【2025年7月2日 為替市場レポート】
ドルは3年半ぶり安値圏で下落継続:Fed独立性への懸念とトランプの大型財政案が圧迫材料に。リスク・通貨で明暗分かれる構図
1. 市況総括 🌍
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ドルは再びクライマックス近くの安値圏に沈下。ドル指数は現在約96.74ポイントで、2022年2月以来の安値水準に近づいていますreuters.com。
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Fedのパウエル議長は7月の利下げを完全には否定せず、金融政策はデータ依存との姿勢を示す一方、トランプ前大統領による批判と財政拡張案が市場で懸念され、ドルの評価が下落傾向にあります。
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米労働市場の堅調さからドルは一時小反発するも、全体としては年初来-11%以上の下落ペースを維持し、1970年代以来の最大下落となりつつあります。
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注目点:明日(7/3)の米非農業部門雇用者数(NFP)発表が節目となり、短期のドル反転トリガーになる可能性があります。また、トランプ案と米中貿易・関税の展開も心理に影響。
2. 主要10通貨ペアの動向と戦略
以下10通貨ペアに関して、つぎの視点で体系化しました:
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水準(7/2終値前後)
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背景・要因分析
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今後の注目点と戦略
2.1 USD/JPY(ドル/円)
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水準:143.68円、0.2%の小反発reuters.comreuters.com+4reuters.com+4ca.finance.yahoo.com+4
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背景:ドル安と円の調整。前日比プラスの要因は米雇用関連(JOLTS)強さ。ただしトランプ・Fed独立性懸念が下落圧力として継続。
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展望・戦略:142.5~145円レンジ。明日NFPで再度上昇圧力発生も。週末以降の夏薄相場では145円定着も。
2.2 EUR/USD(ユーロ/ドル)
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水準:1.1791ドル前後、3年半ぶり高値維持reuters.com
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背景:ドル全面安+ECB牽制強め。トランプ財政案でドル安が加速。
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展望・戦略:1.17~1.19レンジ中心に推移。1.19超えの節目トライで押し目買い。ブレイク時は1.20視野。
2.3 EUR/JPY(ユーロ/円)
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水準:約169.6円(1.179 × 143.68)
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背景:ユーロ高と円高が交錯しながら高水準維持。
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展望・戦略:168~172円レンジ。米指標次第では上下動。見送って調整待ち型が無難。
2.4 AUD/JPY(豪ドル/円)
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推定水準:94.0~95.0円
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背景:リスク通貨買い戻し基調。ただしドル安優位との兼ね合い。
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展望・戦略:93.5~96円レンジ。NFP発表後の反応で中長期戦判断の参考に。
2.5 NZD/JPY(ニュージーランドドル/円)
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推定水準:約87.3円
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背景:豪ドル同様リスク通貨恩恵を受ける。
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展望・戦略:86~89円レンジ。NFP →リスク通貨復調の動きに注力。
2.6 CAD/JPY(カナダドル/円)
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推定水準:105.5円前後
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背景:原油安による圧力緩和だが、ドル安の方が支配的。
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展望・戦略:104~107円レンジ。原油価格と米経済に注視。
2.7 CHF/JPY(スイスフラン/円)
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推定水準:約180円
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背景:フラン買い圧力はやや収まる中、ドル安に支えられる格好。
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展望・戦略:178~182円レンジ。リスクイベント次第で再度上昇可能。
2.8 GBP/USD(ポンド/ドル)
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水準:1.3739ドル ほぼ横ばい
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背景:ドル下落が主因かつ英国経済の底堅さも支援。
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展望・戦略:1.37~1.39レンジ。英国経済指標やBoE発言で方向感形成へ。
2.9 GBP/JPY(ポンド/円)
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推定水準:約198円
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背景:GBP強+円動向に加え、ドル安も重なって高水準へ。
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展望・戦略:195~200円レンジ。高値圏維持なら利食い戦略有効。
2.10 USD/CAD(ドル/カナダドル)
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水準:約1.370前後
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背景:ドル安が主因、CADへの追い風。
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展望・戦略:1.36~1.38レンジ。NFP後のリセットで法定方向をチェック。
3. マクロ背景と市場心理を整理
● Fed独立性への懸念高まる
トランプ氏のパウエル批判はFed独立への市場懸念に直結し、ドルへの不信感が一段と強まっています。
● 大型財政案への警戒
巨額財政案(+3.3兆ドル)が米長期金利とドルの信頼性に負担となるとの観測が広がっていますreuters.com+1reuters.com+1。
● 雇用統計に注目集まる
JOLTSが堅調だったことからドルにショートカバーが入りましたが、明日NFP次第で流れが変化する可能性あり。
● 夏の薄商いとボラティリティ
夏季需給の薄さは、想定外の動きを強調しやすく、投資家は注意を要するとされています。
● ドル依存低下の流れ
FT調査では中央銀行の70%がドル資産に懐疑的であり、デドル化の実態が加速していますreuters.com。
4. テクニカル視点と投資戦略まとめ
通貨ペア | レンジ予想 | 戦略ポイント |
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USD/JPY | 142.5–145円 | NFP直前はレンジ売買、突破時は順張り可能 |
EUR/USD | 1.17–1.19 | 押し目買い主体、突破時には1.20頭上探り |
AUD/NZD/CAD | リスク通貨反応 | NFP・原油等で押し目買い有効 |
CHF/JPY | 178–182円 | リスクイベントで上限タッチ → 利食い圏 |
5. 今後の注目材料
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7/3 発表:米NFP(6月)
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7/9 トランプ関税期限の結果:米国の対外政策見通しに影響
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トランプ大型財政案の行方:米債とドルへの圧力継続か否か
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Fedフォーラム等でのパウエル発言:7月利下げへのヒント材料
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夏の薄商いによる予想外の動き:ひとつの材料で乱高下も
🔍 全体総括
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ドルは弱含み圧力継続。Fedの独立性疑念+財政拡張+夏相場が重なるタイミング。
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リスク通貨(ユーロ・ポンド・豪ドル・ニュージーランドドル・加ドル)は堅調基調。押し目買いが有効な状況。
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円とスイスフランは膠着継続。明日以降のイベント次第では変動要因にも。
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米雇用統計が直近最大のトリガーと見られ、NFP後の戦略が生死を分ける要素。
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運用スタイル:夏季レンジ戦略を基本としつつ、イベント連動の変化に即応できる柔軟性が重要。
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中期戦略としてはドル安を前提に、リスク通貨中心の展開を想定。
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