【2025年10月8日 為替市場レポート】ドル円143円台後半で底堅く推移、米金利高止まりが支えに
2025年10月8日(水)の為替市場では、米長期金利の上昇とリスク選好の戻りを背景に、ドル円が143円台後半で堅調に推移しました。前週末の米雇用統計で一時142円台前半まで下落したドル円は、週明け以降じりじりと買い戻され、8日東京市場では143.70円近辺まで上昇。欧米市場でもドル買いの流れが継続しました。
一方、ユーロやポンドは対ドルで軟調。欧州では景気指標の弱さが再び意識され、ECBの追加利下げ観測が強まったことが重石となりました。資源国通貨は原油・銅など商品価格の持ち直しを受け、やや下げ止まりの兆しを見せています。
1. 市場の全体動向
8日の東京外国為替市場では、ドル円が前日比でやや高い143.60円前後で取引開始。アジア株が堅調に推移し、リスク選好ムードが広がる中、円売り・ドル買いが優勢となりました。日経平均株価が連日で上昇したことも円安をサポートしました。
欧州時間に入るとユーロ圏の8月鉱工業生産が予想を下回り、ユーロ売りが優勢に。米時間では、9月の米PPI(生産者物価指数)が前年比+2.5%と市場予想(+2.3%)を上回り、インフレ圧力の根強さが再認識されました。これを受けて米10年債利回りは4.38%台へ上昇し、ドル全体が底堅く推移しました。
2. 主要通貨ペアの動向
2.1 ドル円(USD/JPY)
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現状: 143.85円付近で推移。
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背景: 米金利上昇と株高を背景に円売りが続く。日本側では日銀が早期利上げに慎重姿勢を維持しており、金利差拡大が円売り材料に。
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展望: 米CPI(10日発表)を控えて様子見ムードもあるが、144円台回復を試す展開。142.80円が短期サポート。
2.2 ユーロドル(EUR/USD)
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現状: 1.1360ドル付近で推移。
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背景: 欧州経済の減速懸念が強まり、ECBの追加利下げ観測が再燃。独8月鉱工業生産は前月比-0.4%と弱い。
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展望: 1.1350ドルを下抜けると下落加速の恐れ。反発しても1.1450ドルが上値の壁。ECB理事会(来週)を控え慎重な取引が続く見通し。
2.3 ユーロ円(EUR/JPY)
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現状: 163.50円前後。
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背景: ドル円の上昇を背景にユーロ円も連れ高。ただし、ユーロ自体は軟調で上値は限定的。
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展望: 163円がサポート、164円半ばが上値抵抗。ECB理事会まではレンジ取引が続く公算が大きい。
2.4 ポンドドル(GBP/USD)
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現状: 1.2780ドル付近で推移。
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背景: 英中銀(BOE)によるハト派発言が引き続き重石。英8月GDPが予想比弱く、年内利下げ観測が高まる。
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展望: 1.2750ドルを維持できれば底堅いが、下抜ければ1.27ドル割れの可能性。次回BOE会合を控え、動意は限定的。
2.5 ポンド円(GBP/JPY)
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現状: 183.70円付近。
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背景: ドル円の上昇を受けてポンド円も上昇基調を維持。ただしポンド自体の弱さが上値を抑制。
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展望: 184円を突破できれば185円台を試す展開も。下値は182.80円が堅いサポートとして意識される。
2.6 豪ドル円(AUD/JPY)
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現状: 92.85円付近。
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背景: 豪9月NAB企業景況感指数が改善。中国当局の追加景気刺激策報道も支援材料。
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展望: 93円台を明確に回復できれば上昇トレンド転換の可能性。下値は92.30円付近がサポートライン。
