【2025年10月21日 為替市場レポート】
「円急落・ドル反発基調へ転換? 日銀・日本政治の波が通貨相場を揺らす」
2025年10月21日(火)の外国為替市場では、円が急落する一方で米ドルが揺り戻される動きとなりました。特に日本での政治・政策の変化が大きなトピックとなり、通貨市場のセンチメントが一変しました。前日の日本の政局を受け、円安が急速に進行。ドル円は150円台後半から151円前後に上昇しました。米ドルはリスクオン・日本円の弱さを背景に反発するとともに、ユーロやポンドといった対ドル通貨では行き過ぎたドル安の巻き戻しへの警戒が意識されました。
本記事では、まず市場全体のテーマと背景を整理し、その上で10の主要通貨ペアそれぞれの動きと見通しを詳しく見ていきます。
1. 市場全体のテーマと背景
円急落の背景:日本の政局・政策期待
この日最大の話題は、高市早苗氏が次期日本首相候補に浮上し、円が急落した点です。報道によると、彼女が日本の次の首相となる見通しが強まっており、これを受けて円は対ドルで一時151.38円付近まで弱含みました。Reuters+2Reuters+2
市場は、彼女が財政・金融ともに拡張的な政策姿勢を持つ「アベノミクス再燃」的なスタンスを支持しており、円安を前提にしたポジション構築が進んでいました。
加えて、円安進行を背景に、日銀(日本銀行)の利上げ観測や為替介入への警戒が高まり、これもドル買い・円売りを加速させる材料となりました。
ドル反発とドル円の動き
一方で、米ドルは先週まで「ドル安トレンド」が支配的でしたが、この日はドルの反発基調が見え始めました。円安に押されるドル円だけでなく、対ユーロ・ポンドでもドルが底堅さを取り戻しつつあります。特に、円売り+ドル買いの「安全資産通貨脱却」フローが強まり、ドルが一歩優位に立つ場面が出ています。
リスク選好・地政学・商品市況
また、米中通商問題や世界的な信用リスク懸念が一時和らいだことで、リスク選好の動きも出始めました。アジア株式市場の上昇も通貨相場を支え、特に円が売られやすくなる構図が整っていました。Reuters
原油・金属など資源価格の動きも資源国通貨の動向に影響しており、豪ドル・NZドル・カナダドルなどが物色されやすい環境となっています。
2. 主要通貨ペアの動向と展望(10通貨ペア)
以下では、10の代表的通貨ペアについて「現状の推定水準/背景/今後の見通し」を整理します。
2.1 ドル円(USD/JPY)
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現状: 約 ¥151.00~¥151.40 程度で推移。円急落を受け、150円台後半から151円を超える動き。
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背景: 円の急落(政局・政策期待)、ドル買い回帰、日銀・財務省の為替警戒姿勢が相場を揺さぶる環境。190.38円付近のドル円上昇は円売り主導の典型的な動き。Reuters+2RoboForex+2
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展望: 上値目処としては153円前後が意識されるが、151円台後半での売り圧力も強い。下値では149~150円台が短期サポートとして機能する可能性。レンジとしては150~153円を想定ながら、日銀や日本政府の動き、米金利の先行きがカギ。
2.2 ユーロドル(EUR/USD)
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現状: おおよそ 1.16ドル前後。ドル反発の流れを受けてユーロがやや軟調。
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背景: ドル安基調に対してユーロが恩恵を受けていたが、21日はドル買い再燃で上昇が抑制。欧州景気の鈍化やECBの利下げ観測もユーロの重し。RoboForex+1
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展望: 1.16〜1.165ドルが上値の攻防ゾーン。下方リスクとしては1.155ドルあたりがサポートライン。ドル反発が継続すれば1.15ドル台割れも視野。
2.3 ユーロ円(EUR/JPY)
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現状: 約 ¥175~¥176 程度(ドル円を掛けた換算値)。
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背景: 円安に連動してユーロ円も上昇。ユーロの割安感+円の割高圧力がクロス円を支えている。
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展望: 上値目途としては176~177円台が意識される。下値では174~175円前半がサポート。対円クロスの動きに注目。
2.4 ポンドドル(GBP/USD)
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現状: 約 1.34ドル前後。
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背景: 英国経済の景況感に不透明感があるものの、ドル相場の反発と円絡みの動きに牽引される側面。
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展望: 1.345~1.35ドルを試す可能性あり。ただし、英国のデータが弱い場合は1.33ドル台後半まで調整が出ることも。
2.5 ポンド円(GBP/JPY)
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現状: 約 ¥204~¥205 程度(換算値ベース)。
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背景: ドル円の上昇+ポンドドルの堅調さが複合的に作用。
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展望: 203~206円のレンジ。205円を超えると206~207円台が視野に。下値は202~203円あたりを警戒。
