【2025年10月24日 為替市場レポート】
ドル堅調、円安続行──米金利上昇を背景にドル買い優勢、週末はリスクムード警戒
2025年10月24日(金)の外国為替市場は、ドルが堅調に推移し、円安が継続する一日となりました。前日に続き、米長期金利の上昇と好調な米経済指標を背景に、ドル買いが優勢。ユーロ・ポンドなど欧州通貨は軟調で、資源国通貨は原油価格の一進一退に振られる形で方向感に乏しい展開でした。
市場は来週に控える米PCEデフレーター(インフレ指標)およびFOMC前の最後の主要データ群を意識しており、ポジション調整を伴う動きがやや強まりました。東京時間ではドル円が152円台後半で推移、欧州時間に一時152.90円を付ける場面もありましたが、米時間に入るとやや利食い売りが入り152円半ばで引けました。
◆ 1. 市場全体の振り返り
この日、米10年債利回りは前日比+0.04%の4.73%台まで上昇し、ドルの支えとなりました。米9月耐久財受注が市場予想を上回ったことが米景気の底堅さを示し、「利下げ時期の先送り観測」が再び浮上。ドルインデックス(DXY)は106.5台に上昇し、対主要通貨で広くドル高が進みました。
一方、円は引き続き軟調。日本の9月消費者物価指数(CPI)は前年比+2.8%と市場予想(+2.9%)をやや下回り、「日銀の政策修正観測後退」を招きました。これにより、ドル円は152円台を維持。政府・日銀による介入警戒感はくすぶるものの、実際のアクションはなく、市場では「静かな円安トレンド」が続いています。
欧州市場では、ユーロ圏10月製造業PMIが予想を再び下回り、ECBの早期利下げ観測が再燃。ユーロドルは1.1560ドル近辺まで下落しました。原油市場ではWTI先物が一時$80割れまで下落する場面もあり、資源国通貨の上値を圧迫しました。
◆ 2. 主要10通貨ペアの動向と分析
ここからは、主要10通貨ペアごとに詳しく見ていきましょう。
【1】ドル円(USD/JPY)
-
終値: 約 ¥152.45(前日比+0.30円)
-
レンジ: ¥152.00〜¥152.95
-
概況: 米金利上昇と日本CPIの弱さを背景に円安が進行。介入警戒の中でも実際の圧力は限定的。
-
展望: 来週はFOMC前の発言や米PCEに注目。短期的には¥153突破を試す可能性があり、下値サポートは¥151.80前後。介入発動がない限り、上昇トレンド維持が基本シナリオ。
✅ 戦略: 短期的には押し目買い継続。¥151円台半ばは強いサポート。介入リスクを意識して高値掴みは警戒。
【2】ユーロドル(EUR/USD)
-
終値: 1.1565ドル(前日比▲0.0030)
-
レンジ: 1.1540〜1.1610
-
概況: ユーロ圏PMIの低迷とECB利下げ観測が重荷。米金利上昇も相まってユーロ売りが優勢。
-
展望: 来週の米PCE次第で1.1500ドルを割り込む可能性。反発には1.1650ドル超えが必要。
-
要点: 欧州経済指標が依然弱く、ECBは年内にもう一段の利下げの可能性も。ユーロは戻り売り優勢。
【3】ユーロ円(EUR/JPY)
-
終値: 約 ¥176.60(前日比+0.35円)
-
レンジ: ¥175.90〜¥177.20
-
概況: ドル円上昇に引っ張られる形でユーロ円も堅調。ただしユーロ自体の弱さで上値は限定。
-
展望: レンジは¥175〜¥178。円安地合い継続が支えとなるが、ユーロの方向感が乏しいため中立的な位置づけ。
【4】ポンドドル(GBP/USD)
-
終値: 1.3360ドル(前日比▲0.0020)
-
レンジ: 1.3340〜1.3410
-
概況: 英小売指標が予想を下回り、ポンド売り。米金利上昇も重しに。
-
展望: 1.3300ドルがサポート、1.3450ドルがレジスタンス。BOEが利下げを示唆すればさらに下押しリスク。
-
要点: 英国の景気減速感が強まり、次の方向性は米PCE・BOE発言に左右される。
【5】ポンド円(GBP/JPY)
-
終値: 約 ¥203.50(前日比+0.40円)
-
レンジ: ¥203.00〜¥204.20
-
概況: ドル円上昇に支えられてポンド円も強含み。ただしポンド自体の勢いは乏しい。
-
展望: ¥202〜¥205のレンジ維持。円安基調の中で押し目買い有利だが、上値は限定的。
【6】豪ドル円(AUD/JPY)
-
終値: 約 ¥104.80(前日比+0.10円)
-
レンジ: ¥104.30〜¥105.20
-
概況: 中国株の弱さが重荷となる一方、円安が支え。
-
