【2025年9月22日 為替市場ファンダメンタル分析】
— 利下げ後の米ドル調整とBOJ正常化の思惑、週明け市場の注目点
1.週明け市場の全体像
2025年9月22日(月)のアジア市場は、米連邦準備制度(Fed)が先週実施した利下げ(0.25%)を受けた流れを継承しつつ始まりました。
ドルは対主要通貨で軟化しており、ドル指数(DXY)は一時 104台半ばまで下落。円はBOJの政策正常化期待を背景に底堅さを見せています。ユーロとポンドは対ドルで堅調を維持し、資源通貨も原油や資源市況の動向に支えられています。
週明け特有の「調整的なフロー」が強まりやすく、米国金利低下とBOJ正常化観測の合わせ技がドル円の上値を抑えているのが特徴です。
2.米国のファンダメンタル分析
2-1.利下げ後の市場反応
9月17日に行われた利下げは、市場ではすでに織り込まれていたため、直後のドル売りは限定的でした。しかし、週末にかけて 米小売売上高や失業保険申請の増加 が意識され、労働市場の軟化が確認されたことで「追加利下げの余地」が意識されました。
投資家の関心は「12月までにもう1回利下げがあるか否か」という点に移っています。現在のところ、CMEフェドウォッチでは 年内追加利下げの確率が60%前後 に達しており、ドルの上値は引き続き重い展開。
2-2.インフレと輸入物価のリスク
米国では輸入物価が再び上昇しており、特にエネルギー・資本財・食品分野がコスト増加の要因になっています。サプライチェーンの混乱や物流コストの増加も加わり、CPIの再加速リスクは残されています。
利下げに動いたとはいえ、Fedは「インフレとの戦いは終わっていない」というスタンスを崩しておらず、FOMC声明文でも「データ次第で再度の引き締めも排除せず」という表現が残されました。これがドルの下値を一定程度支えている側面があります。
2-3.米国債利回りの動向
米10年債利回りは一時 3.70%台まで低下。短期金利は利下げを織り込んでさらに下落しており、利回りカーブはややスティープ化。これに伴いドル売り圧力がかかる一方で、株式市場は堅調に推移。NASDAQやS&P500は年初来高値を更新する動きとなっており、リスク選好は維持されています。
3.日本のファンダメンタル分析
3-1.BOJの政策正常化のシグナル
9月19日のBOJ会合では、短期金利は据え置きでしたが、ETFとREITの保有資産を縮小する方針が発表されました。これは10年以上にわたる非伝統的緩和政策の象徴を解消する第一歩であり、為替市場にとっては「円買い材料」として認識されています。
ETFは年3,300億円のペースで売却、REITは年5億円と限定的ですが、段階的な正常化の意思を明確化した点が評価されました。市場では「10月末にも利上げがあるのではないか」という観測が浮上しており、ドル円の上値を押さえる要因になっています。
3-2.政治リスクと円相場
日本では自民党総裁選が間近に迫っており、候補者によって経済政策・金融政策へのスタンスに違いが見られます。特に高市氏が勝利した場合でも「10月のBOJ利上げはあり得る」とする元BOJ関係者のコメントが注目を集めました。政治リスクと金融政策の組み合わせが円相場を複雑にしており、短期的には円高・円安双方への振れやすさが増しています。
3-3.日本のインフレと消費
日本のコアインフレ率は依然2%を超えており、食品・輸入品価格の上昇が続いています。実質賃金はプラスに転じつつあるものの、消費者心理は完全に回復していません。BOJは「インフレ期待が定着するリスク」を意識しながらも「消費冷え込みリスク」に配慮しており、政策判断が難しい局面です。
4.欧州・英国の動き
4-1.ユーロ圏
ECBはタカ派姿勢を維持しており、インフレ鈍化の進展が見られない限り大幅な緩和は見込まれていません。ユーロは対ドルで堅調で、EUR/USDは 1.18台後半まで上昇。米ドル軟化の恩恵を最も受けやすい通貨のひとつとなっています。
4-2.英国
英国のインフレは依然高止まりしており、BOEは利下げに踏み切る余地が狭い状況。ポンドは強含みで推移し、GBP/USDは 1.37台を試す展開。米ドルとの金利差縮小を背景に資金が流入しています。
5.資源国・新興国通貨
5-1.オーストラリアドル(AUD)
中国需要の回復期待と資源価格の底堅さからAUDは買われやすい環境にあります。米利下げでリスク選好が強まるとAUD/USDは上昇基調を継続しやすい構図。
5-2.カナダドル(CAD)
原油価格は需給見通しの不透明さで上値が重いものの、ドル安がCADを支えています。USD/CADは 1.34近辺で推移。
5-3.新興国通貨
メキシコペソやブラジルレアルなど高金利通貨は、ドル安環境で再び買い戻しの流れ。特にペソは投資家のキャリートレード先として注目度が高い。
6.原油・コモディティの動向
原油価格は週明け小幅安で始まりました。供給過剰感と需要鈍化懸念が重石となっており、WTIは 1バレル=76ドル台に位置。ドル安による支えはあるものの、地政学リスクやOPEC+の減産姿勢次第では変動リスクも大きい状況です。
金はドル安を背景に堅調推移しており、1オンス=3,750ドル前後で取引されています。リスク分散需要も相まって、押し目買いが続く展開です。
7.今後の注目材料とリスク
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米国データ:今週発表予定の新築住宅販売・耐久財受注が、景気減速の深刻度を占う鍵。
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BOJ関連ヘッドライン:10月利上げ観測が強まるかどうか。政治情勢次第で円急変動の可能性。
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原油市場:供給過剰の深刻化か、それとも中東情勢で地政学リスクが再燃するか。
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地政学要因:台湾海峡や中東リスクが顕在化すれば、安全資産買いが急速に進む恐れ。
8.為替戦略の提案
短期(1週間程度)
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USD/JPY:148円前後は戻り売りを狙う局面。下値は146円半ばがサポート。
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EUR/USD:ドル安継続なら1.19台を視野にロング有利。
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GBP/USD:1.37を上抜ければさらに買いの勢いが加速。
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AUD/USD:中国指標が堅調なら0.69台を目指すシナリオ。
中期(1〜3か月)
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ドル安トレンドを基本シナリオとしつつ、利下げペースの鈍化で反発も警戒。
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BOJの利上げ観測が現実味を帯びれば、ドル円は 145円割れ もあり得る。
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リスク資産への資金流入を想定し、ユーロ・ポンド・資源通貨をポートフォリオに組み込み。
9.総括
2025年9月22日の為替市場は、「利下げ後のドル調整」と「BOJ正常化期待」という二大テーマに左右される展開となっています。ドルは軟化基調を維持している一方、日本円は政策転換の思惑から底堅く、ドル円は148円前後での攻防が続きそうです。
欧州通貨や資源通貨は相対的に優位な立場にあり、リスク選好が維持されればさらに買い進められる展開が予想されます。
短期的には調整の色合いが濃いものの、中期的にはドル安・円高の流れがじわじわと強まる可能性が高いと見られます。投資家にとっては「ドル売り・非ドル買い」の戦略を基本としつつ、米国データやBOJのスタンス変化に柔軟に対応することが求められる局面です。
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