2025年10月14日 為替市場レポート ドル円は再び上昇トライ、リスクオフ・米金利動向に揺れる相場

2025年10月14日 為替市場レポート

ドル円は再び上昇トライ、リスクオフ・米金利動向に揺れる相場

10月14日の為替市場は、米国と中国の貿易摩擦再燃懸念や米金利動向を背景に、通貨間で方向性のぶれが目立つ展開となりました。ドルは一時上伸した後に売られる場面も見られ、ドル円は再び150円超えを試す動きを見せました。ユーロやポンドなど欧州通貨は軟調基調が継続。資源国通貨はエネルギー価格の動きに敏感な反応を見せるなど、各通貨ペアにおいて多様な展開が見られました。

以下では、主要10通貨ペアごとの動き、背景、今後の注目材料と展望を整理します。


1. 市場全体の概況とテーマ

  • 米中貿易摩擦の再燃懸念
    米国が中国籍企業に関する調査を強化する動きを受けて、中国側が報復措置を表明。これがリスクオフムードを誘発し、ドルが一時的に売られる場面もありました。Reuters

  • ドルの回復・反動の見極め
    ドルは短期的に上昇基調を見せましたが、米経済の減速懸念やインフレ見通しの揺らぎから、持続力には疑問を持たれる場面も。ドル高の勢いに対して懐疑的な声も聞かれます。Reuters

  • 日銀・日本の政策リスク
    円安の進行と日本政治の変動性が意識されており、日銀が金利引き締めや為替介入に動くかどうかが相場の重要な鍵になります。

  • ECBのスタンス維持
    ECB高官が最近、利下げの必要性を急がないとの発言をしており、ユーロ圏通貨には重しとなっています。Reuters+1

  • 利回り差の縮小
    米国と日本の長期金利差が縮まる傾向にあり、ドル円には調整圧力がかかりやすくなっています。MarketPulse+1

  • 10月相場の構図予想
    MUFGなどの機関は、10月末のIMF年次総会や米財務省の為替報告書発表を控えており、USD/JPYは調整的圧力が強まる可能性と、時折のドル買い戻しとの均衡を見込んでいます。MUFG Research


2. 主要10通貨ペアの動向と展望

以下は、各通貨ペアについて「現状/背景/見通し」を整理した分析です。


2.1 ドル円(USD/JPY)

現状:150円台前半での推移
ドル円は、この日の東京時間で149.90円を起点に上昇を始め、150.30円前後まで上げ幅を拡大。ただし上昇が継続しにくいとの見方も強く、151円台は重い抵抗として意識されました。

背景

  • 前日発表された米PPIの上振れはドル買い圧力を強めました。

  • ただし米中摩擦再燃懸念がリスクオフを誘い、円買い圧力も同時に出やすい状況。

  • 日本国内では、円安進行に対する政策的圧力、そして来月のLDP総裁・首相交代の政治的変化が為替市場の不確実性を高めています。

展望

  • 150.50〜151.00円が短期の上値目処。ここを抜けると151.50円台へトライする機会あり。

  • 下値は149.50〜149.80円がサポート帯。これを割り込むと148円台への調整も視野。

  • 米CPIやFRB要人発言、日銀の動きが次の方向性を決める鍵。


2.2 ユーロドル(EUR/USD)

現状:1.1585ドル付近まで回復
ドルの一時的な調整もあり、ユーロドルは上昇。報道ではユーロが0.14%上昇したとの記録もあります。Reuters

背景

  • 欧州経済指標が軟化傾向にあり、ECBに対する利下げ観測が根強く残っています。

  • ECB高官は金利が「適切水準にある」と述べており、現時点での利下げ余地については慎重な発言が続いています。Reuters

  • 欧州の政治リスク(フランス、イタリアなど)もユーロの重し材料となっています。

展望

  • 1.16ドル近辺を試す可能性あり。ただし1.1620〜1.1650は強い抵抗帯。

  • 下値は1.1500〜1.1550ドルがサポート。これを割るようなら調整圧力が顕在化。


2.3 ユーロ円(EUR/JPY)

現状:163円台中盤
ドル円上昇を受け、ユーロ円も追随上昇。ただしユーロ自体の重さが上値を抑制。

背景

  • ユーロ圏の景況感悪化懸念が根強く、上昇余地は限定的。

  • ただしドル安というトレンドに引きずられる形でクロス円では強さも見られます。

展望

  • 164円台を試すも、抵抗帯に阻まれやすい。

  • 下値は162円半ばがサポートライン。崩れると161円台中盤までの調整余地も。


2.4 ポンドドル(GBP/USD)