展望: ¥104〜¥105.50のレンジ。中国景気次第では一段安のリスクも。
-
要点: 豪州CPIを控え、RBAのスタンスが焦点。金利据え置き見通しが豪ドル上値を抑制。
【7】NZドル円(NZD/JPY)
-
終値: ¥93.50(前日比+0.20円)
-
レンジ: ¥93.10〜¥93.90
-
概況: 豪ドル同様に中国・商品市況に敏感な動き。
-
展望: ¥92.50〜¥94.00の範囲で推移。NZ経済指標の弱さが依然懸念。
-
戦略: 豪ドルよりはやや相対的に売られやすい展開。
【8】カナダドル円(CAD/JPY)
-
終値: 約 ¥120.80(前日比▲0.10円)
-
レンジ: ¥120.40〜¥121.30
-
概況: 原油価格下落で上値重いが、円安が下支え。
-
展望: ¥120〜¥122レンジ維持。WTIが$80割れであれば上値抑制が続く。
-
要点: カナダCPIが落ち着いており、BOCは金利据え置き観測強い。
【9】スイスフラン円(CHF/JPY)
-
終値: ¥167.90(前日比+0.25円)
-
レンジ: ¥167.50〜¥168.30
-
概況: リスク選好が優勢でスイスフラン売りも、円安が支え。
-
展望: ¥166〜¥169レンジ想定。地政学リスク再燃時は買い戻しに注意。
【10】ユーロポンド(EUR/GBP)
-
終値: 0.8665(前日比▲0.0005)
-
レンジ: 0.8650〜0.8690
-
概況: ユーロ・ポンドともに弱含みで方向感なし。
-
展望: 0.860〜0.875の持ち合い継続。どちらかの中央銀行の発言がブレイク材料に。
◆ 3. ファンダメンタルの焦点
▶ 米国:インフレと金利の持続力
米経済は依然として堅調で、耐久財・雇用ともに底堅さを維持しています。FOMCメンバーの中では「利下げは2026年以降」との発言もあり、市場では金利高止まりを意識したドル買いが続きそうです。来週発表のPCEデフレーターが注目指標となり、インフレが想定以上に粘るようであれば、ドルインデックス107台も視野に入ります。
▶ 日本:政策転換の遠のき
日銀は依然として「緩和維持」を主張。CPIの結果が予想を下回ったことで、次回会合(10月末)での政策修正観測はほぼ後退しました。為替介入の発動は「153円突破+投機的円売り急拡大」が条件とされ、現時点では静観ムードです。結果として円安トレンドは継続方向。
▶ 欧州:成長鈍化と利下げ観測
欧州のPMIは製造業・サービス業ともに低迷。ECB理事会メンバーの一部から「年内に追加利下げの可能性」発言が出ており、ユーロの上値を抑制しています。年内は1.15ドル割れを試すリスクが高まりつつあります。
▶ 中国・資源国通貨:波乱要因
中国経済の減速懸念が根強く、豪ドル・NZドル・カナダドルはいずれも上値が重い状態。特に鉄鉱石・原油価格のボラティリティが高く、資源通貨の変動要因となっています。
◆ 4. 来週に向けた展望と戦略
10月第4週を終える為替市場は、ドル高・円安のトレンドが再確認された週となりました。来週以降は、
-
米PCEデフレーター(10/30発表)
-
日銀金融政策決定会合(10/31)
-
月末・月初の資金フロー
が焦点となり、やや荒い値動きが予想されます。
【短期トレード戦略】
-
ドル円:152円半ばを中心に上昇継続。153円突破狙い。
-
ユーロドル:戻り売り中心。1.1600〜1.1500レンジ。
-
豪ドル円:押し目買いは104円前後。RBA動向次第。
-
カナダドル円:原油価格に連動、120円割れなら一時的押し目買い好機。
【中期トレンド展望】
-
円安・ドル高基調は継続。ただし、介入発動リスクが年末にかけて意識される。
-
ユーロ・ポンドは景気鈍化で上値重い。
-
豪ドル・NZドル・カナダドルはボラティリティ高く、短期トレード向き。
◆ 5. 総括
10月24日の為替市場は、**「ドル堅調・円安継続・欧州通貨軟調」**という明確な構図が維持されました。市場は日米金融政策のコントラストを再確認し、円の売り持ち構造が崩れにくい状況です。
一方で、来週以降は米インフレ指標と日銀会合を控え、これまでのトレンドに一服感が出る可能性もあります。特にドル円が153円を超えてくる局面では、当局による口先介入や実弾介入への警戒が強まるため、トレーダーは引き続きリスク管理を徹底する必要があります。
短期的にはドル高優勢が続く一方で、地政学的リスクや政策変更への思惑が高まる局面では、円・スイスフランなど安全通貨への買い戻しが一時的に発生することもあり得ます。

コメント