2025年9月18日 為替市場レポート
Fedの利下げスタート、ドル円は147円台へ反発も日米金利差・BOJ見通しが焦点に
1. 市場全体の振り返り
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9月17日~18日にかけて、米連邦準備制度(Fed)が25ベーシスポイントの利下げを実施しました。これは今年初の利下げであり、市場ではこれを皮切りにさらなる利下げが続くとの見方が強まっています。Reuters+2Reuters+2
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ただし、パウエル議長の記者会見では、「現在の利下げはリスク管理の観点からの措置」だとして、今後のペースについては慎重な発言が多く、完全なハト派シフトとはみなされず、ある程度の警戒感が残りました。Reuters+2Reuters+2
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利下げ発表に伴い、米国債利回りは一時低下も、その後は利下げの先行きやインフレ圧力を巡る思惑で反発。ドル指数は一度下げる動きがあったものの、終盤には下げ幅を縮める形となっています。MNI Website+4Reuters+4Reuters+4
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アジア通貨の中では、インドルピーがドル強・米債利回り上昇を受けて88ルピーを超える水準にまで下落(=ドル高圧力)しました。ルピーは直近まで上昇基調にありましたが、今回のFedの声明とPowell議長の発言が混合的なシグナルを出したために、リスクオフムードが一部で再燃しています。Reuters+1
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他の主要な中央銀行(BOJ、BOE、ECBなど)は、今回のFedの動きを受けても、声明等での政策変更には慎重姿勢を維持しており、特に日銀(BOJ)は現在の金利を据え置き、そのうえで将来の引き締め可能性を探る見方が優勢です。Ewfpro+1
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株式市場や商品の動きも連動性が見られ、ドル安期待・リスク資産買い戻しの動きがある一方、景気減速懸念やインフレの粘り強さが材料視され、上昇・下落が交錯する展開に。Reuters+1
2. 主要通貨ペアの動向
以下、10通貨ペアについて 現状水準・背景・今後の戦略 を整理します。
通貨ペア | 現状の水準と動き(9/18時点) | 背景・材料 | 今後の戦略ポイント |
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USD/JPY(ドル/円) | およそ ¥147.30–147.70 のレンジ内で反発。相場では一時146台前半へ押された後、米利下げの影響と円の利上げ期待がミックスして147円台を回復。LiquidityFinder+3Ewfpro+3トレーディングエコノミクス+3 | Fedの利下げにより日米金利差が縮小するとの見方が浮上。一方でBOJが利上げを示唆する動きもあり、円が逆に買われる要素が出てきている。テクニカルでは 146.00 が強いサポートとして意識されており、ここを基点に反発が起きている。FinanceFeeds+2LiquidityFinder+2 | 短期的には 146.50~148.00 のレンジ。147円を割り込むと146円台前半への下押しが想定され、上値を試すなら148円付近が抵抗帯。BOJの発言や日本の政策動向を注視。 |
EUR/USD(ユーロ/ドル) | 約 1.183–1.180 周辺。ユーロはドル弱の恩恵を受けて上昇傾向。IMF為替代表レートによればユーロ/USDは1.1807などが報告。IMF | ユーロ圏の景気回復への期待とともに、ECB内での利下げスタンスは緩やか。Fedと比較すると利下げペースが緩やかであるという見方がユーロを支えている。インフレ指標やPMIなどが注目される。Reuters | 1.175〜1.19ドルレンジが想定。上値は1.1900近辺、下値は1.1750付近。ドルがさらに弱含むなら1.20ドルを試す可能性。 |
GBP/USD(ポンド/ドル) | レートは若干上昇傾向。EUR/USD上昇と似た流れで、リスク通貨としてポンドにも買戻し。具体的レートは1.36台後半が報告。IMF | 英国のインフレ・賃金データが注目されており、BOEの金融政策スタンスにもより確かな指標が求められている。ドル安基調がポンドにとってプラス。 | 1.355〜1.38のレンジ。上抜けには欧州データか英国自身の経済指標が鍵。下値は1.35台末尾がサポート。 |
AUD/USD(豪ドル/ドル) | 豪ドルはドルの利下げ期待と商品価格の影響で堅調模様。代表レートデータで0.6624付近など。IMF | 中国の景気回復期待と資源価格(石炭・鉄鉱石など)の堅調さが支え。豪ドル政策も利下げを慎重に行うという見方があり、豪ドル売りの圧力は限定的。 | 押し目買い重視。0.66を割り込まないかどうか、また0.67〜0.68方向への上伸の余地を見たい。 |
USD/CAD(ドル/カナダドル) | 緩やかなドル弱含みで、USD/CAD は買戻ししづらい雰囲気。カナダドルは比較的強く推移。 | 原油価格の動向が大きな材料。また、北米の金利見通しとインフレの進行がカナダドルに影響。Fed利下げ→ドル弱、という流れが背景。 | レンジは 1.34〜1.38 を想定。上値で売り圧力、下値でサポート確認が鍵。原油関連ニュースチェック必須。 |
CAD/JPY(カナダドル/円) | およそ ¥148〜¥150 前後。ドル円の動きに追随しつつ、カナダドルの強さも反映。 | ドル円と原油価格が相互に影響。円の動きもBOJ見通し・為替介入可能性などに敏感。 | 147〜151円レンジ。上値には150円台後半の抵抗有、下値は148円台初めがサポート。 |
EUR/JPY(ユーロ/円) | 約 ¥147.3 × ユーロレート → おおよそ ¥174〜¥175 近辺。IMFデータでユーロ円が147.400/USドルあたりの円価が報じられている。IMF | ユーロ対ドルの上昇とドル円の反発がユーロ円を押し上げ。ユーロ圏の経済指標次第で上値余地が出る見込み。 | 抵抗帯は175円台前半、支持は173〜174円台。ユーロの強さが続けば176円台も視野。 |
