2025年9月16日 為替市場レポート
ドルは利下げ観測に揺れ、USD/JPYは147円付近で下落圧力。ユーロ・豪ドルがドル安の恩恵を受ける展開へ
1. 市場全体の振り返り
この日は、投資家が来るべき米連邦準備制度(Fed)の金利声明とSEP(経済予測の要約)に向けてポジションを調整する動きが強まりました。市場では25ベーシスポイントの利下げがほぼ確定視されており、加えて年末にかけてさらに複数回の利下げが見込まれています。Reuters+2Reuters+2
米輸入価格も8月に予想外の上昇を見せ、特に資本財・消費財の輸入物価が上昇したことがインフレの底堅さを示す材料となりました。Reuters
さらに、米国の労働市場の悪化が指摘されており、これが利下げ観測をさらに強めている一方で、インフレがFedの目標を上回る水準にあるため、パウエル議長らが声明や記者会見でどのようなバランスを取るかが注目されます。フィナンシャル・タイムズ+1
株式市場はリスクオンの動きが続き、アジア株が上昇、そして金価格も新高値を更新するなど、ドル安傾向=リスク許容度上昇の構図が鮮明になっています。Reuters+1
日本では、政治面および日銀金融政策の先行き不透明感がUSD/JPYに影響を与えており、円がやや強含む動きが観察されました。FX Leaders+1
2. 主要通貨ペアの動向と戦略
以下に10の主要通貨ペアについて、「現状」「背景」「戦略」を整理します。
通貨ペア | 現状水準 | 背景・材料 | 今後の戦略ポイント |
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USD/JPY | 約147.0〜147.5円付近で推移。アジア時間帯には147円を割り込む動きも見られた。FX Leaders+2Investing.com+2 | Fed利下げ観測の高まり+日本の政治変動(日銀見通し不透明・新首相選出見通しなど)で、ドルに対して円の反応が強くなってきている。米輸入価格上昇がドル安圧の一因とも。Reuters+2Reuters+2 | 146.60~148円レンジを意識。147円を明確に割るなら146円割れも視野。上値は147.50〜148円が抵抗帯。短期売り場面が増える可能性。 |
EUR/USD | 約1.18ドル台前半。ドル安を背景に上昇圧力が見られる。FXEmpire+2Reuters+2 | 米利下げ期待がユーロ買いを促す一方、欧州の景気回復力とインフレ見通しがやや弱めなので、利上げ・利下げ双方の期待が混在。ECBの発言・データ次第。 | 短期的には1.18ドルを支持として押し目買いが有効。1.20ドル方向の上抜け余地も確認されたら順張り可能。逆にデータが悪ければ1.175〜1.17ドルへ調整。 |
GBP/USD | ポンドもドルの弱さの恩恵を受けやすい流れ。1.35台を回復しつつある。 | 英国の賃金・雇用データにブレーキがかかるものの、米ドルの重しが続くと相対的にポンド買いが優勢。BOEのQT(量的引き締め)政策やインフレ見通しも材料。フィナンシャル・タイムズ | 1.34~1.36のレンジでの動きが中心。上値が伸びるなら1.37ドル近辺試し、下値では1.34ドル台前半でのサポートに注目。 |
AUD/USD | 豪ドルが対ドルで上昇、リスク通貨の一環として買われている。 | 米利下げ期待+商品価格(特に鉄鉱石・石炭・エネルギー資源)が支え。中国景気見通しもセンチメントに影響。 | 押し目買い狙いが有効。0.65〜0.66ドル帯を維持できるかが重要。上抜け狙うなら0.67ドル台を試す展開。下抜けるなら0.64ドル付近サポートを注視。 |
USD/CAD | ドル弱の中、上値の重さを見せている。 | 原油価格の動きがCADにとってカギ。米ドルの総体的な圧迫と北米経済データも注目。 | 上下どちらにも振れるレンジ。1.36〜1.38付近が抵抗群。原油の支持があればドル/加ドルの下落余地あり。上昇の場合は利確のタイミングを慎重に。 |
CAD/JPY | 約108円前後。ドル円の動きと連動して動いているが、CADの対ドル強さが多少円に反映。 | 原油価格やカナダの経済指標、米ドルの動向がダブルで影響。日本円の需給や政治的要因も影響を増している。 | 106〜110円レンジ想定。108円を上抜けるなら109円~110円方向。106円台への下押しに備えてサポート重視。 |
EUR/JPY | 約173〜174円付近での持ち合い。 | ドル円の円安・ドル弱を背景にユーロ円は上昇圧力。ただしユーロ自体の上値を抑える要素(景気・ECB見通し)が見える。 | レンジは170〜175円。上限をブレイクするなら176円方向。下限での押し目買い機会あり。 |
AUD/JPY | 豪ドル円も93円台後半へ反発を試す展開。 | 豪ドルの外部材料が改善しており、円に対する弱さも市場に織り込まれてきている。 | 93〜95円のレンジを想定。94円〜95円での上値トライ、93円割れへの下落リスクあり。 |
CHF/JPY | スイスフラン円は比較的静かに推移、安全資産としての反応は限定的だが底堅さ。 | 世界的な不確実性が残る中で、リスク回避通貨としての需要も断続的。日本の円安も加味されてフランがやや買われる。 | 180〜183円あたりのレンジ。182円前後をサポートとし、上値では183円~184円を意識。急変時には逆張り戦術もあり。 |
NZD/USD | NZドルも豪ドルに追随する形で上昇圧力。 | オーストラリア・中国との関係、商品価格、米ドルの総体的な圧迫が影響。 | 押し目買い中心。0.60〜0.62付近を守れるかがポイント。上抜け時には0.64ドル近辺を目指す展開。 |
3. マクロ・政策・心理のキードライバー
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FOMC・利下げ見通しの明確化