2.7 NZドル円(NZD/JPY)
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現状: 86.70円付近で推移。
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背景: RBNZ(NZ中銀)は利下げに慎重な姿勢を維持しており、相対的に堅調。中国景気懸念が弱材料。
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展望: 86円台半ばを維持できれば、87円突破も視野。豪ドルに対して相対的に底堅い展開が続く。
2.8 カナダドル円(CAD/JPY)
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現状: 106.40円付近。
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背景: 原油価格がWTIで1バレル=80ドル台前半まで反発。エネルギー高がカナダドルを支える。
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展望: 106円を維持できれば上昇基調継続。107円台突破には原油価格のさらなる上昇が必要。
2.9 スイスフラン円(CHF/JPY)
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現状: 162.50円前後で推移。
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背景: リスク選好ムードで安全通貨としての買いが後退。SNB(スイス中銀)の追加利下げ観測も重石。
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展望: 162円がサポート。地政学的リスクが再燃すれば一時的に買い戻される可能性。
2.10 ユーロポンド(EUR/GBP)
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現状: 0.8885ポンド前後。
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背景: ユーロ圏の景況感悪化にもかかわらず、英経済指標の弱さからレンジ相場継続。
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展望: 0.8860~0.8910ポンドのレンジを想定。双方の景気指標に一喜一憂する展開。
3. ファンダメンタル分析
(1)米国経済とFRBの動き
今週発表された米PPI(生産者物価指数)は予想を上回り、米金利の上昇を招きました。FRB内部では依然として「年内1回の利下げが妥当」との見方が優勢ですが、インフレが再び高止まりする兆しが見られることから、市場は「利下げ開始の時期が12月から来年初にずれ込むのではないか」との思惑を強めています。
このため、ドルは短期的に下落しにくく、ドル円は142円台で底堅く推移しています。
(2)欧州経済とECB
ドイツやフランスなど主要国の製造業指標が低迷し、ユーロ圏全体の景況感は依然として弱い状況。ECB関係者の発言でも「追加利下げを否定しない」姿勢が見られ、市場では年内にもう1回の利下げが織り込まれています。これがユーロの上値を抑制しており、1.14ドル台を上抜ける勢いは限定的です。
(3)商品市場と資源国通貨
原油価格はWTIで80ドル台を回復し、カナダドルや豪ドルの支援材料となっています。特に中国政府が7日に発表した「地方債発行枠の拡大」が景気刺激策として評価され、資源需要の回復期待が高まりました。ただし、鉄鉱石や銅の価格は依然不安定で、豪ドル・NZドルは上値が重い状態。
(4)日本の金融政策と円相場
日銀の上田総裁は最近の発言で「物価上昇の持続性を慎重に見極める」と発言し、早期の追加利上げに否定的な姿勢を示しました。これにより、円は再び売られやすい通貨となっています。米金利が高止まりする中で、円金利の上昇余地が乏しいことが円安の主因です。
4. 今後の注目イベント
| 日付 | 指標・イベント | 注目点 |
|---|---|---|
| 10月9日(木) | 米新規失業保険申請件数 | 雇用市場の強弱確認 |
| 10月10日(金) | 米CPI(消費者物価指数) | FRBの利下げ観測を左右 |
| 10月14日(月) | 中国貿易収支 | 豪ドル・NZドルへの影響 |
| 10月17日(木) | ECB理事会 | ユーロ動向の分岐点 |
5. まとめと見通し
10月8日の為替市場は、米金利高止まりを背景にドル買い優勢・円売り継続という構図が鮮明となりました。
ドル円は143円台後半で底堅く、144円を再び試す展開が見込まれます。
ユーロやポンドは依然として弱く、欧州の景気減速懸念が通貨の重石となっています。一方で、豪ドル・カナダドルは商品市況の改善を背景に下値を固めつつあり、今後はリスク選好の強まり次第で反発する可能性があります。
市場の関心は週末発表の米CPI(消費者物価指数) に集中しており、結果次第ではFRBの利下げ見通しが再び修正される可能性があります。
10月相場は依然として不安定ながらも、「ドル強含み・円安・ユーロ軟調・資源国通貨持ち直し」の構図が維持される公算が大きいでしょう。


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