.00円前後。
背景:ドル円の高止まりがユーロ円を支えつつも、ユーロ自体の弱さが足を引っ張り、方向感は限定的。
展望:155.80円を維持できれば底堅さを確認できるが、割り込めば155円台半ばまで調整余地。上値は156.50円が重し。
2.4 ポンドドル(GBP/USD)
現状:1.2870ドル付近。
背景:英国小売売上高の好調を背景に底堅さを維持。BOEの利下げ観測は残るものの、ユーロよりも強い通貨として選好されやすい状況。
展望:1.2850ドルをサポートに、1.29ドル方向を試す展開。ただし米金利上昇によるドル買いが再燃すると下押し圧力が強まる可能性。
2.5 ポンド円(GBP/JPY)
現状:186.40円前後。
背景:ドル円の強含みとポンドの底堅さが重なり、堅調な推移。185円台後半が確固たるサポートになりつつある。
展望:186円を維持できれば、187円方向を試す流れ。リスクは米PCEでドル円が下落した場合に連れ安となるシナリオ。
2.6 豪ドル円(AUD/JPY)
現状:93.10円前後。
背景:中国政府が追加のインフラ投資を検討しているとの報道があり、資源国通貨に一時的な買い戻し。ただし豪州自身の経済指標が弱く、持続力は限定的。
展望:92.80円を下値、93.50円を上値とするレンジ取引の公算が大きい。次の大きな材料は来週発表の中国PMI。
2.7 NZドル円(NZD/JPY)
現状:87.40円付近。
背景:豪ドルに連動する形でじり高。NZ国内の材料は乏しく、外部要因に振らされる展開。
展望:87円を維持しながら88円方向を目指す展開。ただし豪ドルが反落すると弱含みとなる。
2.8 カナダドル円(CAD/JPY)
現状:107.20円前後。
背景:原油価格が小幅反発したことが支援要因。ただし原油市場の需給見通しは不安定で、方向感は限定的。
展望:107円を維持できれば上値試しが続くが、106.70円を割り込むと調整色が強まる。
2.9 スイスフラン円(CHF/JPY)
現状:177.40円前後。
背景:世界的なリスク回避需要が乏しい中で、フランの買いは限定的。ただし円安トレンドに支えられ、高値圏を維持。
展望:177円を下値に178円を試す展開。ドル円が145円を突破すると連れ高の可能性も。
2.10 ユーロポンド(EUR/GBP)
現状:0.8385ポンド前後。
背景:ユーロ安・ポンド高の流れが鮮明。前日は0.84割れを意識しましたが、29日はさらに下値を探る展開。
展望:0.8370を割ると0.8350付近までの下落余地。反発しても0.8420が重い抵抗。
3. 今後の注目材料
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米PCEデフレーター(8月30日発表予定)
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市場予想:コア前年比 +2.5%。
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強ければFRBが利下げを先送りするとの見方が強まり、ドル高材料。逆に弱ければ利下げ観測が強まり、ドル安要因に。
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米国株式市場の動向
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PCE前のポジション調整で株価が下落すればリスク回避の円買い要因。反対に株高が続けば円売りが強まる可能性。
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ECB要人発言
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景気減速懸念が強まる中、利下げに前向きな発言が増えればユーロ売りが継続。
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中国経済関連ニュース
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豪ドル・NZドルの方向感を決める重要要因。追加刺激策の具体化があれば反発の余地。
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4. まとめ
2025年8月29日の為替市場は、米PCEを控えて様子見ムードが支配的となり、主要通貨は小幅レンジに留まりました。ドル円は145円を目前に足踏み、ユーロは1.08ドルを割り込み、ポンドは底堅さを維持。資源国通貨は中国関連ニュースで下支えされましたが、方向感は限定的でした。
今後の焦点は30日に発表される米PCEデフレーター。結果次第でドル円が145円を突破するか、143円台へ反落するかの分岐点となるでしょう。FRBの政策見通しが大きく変動する可能性があるため、本日は「嵐の前の静けさ」と言える一日でした。
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