現状:1.3351ドル付近まで上昇記録も
リスク回避が後退した局面でポンドは対ドルで上昇。Reuters

背景

  • 英国のインフレ・賃金データは依然強さを示しており、BOEの利下げペースに慎重な見方が出始めています。

  • ただし、英国経済の減速懸念と政策不透明性も重し。

展望

  • 1.34ドル台を試す展開。1.3450〜1.3500が上値抵抗帯。

  • 下値は1.3280〜1.3320が当面のサポートラインとなる可能性。


2.5 ポンド円(GBP/JPY)

現状:184円台後半〜185円台に回復傾向
ドル円の上昇に伴いポンド円も戻りを見せています。

背景

  • ポンドが対ドルで底堅いことが支え材料。

  • ただし円売り圧力がないと上昇は限定されやすい。

展望

  • 185円台前半を上抜けできれば186円台前後も視野。

  • 下値は183.50〜184円付近がサポート帯。


2.6 豪ドル円(AUD/JPY)

現状:92円台後半
豪ドルはこの日も軟調で、ドル高・円安の流れを受けつつも伸び悩み。

背景

  • 中国経済動向への依存が強く、中国指標の弱さが豪ドル売り要因。

  • ただし資源価格の回復期待やリスク選好の戻りが支援要素。

展望

  • 93円台回復を試すが、抵抗も強い。

  • 下値は92円台中盤が注目ゾーン。


2.7 NZドル円(NZD/JPY)

現状:86円台半ば
NZドルも豪ドルと同様、上値は重い展開。

背景

  • RBNZの利下げ観測や国内景気の減速懸念が売り要因。

  • ただし円売り基調が支えになり下値はある程度限定されている。

展望

  • 87円台回復を試すも上値抵抗が強い可能性。

  • 支持帯は86.20〜86.50円付近。


2.8 カナダドル円(CAD/JPY)

現状:106円台前半
原油価格の上昇がカナダドルを支える要因となっています。

背景

  • 資源国通貨として原油価格と連動しやすい。

  • 米ドル需要の強さもプラス材料。

展望

  • 106.50〜107円台を試す動きあり。

  • 下値は105.80〜106円付近。


2.9 スイスフラン円(CHF/JPY)

現状:162円台後半
安全通貨のスイスフランは、リスク回避局面で円との競合買いが見られつつも、円売り主導の地合いで影響力は限定的。

背景

  • 地政学・中東リスクなどがフラン買い要因。

  • ただし円相場の動きに強く影響されやすい。

展望

  • 162.50〜164円台のレンジ推移予想。

  • 円高圧力が強まれば164円前後までの戻りも可能。


2.10 ユーロポンド(EUR/GBP)

現状:0.8900台前後
ユーロとポンドの双方が対ドルで揺れたため、ユーロポンドはレンジ的なもみ合い。

背景

  • ポンドの強さが若干勝る場面も。

  • ECB・BOEの政策動向と英国の指標動向が影響材料。

展望

  • 0.8850〜0.8950のレンジ相場が継続。

  • ユーロ改善材料やポンド失速材料が出れば上振れ余地あり。


3. 今後の注目材料とリスク要因

  1. 米CPI(消費者物価指数/10月10日発表)
    市場の焦点。インフレ加速なら利上げ観測復活、鈍化ならドル売りが進む。

  2. FRB要人発言
    利下げタイミングやタカ派・ハト派のスタンスが相場を揺さぶる。

  3. 日銀・日本政策動向
    円安の持続性と、為替介入または利上げ観測が材料。

  4. 米中貿易政策・地政学リスク
    貿易摩擦再燃や政策発表がリスクオフ要因となる可能性。

  5. 原油・資源価格動向
    資源国通貨(CAD, AUD, NZD)影響度大。

  6. 欧州景気指標・ECB理事会
    ユーロ圏の鈍化がECBの動きに反映され、ユーロ相場を揺さぶる。


4. まとめ・戦略提案

10月14日の為替市場は、ドルの強さを背景にドル円が再浮上を試す展開が中心となりました。
ただし米中リスク、欧州景気の減速懸念、日銀・日本の政策スタンスなどが織り交ざっており、方向感は明確ではありません。

戦略的視点:

  • ドル円:150円台を維持できるかに注目。上抜けには材料が不可欠。戻り売り対応も有力。

  • ユーロドル:1.15ドル台回復は鍵。1.1450ドルを超えられず反落リスクも。

  • クロス円(AUD/JPY, NZD/JPYなど):資源価格とリスク選好に敏感。押し目買いも検討余地あり。

  • 円・スイスフラン:リスクオフ局面で反応しやすいため、相場の先行指標として注目。

10月序盤は、ドル回復 vs 調整圧力 のせめぎ合いが続く展開になる見込みです。指標発表や政策発言を契機に突発的なブレが発生する可能性も高く、ポジション管理とリスク対応が重要な相場環境といえます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました