【2025年6月20日 為替市場レポート】
地政学とインフレリスクが市場を支配:ドル反発、円高一服、安全通貨の明暗に分かれる展開
1. 市況概観
6月20日の為替市場は、イスラエルとイランの衝突継続やトランプ政権が米関与を検討しているとの報道により、前日に比べて一気にリスクオフムードが再燃しました。これを受け、ドル指数は週間で+0.45%と約1カ月ぶりの上昇を記録、ドル円は約145.24円まで反発しました。
同時に、中東情勢緩和期待から原油価格が2%下落、これがカナダドルなど商品通貨に対して下落圧力となりました。
一方、ECBのビヨルロイ政策委員は、欧州インフレが2%を下回る見通しと引き換えに、今後6か月以内に利下げに踏み切る可能性を指摘し、ユーロ相場に上値圧力を与えています。
2. 主力10通貨ペアの動き
2.1 USD/JPY(ドル/円)
-
水準:145.24円(終値ベースで0.09%上昇)tradingeconomics.com。
-
背景:地政学リスク→リスクオフ傾向→円・ドル買い相乗。加えて、日銀総裁植田氏の金利引き上げ含みの示唆が円の下支え役割を果たしました。
-
展望:145.00–146.00円のレンジを軸とし、147円突破にはファンダメンタルの継続確認が必要。下降圧力一方では144円台ミドルがサポートライン。
2.2 EUR/USD(ユーロ/ドル)
-
水準:1.157前後。
-
背景:ドル買いの巻き戻しにより一時押されるが、ECB利下げ見通しが下支え。
-
展望:1.150–1.160のレンジを維持。ECB利下げ観測強まり次第、1.170トライの展開も視野。
2.3 EUR/JPY(ユーロ/円)
-
水準:168円台。
-
背景:ドル円上昇+ユーロ堅調が加わり堅調推移。
-
展望:167–170円のレンジでの小動き継続。突発リスクが高まれば上下どちらにもブレイク可能性。
2.4 AUD/JPY(豪ドル/円)
-
水準:93円前後。
-
背景:米ドル買い戻しに影響されつつも、原油下落が追い打ちreuters.com+5reuters.com+5forex.com+5reuters.com+1reuters.com+1。
-
展望:原油に反応する局面を警戒しつつ、90–95円レンジでの方向感なしの展開。
2.5 NZD/JPY(ニュージーランドドル/円)
-
水準:86円前後。
-
背景:商品通貨であるNZDにもドル買戻しが影響。
-
展望:85–88円レンジでの推移が続く見通し。リスクオフが継続の際は下抜けも。
2.6 CAD/JPY(カナダドル/円)
-
水準:105円台前半。
-
背景:原油価格低下→商品通貨として弱含む一方、ドル買い圧力で抑制。
-
展望:104–106円のレンジ継続。原油価格の動向が鍵に。
2.7 CHF/JPY(スイスフラン/円)
-
水準:0.82CHF/USD→約175円台。
-
背景:地政学リスク継続→スイスフランの安全通貨としての買い強まり。
-
展望:176円前半の抵抗水準に注目。突破すれば177円台へ上昇余地あり。
2.8 GBP/USD(ポンド/ドル)
-
水準:1.36ドル前後。
-
背景:米ドル反発局面でもポンドの対ドルは限定的な押し戻し。
-
展望:1.35–1.37レンジ。BoEの利上げ観測が継続する限り下支えあり。
2.9 GBP/JPY(ポンド/円)
-
水準:195円台中盤。
-
背景:ドル円・ポンドが堅調→ポンド円も高値維持。
-
展望:193–197円レンジを中心に小動き推移となる可能性。
2.10 USD/CAD(ドル/カナダドル)
-
水準:1.365前後。
-
背景:ドルの安全資産需要により商品通貨であるCADが相対的に弱い。
-
展望:1.36–1.38レンジでの推移が予想され、原油動向が影響を与える。
3. マクロ経済・政策背景
● 中東情勢の継続リスク
中東情勢が一時的に緩和傾向を見せたものの、米軍の関与含みで再び緊張が高まり、為替市場ではドル・円・スイスフランが安全資産として人気。
● FRBの慎重姿勢とインフレ警戒
パウエル議長はインフレ上昇リスクを警告し、利下げに慎重なスタンスを示しています。市場ではインフレ動向次第ではターゲットレンジ維持もあり得るとされています。
● ECBの利下げ見込み浮上
ビヨルロイ氏は直近の利下げ見通しを示し、ユーロ圏の低インフレに対する懸念が高まっています。6月中の利下げ実施可能性が高まり、ユーロ押し材料の一つにfxempire.com+2reuters.com+2forex.com+2。
● 通貨分散とドル依存見直し
調査では、機関投資家がドルから資金を撤収し、通貨分散を進めているとされています。これは中期的なドル弱含みの要因となりうると考えられます。
4. テクニカル面からの展望
-
ドル円:145円台が焦点。上方ブレイク→146円、下方向は144円ミドルで反発期待。
-
ユーロドル:1.150–1.160のレンジ中心。ECB次第で1.170台試す可能性。
-
クロス円:原油・地政学リスク次第で上下するが、円・スイスフラン中心のレンジドラマ。
5. 投資戦略の提案
-
ドル円
145円ミドルで押し目買い後、146円突破狙い。逆に地政学緩和で144円割れを想定しショートも選択可能。 -
ユーロドル
1.155台トライを目指しつつ、ECB声明後のブレイク狙い。1.150割れで利確も。 -
商品通貨(AUD/NZD/CAD)
基軸は原油動向だが、リスクオフ局面では売り優位、緩和時は押し目買い機会とする柔軟戦略。 -
安全通貨(円・スイスフラン)
継続したリスクオフなら当局介入注意。円175円・フラン178円突破時には利確圧力も想定。
🔍 総括
-
ドル指数・ドル円は地政学リスクに支えられ反発。中期ではレンジ中心の展開。
-
ユーロはECB利下げ観測とのせめぎ合い。今後のインフレ指標・ECBトーンがカギ。
-
商品通貨はリスクオフ圧力に弱く、原油価格と連動した展開に。
-
安全資産(円・フラン)への需要高まり中。地政学緩和時には調整リスク。
-
今週は政策イベント(FOMC声明、ECB、BoE、SNB)と地政学が為替の主テーマ。変化のシグナルを的確に捉えた対応が必須です。
コメント