2.6 豪ドル円(AUD/JPY)
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現状: 約 ¥104〜¥105 程度。
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背景: 資源価格の回復期待+円安進行がサポート要因。ただし中国景気リスクが重し。
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展望: 105円台乗せを試す動きが想定されるが、104円台中盤が抵抗帯。下値では103円台後半~104円前半がポイント。
2.7 NZドル円(NZD/JPY)
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現状: 約 ¥93~¥94 程度。
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背景: 豪ドル同様資源国通貨の動きに連動。ただ、NZ独自の経済指標弱さも影響。
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展望: 94円超えを試す余地あり。下支えでは92円台後半~93円が重視される。
2.8 カナダドル円(CAD/JPY)
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現状: 約 ¥120~¥121 程度。
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背景: 原油価格の上昇が支援材料。一方でドル強の流れが抑制要因。
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展望: 121円台半ばを突破できるかが焦点。120円割れのリスクも念頭に。
2.9 スイスフラン円(CHF/JPY)
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現状: 約 ¥167~¥168 程度。
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背景: 円安進行によりクロス円全体で上昇。ただしスイスフランは安全資産通貨の側面もあり、急変動には警戒。
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展望: 170円近辺が上限視される。下支えは165~167円付近。
2.10 ユーロポンド(EUR/GBP)
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現状: 約 0.865~0.870ポンド付近。
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背景: ユーロ・ポンドともに変動が激しいが、ポンドのやや優勢な動きがユーロポンドを押し下げる可能性も。
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展望: 0.860~0.875ポンドのレンジを想定。方向性が出るにはどちらかの通貨に明確な材料が必要。
3. 今後の注目材料
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日銀金融政策会合(10月末予定):高市氏の政権誕生を受け、日銀のスタンスが注目される。円安進行でも利上げ時期の先送りとなるかどうか。
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米連邦準備制度理事会(FRB)発言・米金利動向:ドル反発が続くか、再度ドル安が進むかの分岐点。
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米中貿易リスク・地政学リスク:通商交渉進展か摩擦再燃かでリスク選好が揺れる。
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資源価格(原油・金属):資源国通貨(AUD, NZD, CAD)に直結。
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日本政治・財政政策変更:為替介入への警戒感、国内経済政策の方向性が円の動きに影響。
4. 総括
10月21日の為替市場は、円安・ドル反発の流れが鮮明になった日となりました。ドル円は151円台へと上昇し、ユーロ・ポンドもドルに対して底堅さを維持。ただし、欧州通貨・資源通貨には個別の重し材料もくすぶっており、一方方向へ突き抜けるにはもうひとつ大きな材料が欲しい状況です。
投資・トレード戦略としては以下を意識したいところです:
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ドル円:150~153円レンジが当面の焦点。151円台後半での売り圧力も警戒しつつ、ドル買い回帰の追随も検討。
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ユーロ・ポンド:対ドルではユーロは1.16~1.165ドル、ポンドは1.34ドル付近が攻防ゾーン。
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資源通貨:AUD・NZD・CADは資源価格の動向・リスク選好の変動に敏感。
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円:日本の政策動向・為替介入懸念が鍵。急な円高・円安どちらの動きにも備える必要あり。
通貨市場は「ドル強化+円弱化」という流れに一時的に傾いていますが、背景には多くの不確実要因が潜んでおり、流れが急変するリスクも十分にあります。今後の指標・政策発表には特に注意しながら、柔軟な対応が求められる相場環境といえるでしょう。

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