為替市場分析レポート:2025年10月9日(木)

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為替市場分析レポート:2025年10月9日(木)

1. 全体概況

10月8日の為替市場は、米国の長期金利が再び上昇し、ドル買い優勢の展開となった。前日に発表された米9月PPI(生産者物価指数)が予想を上回り、インフレ再燃への警戒が広がったことで、米10年債利回りは一時4.62%台へ上昇。これを受けてドル円は再び150円台半ばまで上昇し、介入警戒感が再び意識される場面も見られた。
一方、ユーロやポンドは対ドルで軟調。ユーロ圏の景況感指数が低下し、ECB(欧州中央銀行)による年内利下げ観測が再び浮上したことで、ユーロ売り・ドル買いが強まった。

アジア時間では、日経平均が堅調に推移し、円安圧力が続いたほか、原油価格の上昇により資源国通貨も底堅さを保った。ただし、RBNZ(ニュージーランド中銀)やRBA(豪中銀)の利下げ観測が残っており、オセアニア通貨は上値の重い展開となっている。


2. 主要通貨ペア分析

2.1 ドル円(USD/JPY)

現状:150.45円前後で推移。

背景:米長期金利の上昇を背景にドル高・円安が再燃。米PPIが予想を上回り、CPIへの期待感もインフレ再燃を示唆する形となった。日銀は依然として緩和姿勢を維持しており、金利差拡大が円売りを誘発。
展望:151円台の壁が意識されるが、実需筋のドル買いも継続。米CPI(10日発表)を控えて調整売りが入る可能性もある。日銀による口先介入警戒で、上値は限定的ながら底堅い。


2.2 ユーロドル(EUR/USD)

現状:1.0660ドル前後で推移。

背景:ドイツの工業生産指数が予想を下回り、ユーロ圏全体の景況感悪化が再び意識された。ECB理事会メンバーの一部が「2025年前半の追加利下げに言及」したこともあり、ユーロ売りが加速。
展望:1.07ドルを上抜けできない限り、戻り売り優勢の展開。米CPIを前にドル高圧力が続く可能性が高いが、1.06ドル前半では買い意欲も見られる。


2.3 ユーロ円(EUR/JPY)

現状:160.50円付近で推移。

背景:ドル円の上昇に連動してユーロ円も堅調。ユーロ圏の指標は弱いが、円安トレンドが支配的で、クロス円全体が底堅い。
展望:161円台を試す展開も想定されるが、ユーロ独自の上昇材料は乏しい。日銀が動かない限り、クロス円は高止まりが続く見通し。


2.4 ポンド円(GBP/JPY)

現状:190.80円前後で推移。

背景:英中銀(BOE)は依然として高金利政策を維持する構えだが、インフレ鈍化が進み利下げ期待も高まりつつある。とはいえ、ドル円の上昇が支えとなり、ポンド円は高値圏で推移。
展望:191円突破にはドル円次第の側面が強い。BOE関係者の発言や、今後のCPI指標が方向感を左右する。


2.5 豪ドル円(AUD/JPY)

現状:96.80円付近で推移。

背景:RBA(豪中銀)の次回会合での政策金利据え置き観測が広がる中、豪ドルは一時的に売られたものの、リスクオン地合いで買い戻しが入り下げ止まり。原油・鉄鉱石価格の上昇も支援材料。
展望:97円台への戻りを試す可能性があるが、米金利上昇局面では豪ドル売りが再燃するリスクも。対ドルでは0.65ドル台前半での攻防が続く。


2.6 NZドル円(NZD/JPY)

現状:87.30円前後で推移。

背景:RBNZはタカ派姿勢を維持するが、インフレ鈍化が進んでおり、来年の利下げ観測が一段と強まっている。豪ドルに連動した動きで、NZドルも上値が抑えられている。
展望:86.80円〜87.80円のレンジを形成。RBNZ総裁の発言や、10月中旬のCPIが今後の方向感を左右する。


2.7 カナダドル円(CAD/JPY)

現状:105.60円付近で推移。

背景:原油価格が再び上昇(WTI=84ドル台)し、資源国通貨が支えられる展開。カナダ中銀(BOC)はインフレ懸念を維持しており、早期利下げの可能性を否定。
展望:106円台を試す動きもあり得るが、米ドル主導の相場で大きなトレンドは限定的。原油相場のボラティリティに注意。


2.8 スイスフラン円(CHF/JPY)

現状:158.40円付近で推移。

背景:スイス中銀(SNB)は9月会合で利下げを実施したが、安全資産需要の高まりでフランは下げ渋り。地政学リスク(ウクライナ・中東情勢)の不安定さも支援材料。
展望:158円台前半でのもみ合いが続く見通し。リスク回避局面では円よりもフランが選好されやすく、底堅さを保つ。


2.9 ドルスイス(USD/CHF)

現状:0.9380フラン前後で推移。

背景:米金利上昇を背景にドル買いが優勢。SNBの利下げにより、金利差拡大がドル高要因となっている。
展望:0.94を明確に突破すれば上昇トレンドが加速。米CPIの結果次第では0.9450フランを視野に入れる展開。


2.10 ユーロポンド(EUR/GBP)

現状:0.5580ポンド付近で推移。

背景:ユーロ圏の景況感悪化に対し、英国の指標は堅調を維持。ECBのハト派姿勢が意識され、ユーロ売り・ポンド買い基調が継続。
展望:0.5550〜0.5600の狭いレンジでの推移が続く見通し。方向感が出るには、ECBまたはBOEの政策スタンス変化が必要。


3. 今後の焦点

今週最大の注目は**10月10日発表の米CPI(消費者物価指数)**である。PPIに続いてインフレが再び加速する兆候が見られれば、FRBの利下げ開始時期が再び「2026年以降」に後ずれする可能性がある。これが確認されれば、ドル高再加速→円安再拡大という流れが続く。

一方で、CPIが弱めの結果となれば、米長期金利が低下し、ドル円は149円台への調整も想定される。市場はすでに「介入警戒ライン」を150.80〜151.00円付近と見ており、実需筋のドル売りオーダーも厚い。

欧州では、景気減速が明確になりつつあり、ECBの慎重なトーンが続く見込み。これによりユーロドルは当面、1.05〜1.07ドルのレンジ圏に収まりやすい展開だろう。


4. まとめ

2025年10月9日の為替市場は、米金利上昇によるドル高基調が続く一方で、円安が再燃している。ドル円は151円の節目を前に神経質な値動きとなっており、日銀・財務省による介入警戒が相場の上値を抑える形。
ユーロやポンドは軟調、資源国通貨は底堅いという「ドル一強構造」が改めて確認された1日だった。

今後は米CPIを分岐点として、再びドルの方向感が決まる可能性が高い。短期トレーダーにとっては、イベント前後のボラティリティ拡大に備える週となるだろう。

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