【2025年10月29日 為替市場レポート】米国GDP鈍化と日銀政策観測の交錯でドル円は150円後半へ、為替市場は神経質な展開

【2025年10月29日 為替市場レポート】米国GDP鈍化と日銀政策観測の交錯でドル円は150円後半へ、為替市場は神経質な展開

2025年10月29日(水)の為替市場は、米国の経済成長鈍化懸念と日銀の金融政策修正観測が交錯し、全体として方向感に欠ける一日となった。前日の米経済指標ではGDP速報値が市場予想を下回り、ドル売りが先行したものの、米長期金利の下げ止まりや円売り圧力の強さが相場を支え、ドル円は150円台後半で膠着した。一方、ユーロやポンドなど主要通貨はドル安の流れを受けてやや堅調。リスク資産への投資姿勢がやや戻るなか、オセアニア通貨も底堅く推移した。


1. 市場全体の概況

東京時間の序盤、ドル円は150.72円付近でスタート。その後、米金利の調整局面を受けて一時150.40円台まで下押ししたが、アジア株の堅調や日経平均の上昇が円売りを誘い、再び150.70円台へと戻した。欧州時間には米国の経済成長見通しの下方修正が伝わるとドル売りが強まり、ユーロドルは1.1650台まで上昇。
しかし、NY時間に入ると米長期金利が4.15%近辺で下げ止まり、ドルはやや買い戻された。

市場では、「米経済は減速傾向にあるがリセッションには至っていない」との見方が優勢で、利下げ観測が後退したわけではないが、FRBの慎重なスタンスを織り込む形となっている。日銀に関しては、11月の金融政策決定会合において「国債買い入れ減額」「金利誘導の弾力化」が議論される可能性が取り沙汰され、円の下支え要因となっている。


2. 主要通貨ペアの動向

2.1 ドル円(USD/JPY)

現状:150.65円付近で推移。
背景:米GDPの鈍化を受けドル売りが一時進行したが、米金利の下げ止まりと日銀の政策観測が拮抗。
展望:151円を超えるには米金利上昇が必要だが、日銀の政策修正リスクが上値を抑制。150円前後での持ち合いが続く可能性が高い。


2.2 ユーロドル(EUR/USD)

現状:1.1648ドル付近で推移。
背景:米ドルの軟調地合いを受けてユーロが対ドルで堅調。ドイツIFO景況感指数が改善したことも支援材料。
展望:1.16ドル台を維持できるかが焦点。欧州経済の底入れ感が強まれば、1.17ドル台も視野に。


2.3 ユーロ円(EUR/JPY)

現状:175.50円付近で推移。
背景:ドル円の動きに連動しつつも、ユーロ高の影響で堅調。
展望:176円を超える場面もあるが、リスク回避の動きが出れば一時的な円高の可能性も。175円がサポートライン。


2.4 ポンド円(GBP/JPY)

現状:201.85円付近で推移。
背景:英国のCPIが予想を上回り、インフレ懸念再燃。BOE(英中銀)のタカ派姿勢がポンドを支える。
展望:202円を試す展開もあり得るが、米ドル次第で上下に振れやすい状況。ボラティリティは依然高い。


2.5 豪ドル円(AUD/JPY)

現状:103.95円付近で推移。
背景:中国の景気刺激策継続と鉄鉱石価格の持ち直しで豪ドルが下支え。
展望:104円台を維持できれば底堅いが、米ドルの反発が強まれば上値は限定的。103円前半が押し目買い水準。


2.6 NZドル円(NZD/JPY)

現状:92.45円付近で推移。
背景:RBNZ(ニュージーランド準備銀行)は据え置き姿勢を維持しつつも、利下げに慎重なスタンス。豪ドルと連動して堅調。
展望:92円前半がサポート。93円台乗せには米金利とリスク選好の動向が鍵を握る。


2.7 カナダドル円(CAD/JPY)

現状:119.55円付近で推移。
背景:原油価格が1バレル=81ドル台へ反発し、資源国通貨としてのカナダドルを支援。
展望:120円の壁が厚いが、WTIが安定すれば中期的に上抜けの可能性も。118円台後半が押し目買い水準。


2.8 スイスフラン円(CHF/JPY)

現状:166.90円付近で推移。
背景:スイス中銀(SNB)の利下げ観測が再浮上するも、安全資産需要で下値は限定的。
展望:167円を中心に膠着。地政学リスクが高まれば一段の上昇余地あり。


2.9 ポンドドル(GBP/USD)

現状:1.3382ドル付近で推移。
背景:BOEの利上げ継続観測と米ドルの軟調が重なり、ポンドが対ドルで上昇。
展望:1.34台を試す可能性もあるが、米金利の動向次第で調整リスクも。


2.10 ユーロポンド(EUR/GBP)

現状:0.8708付近で推移。
背景:ユーロが対ドルで上昇した一方、ポンドの堅調もあり方向感に欠ける展開。
展望:0.87台前半でのレンジ相場継続。ECBとBOEの政策スタンス差が鍵。


3. 今後の注目ポイント

(1) 米国の経済指標動向
10月31日に発表予定の米PCEデフレーター(個人消費支出物価指数)はFRBの政策判断に直結する重要指標。市場予想を上回ればドル買い戻し、下回ればドル安が再燃する可能性がある。

(2) 日銀の政策スタンス
植田総裁が「賃金上昇を伴う物価上昇が定着しつつある」との認識を強めれば、年内にも追加修正の思惑が強まり、円買い圧力が再燃する可能性。

(3) 地政学的リスク
中東情勢の緊迫化が一服したとはいえ、イスラエル・イラン関係は不安定。原油相場の変動が再び為替に波及する可能性もある。


4. 総括

29日の為替市場は、米経済の減速懸念と日銀政策修正観測が綱引きを繰り広げた一日だった。ドル円は150円台後半で下げ渋ったものの、明確な方向感は出ず、米PCEや日銀発言待ちの様相を呈している。ユーロやポンドは相対的に堅調で、ドル独歩安の流れが続くか注目される。オセアニア通貨やカナダドルはリスク選好の回復が追い風となり、下値は限定的。
今後は「ドルの調整局面」が続く一方で、円高リスクにも注意が必要な局面だ。150円を軸としたレンジ相場の中で、材料次第では急な変動も想定されるため、ポジション管理には慎重さが求められる。

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