GBP/JPY(ポンド/円) | ドル円の上昇がポンド円を押し上げ。概ね ¥201〜¥202台を上限とするレンジ試行との見方。 | ポンドドルの動きとドル円の動きの掛け合わせ。日本の政策見通し・為替介入警戒感が円に影響。 | 200〜204円レンジ。上値204円チャレンジ、下値200円割れなら弱含みの可能性。 |
CHF/JPY(スイスフラン/円) | 安全資産としての反応は限定的。円安基調でスイスフラン円も上昇傾向だが、資金の流れはリスク資産へ向かう場面も。おおよそ ¥174〜¥176レンジ内。 | スイスのインフレ・利下げ観測が限定的なため、スイスフラン自体には大きな動きは少ない。リスク回避時に買われる通貨。 | 約173〜176円レンジ。リスクオフ時の急反発には注意。上下限での逆張り戦略有効。 |
INR/USD(ルピー/ドル) | インドルピーは約 88.06ルピー/ドル 付近で推移、ルピーはドルに対してやや弱含み。Reuters+1 | Fed利下げにもかかわらず、ドル強・米債利回り上昇・国内外の資金流動性がルピーへの圧力に。外貨建て債務や輸入コスト等の懸念も。 | サポートレベル88ルピー近辺維持できるかが鍵。割れれば89ルピー方向の下落余地。逆にドル弱化なら87ルピー台への回復も可能。 |
3. マクロ・政策・心理的要因の深堀り
Fedの利下げスタートと今後のガイダンス
利下げを実施したものの、Fedはこれを “リスク管理(risk-management)” の文脈で位置づけ、将来的な利下げのペースについては慎重な態度を崩さず。市場が期待していた “連続利下げサイクル” の明確な開始は見えていないとの受け止めです。Reuters+2Reuters+2
Fedの dot plot(FOMCメンバーの経済予測)では、2025年内にあと2回の利下げの可能性が示されたという見方もあり、これにより市場では利下げ期待が徐々に織り込まれていますが、議長発言含めて「どの程度のインフレ抑制が確認できるか」が今後の利下げペースを左右するという見方が主流です。Reuters+1
日銀(BOJ)の政策スタンスと円の見通し
日本円にとっては、Fedとの動きに加えて BOJの動きが非常に重要なファクターです。今のところBOJは金利を据え置いており、利上げは今年年末あるいは来年初頭の可能性が議論されています。円安圧力が続く中で、政策当局および為替当局の介入・口先発言の可能性が市場で警戒されています。Ewfpro+1
国際商品価格・インフレ状況
原油や金属等の商品価格は、ドルの利下げと世界の需給見通しを巡る期待・懸念の均衡点で動いており、資源国通貨(CAD、AUD、NZDなど)に対する影響力が比較的大きくなっています。インフレが抑制されない見通しがあると、これらの通貨が買われやすくなる一方で、利下げが十分でないとの見方が強まればドルが再度買われる動きも。Reuters+1
市場心理・ポジションの転換
Fed発表後、一時ドル売りが進んだものの、その後のパウエル発言で一部ドル買いが戻りました。これは多くの市場参加者が「発表時の反応=利下げ歓迎」ではなく、「その後のガイダンス内容」によってポジションを変える必要があると判断しているためです。利益確定売りやショートポジション解消の動きも散見されます。TradingView+2LiquidityFinder+2
4. テクニカル観点と戦略
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USD/JPYについては、146.00 が強いサポートゾーンとして意識されており、ここを割らない限りは反発する可能性が高いとの見方。FinanceFeeds+1
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上値抵抗としては 147.90〜148.00付近 が意識される。ここを超えるようだと148.50円を試す展開も可能。LiquidityFinder+1
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その他通貨ペアでも、EUR/USDやAUD/USDなどは、ドル安期待が続くかどうかが中心な動きの鍵。サポート・抵抗レベルをきちんと確認してのレンジ戦略が有効。
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安全資産や円・スイスフランは、不透明感が高まる局面での「戻り売り・逆張り」の候補。特に円に関しては、政策発言や介入可能性に敏感になるため、小さなニュースにも注意を。
5. 今後の注目イベント
以下のイベント・発表が今後市場の方向性を左右しそうです:
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次回のFed会合・利下げペースの示唆
→ どれだけ利下げを続けるか、2025年末・2026年の見通しが重要。 -
日本のBOJ政策決定会合・総裁発言
→ 利上げあるいは政策見直しの可能性、為替介入の可能性も市場で注目。 -
欧州・英国のインフレ・PMIデータ
→ ユーロドル・ポンドドルに直接影響。 -
中国の景気指標・追加刺激策
→ 資源国通貨動向、豪ドル・NZドル等に影響。 -
国際商品価格(原油・金属・金等) の動き
6. 総括
2025年9月18日の為替市場は、Fedの利下げの開始という大きな転換点を迎えつつも、市場参加者はその“どの程度・どのタイミング”が重要になると認識しており、短期的には不透明感が強い展開となりました。ドル円はサポートゾーンを確認して反発、中期では日米金利差およびBOJの動きが重要な決定要因となるでしょう。
他通貨ペア(ユーロ・ポンド・商品通貨等)はドル弱含みの恩恵を受けやすい状況ですが、インフレや世界経済の減速懸念が重しになる可能性もあります。トレーダーとしては、今後の発言とデータに敏感に反応できるよう準備を整えることが肝要です。
引き続き、サポート・抵抗レベルを押さえつつ、イベントドリブンでの変化を捉える戦略が有効となる見通しです。
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