市場では9月の利下げ(25bp)がほぼ確実視されており、さらに年末にかけて複数回の利下げが織り込まれています。Fedの声明と“dot plot”(SEP)で将来の利下げペースや量がどれだけ示されるかが、ドル・通貨相場全体の方向性を決める鍵です。Reuters+1 -
インフレの足元の粘り強さ
米輸入価格の上昇や8月CPIの前年比+2.9%、コアCPI+3.1%など、インフレが完全に収まったわけではないというデータが、Fedに慎重姿勢を保たせる要因となっています。Bureau of Labor Statistics+2AP News+2 -
日本の政治と日銀政策の不確実性
日本では首相交代の動きやLDP内での動向、新たなリーダーの選出が近づいており、これが金融政策、特に日銀の見通しに影響を及ぼす可能性があります。円安・円高どちらにも影響しやすい材料として注目されています。FX Leaders+1 -
リスク資産の動きと安全資産への回帰
株式市場は全体として強含みですが、Fed政策やインフレ見通しによる不確実性から、リスク資産への資金流入・流出が短期的に揺れやすく、そのたびに円やスイスフランなど安全通貨が買われるシーンが散見されます。 -
技術的指標の示す売買圧力
テクニカル的には、USD/JPYは147.50〜149円あたりに強い抵抗帯が形成されており、サポートは146.50〜146.00円付近。移動平均線やMACDなどで弱めのシグナルも出てきており、下落圧力を伴う調整局面への警戒が出ています。Investing.com+2FXEmpire+2
4. 戦略まとめと注目シナリオ
トレード戦略:
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USD/JPY
今のところレンジ内での売買が主戦場。147.00円割れを狙った短期売り、147.50〜148円付近での戻り売り対応が有効。 -
EUR/USD・GBP/USD
ドル安を受けて上昇余地あり。EUR/USD は1.18ドル台をキープできれば1.20ドル近くまでの上昇余地。GBP/USD も同様に1.36〜1.37ドル付近を試す可能性。 -
商品通貨(AUD/USD, NZD/USD, CAD/JPYなど)
グローバルなドル安+商品価格の支援を背景に買い圧力が強まる可能性。特に豪ドル・カナダドルは利得が生じやすいテーマ。 -
安全通貨・円・スイスフラン
リスクイベントや米Fedのタカ派なニュアンスが出れば、反応が早い通貨。下落トレンドでは利確売り、上昇局面では逆張り的に買う戦術が想定される。
注目シナリオ:
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ややタカ派寄りの声明:Fedが利下げを示す一方で、インフレリスクや成長見通しの弱さを強調しすぎない場合、ドルは下げ止まり、USD/JPY は147円台回復か。
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非常にハト派的な見通し:利下げペースや回数を強調、利下げ後の政策緩和見通しが強まれば、ドル全面安の流れ。EUR、GBP、AUDなどが恩恵を受け、USD/JPY は146円を割り込む可能性あり。
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予想外のインフレ加速データ:輸入価格などの予想外上昇がインフレ圧力を示せば、Fedが利下げ慎重に。ドル高・円安の一時反応も。
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日本政治でのサプライズ:新首相やLDPの動きにより日銀政策のタカ派転換期待が出ると、円安圧力が強まる可能性あり。
5. 今後の注目イベント・スケジュール
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Fed 会合&SEP 発表(本日深夜実施)
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米小売売上高・小売コア売上高
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英国雇用・賃金データ
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日本の新首相選出および日銀の次期総裁・政策スタンス発言
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中国経済指標(PMI /消費者信頼感)
6. 総括
9月16日の為替市場は、Fedの利下げ観測、米国内のインフレデータ、日本の政策・政治不透明性、安全資産需要など複数の要素が混在する中で、USD/JPY を含むドル相場が調整局面入りしつつあることが鮮明となりました。市場は「利下げは来るが、どれだけの規模とペースか」が焦点であり、Fed声明とSEPがその鍵を握ります。
通貨ペア別には、ドル安を背景にEUR/USD や AUD/USD、GBP/USD に上昇余地があり、USD/JPY は下値サポートを確認しながら売り場探し、CAD/JPY など商品通貨も同様にテーマ通貨として注目されます。円・スイスフランなど安全通貨は不確実性が材料となるたびに反応しやすいポジションです。
トレーダーとしては、ポジションを大きく傾ける前にFed声明を見極めること。利下げを前提とする戦略は有効ですが、タカ派な予想を裏返すような要素があれば先に利益を確保する柔軟性が求められます。今後数日は通貨相場にとって非常に重要な期間となるでしょう。
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