【2025年10月2日 為替市場ファンダメンタル分析】
— 米指標悪化でドル売り加速、ドル円は145円台半ばへ下落
1.市場概観
2025年10月2日の為替市場は、米経済指標の弱さとFRBの利下げ観測の強まりを背景にドル売りが優勢となりました。
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ドル円は 145.50円付近まで下落し、前日の146円台から一段と円高が進行。
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ユーロドルは一時 1.112台へ上昇し、年初来高値を更新。
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ポンドも堅調で、1.29台後半へとレンジを拡大。
株式市場は米国株が堅調を維持しているため、ドル安はリスク回避ではなく「利下げ期待主導の金利低下」に起因していると見られます。
2.米国ファンダメンタルズ
2-1.経済指標
この日注目されたのは、ISM製造業景況指数(9月)。結果は 47.5(予想:48.2) と再び節目の50を大きく割り込み、景気の縮小を示唆しました。新規受注指数や雇用指数も低下しており、米製造業の停滞が鮮明となっています。
さらに、新規失業保険申請件数 は22.5万件と予想の21.5万件を上回り、労働市場の軟化も意識されました。
これらを受けて米国債利回りは一段と低下。2年債は3.80%台に沈み、10年債は4.00%割れ目前まで下落しました。
2-2.FRBのスタンス
FRB関係者の発言は依然として「データ次第」としながらも、緩和方向に傾いています。特にボスティック・アトランタ連銀総裁は「労働市場の冷え込みが鮮明なら、政策金利の調整は正当化される」と発言。
市場では 11月FOMCでの利下げ確率が60%台へ上昇 し、12月までに1回以上の利下げをほぼ織り込む状況となりました。
3.日本ファンダメンタルズ
3-1.BOJ政策期待
ドル円の下落要因には、BOJによる利上げ観測 も加わっています。前週の植田総裁発言以降、市場は「年内追加利上げ」の可能性を4割程度織り込み。円安けん制発言が出やすい地合いも相まって、投機筋の円ショート解消が進んでいます。
東京時間は輸出企業のドル売りも重なり、ドル円は145円台半ばまで下落しました。
3-2.物価と賃金
今週発表される東京都区部CPIは前年比+2.7%が予想されており、結果次第では「日銀の利上げ根拠」が強まる見通しです。加えて春闘の賃上げ効果が秋口以降にも波及しつつあるとの観測も、円高圧力を支えています。
4.欧州ファンダメンタルズ
4-1.ユーロ圏
ユーロは対ドルで堅調に推移。ECB関係者は依然として「利下げは時期尚早」と発言しており、タカ派的スタンスを維持。インフレは緩やかに鈍化しているものの、サービス価格が粘着的で、金融政策は当面据え置きとの見方が強いです。
ユーロドルは1.11台に乗せ、年初来高値を更新。ドル安とECBの慎重姿勢が相乗効果を生んでいます。
4-2.英国
ポンドも堅調で、GBP/USDは1.296台まで上昇。英国の住宅価格や賃金統計が底堅く、BOEがすぐに利下げへ転じる可能性は低いと市場は判断しています。
5.資源国通貨とコモディティ
5-1.豪ドル
豪ドルは対ドルで上昇し、AUD/USDは0.688付近まで上伸。中国人民銀行が追加刺激策を打ち出すとの観測が根強く、中国需要改善期待が豪ドルを押し上げています。
5-2.カナダドル
カナダドルも堅調で、USD/CADは1.332近辺へ低下。WTI原油は80ドル台を維持しており、資源価格の底堅さがCADを支えました。
5-3.金価格
金はドル安・金利低下の恩恵を受け、3,870ドル付近まで上昇。インフレ懸念よりも通貨代替資産としての需要が鮮明になっています。
6.テクニカル分析
| 通貨ペア | 現状 | サポート | レジスタンス | コメント |
|---|---|---|---|---|
| USD/JPY | 145.5前後 | 145.0 | 146.2 | 下値模索が続く。145割れが焦点 |
| EUR/USD | 1.112 | 1.105 | 1.118 | 年初来高値を更新、トレンド強し |
| GBP/USD | 1.296 | 1.289 | 1.300 | 1.30突破なら勢い加速 |
| AUD/USD | 0.688 | 0.682 | 0.692 | 中国関連ニュース次第で一段高も |
| USD/CAD | 1.332 | 1.328 | 1.338 | 原油価格が支え、下押し圧力 |
7.市場心理とフロー
本日は四半期末を通過し、フロー要因はやや落ち着きましたが、米金利低下を背景としたドル売りが続きました。特に機関投資家のリスクオン資金が欧州通貨や資源国通貨に流入しており、ドル安トレンドを補強しています。
8.リスク要因
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米雇用統計(10月4日発表予定)
→ 労働市場悪化ならドル売り加速、予想外に強ければドル急反発のリスク。 -
BOJ要人発言
→ 円高・円安どちらにも大きなインパクトを与えやすい地合い。 -
欧州の財政問題
→ イタリアやフランスの財政懸念が浮上すれば、ユーロの上値を抑制。 -
中国経済動向
→ 豪ドルを中心に資源国通貨のボラティリティ要因。
9.トレーディング戦略
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ドル円:145.0円割れを意識。短期的には戻り売り優勢。
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ユーロドル:押し目買い方針継続。1.118突破で1.12台へ拡大の余地。
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ポンドドル:1.30突破トライを視野にロング戦略。
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豪ドルドル:0.692突破を見極め、強気継続。
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カナダドル:1.328割れなら追加下落余地。
10.総括
2025年10月2日の為替市場は、米指標の悪化を受けたドル売りと利下げ観測の強まり がメインテーマでした。ドル円は145円台半ばまで下落し、ユーロやポンドは年初来高値圏に到達。
ドル安の流れは中期的に継続しやすい状況ですが、今週末の米雇用統計がその方向性を決定づけるイベントとなります。
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弱い結果なら「利下げ観測確定 → ドル安トレンド強化」
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強い結果なら「利下げ観測後退 → ドル急反発」
という二面性があり、短期トレーダーにとっては高いボラティリティを活かすチャンスが広がる一方、中長期投資家にとっては慎重なポジション管理が求められる局面です。


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