【2025年10月31日 為替市場レポート】米国経済鈍化と日銀政策観測の交錯でドル円は150円台後半、グローバル通貨は方向感に欠ける展開
2025年10月31日(金)の為替市場は、米国経済の成長鈍化懸念と日本銀行(BOJ)の金融政策動向が交錯する中、全体として方向感に欠ける展開となった。ドル円は150円台後半で推移し、米長期金利や日銀の政策観測に敏感に反応する一日となった。欧州通貨は米ドル安の影響で上昇傾向を示したが、ポンドやオセアニア通貨は材料待ちで膠着。さらに、ドル人民元(USD/CNH)や金(XAU/USD)は投資家のリスク選好や地政学リスクを織り込み、相場は神経質な動きを見せた。
1. 市場概況
東京市場序盤、ドル円は150.68円付近でスタート。米国の経済指標や金利動向を受け、一時150.40円まで下押ししたが、日経平均の堅調な動きと円売り圧力で再び150.70円台まで戻した。欧州時間に入ると、ユーロドルは米ドル安の影響で1.1652ドルまで上昇、ユーロ円も175.50円付近で推移した。
米国では第3四半期のGDP速報値が市場予想を下回り、成長鈍化への懸念が台頭。FRBの利下げ観測が後退したものの、長期金利は一時4.15%前後で下げ止まり、ドルの急落を防ぐ場面もあった。一方、日銀は11月会合に向けて国債買い入れや金利誘導の弾力化の議論が意識され、円の下支え要因となった。全体として、材料に敏感な市場心理が浮き彫りになった一日である。
2. 主要通貨ペアの動向
2.1 ドル円(USD/JPY)
現状:150.65円付近で推移。
背景:米GDP鈍化によるドル売り圧力と、米長期金利の下げ止まり、日銀政策観測が拮抗。
展望:151円超えには米金利上昇が必要。150円前後でのレンジ継続が予想され、上下の急変動には注意が必要。
2.2 ユーロドル(EUR/USD)
現状:1.1648ドル付近で推移。
背景:米ドル安が継続し、ユーロが対ドルで上昇。ドイツIFO景況感指数の改善も追い風。
展望:1.16ドル台を維持できるか注目。ECB理事会の利下げ観測や米景気動向が上値の目安となる。
2.3 ユーロ円(EUR/JPY)
現状:175.50円付近で推移。
背景:ドル円の動向に連動しつつ、ユーロ高も加わり堅調。
展望:176円を試す展開も想定されるが、円買い圧力が強まれば一時的に175円前後まで押し戻される可能性がある。
2.4 ポンド円(GBP/JPY)
現状:201.85円付近で推移。
背景:英国CPIが予想を上回り、インフレ懸念がポンド買いを支援。BOEのタカ派姿勢も強材料。
展望:202円を突破する可能性もあるが、米ドルやリスク回避ムード次第で上下に振れる可能性が高い。
2.5 豪ドル円(AUD/JPY)
現状:103.95円付近で推移。
背景:中国の景気刺激策や資源価格の回復が豪ドルを下支え。
展望:104円台維持が鍵。米ドル反発時は103円台前半が押し目買いポイントとなる。
2.6 NZドル円(NZD/JPY)
現状:92.45円付近で推移。
背景:RBNZは利下げに慎重。豪ドルと連動して堅調。
展望:92円前半がサポート。米金利とリスク選好の動向で93円台の上値を試す可能性あり。
2.7 カナダドル円(CAD/JPY)
現状:119.55円付近で推移。
背景:原油価格上昇がカナダドルを支援。資源国通貨として堅調。
展望:120円を上抜けるか注目。WTI原油価格の動向が重要。
2.8 スイスフラン円(CHF/JPY)
現状:166.90円付近で推移。
背景:SNBの利下げ観測があるも、安全資産需要で下値は限定的。
展望:167円を中心に膠着。地政学リスクで上値余地あり。
2.9 ドル人民元(USD/CNH)
現状:7.39元付近で推移。
背景:人民元は米中貿易・資本フローを反映しやすく、米ドル安を受けてやや元高傾向。
展望:7.38元前後がサポート。中国経済指標次第で変動が拡大する可能性。
2.10 金(XAU/USD)
現状:1,930ドル付近で推移。
背景:米国の経済鈍化やリスク回避姿勢から、金は安全資産として底堅い動き。ドル安も支援材料。
展望:1,940ドル超えが目安。米長期金利の上昇次第で調整も考えられる。
3. 今後の注目ポイント
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米経済指標
11月初旬のPCEデフレーター、雇用統計、消費者信頼感指数はFRBの利下げ・利上げ予想に直結。結果次第でドル円の上値・下値が決まる。 -
日銀の政策動向
11月会合に向け、国債買い入れや金利誘導の柔軟化が意識される。追加修正の思惑が出ると円買い圧力が再燃。 -
地政学リスク・資源価格
中東情勢、中国の経済指標、原油価格動向がグローバル通貨に影響。特にCAD/JPYやAUD/JPYは資源価格に敏感。 -
市場心理・リスク選好
米ドル安・ユーロ高・ポンド堅調の中で、投資家のリスク選好度合いがオセアニア通貨や金に波及する。
4. 総括
10月31日の為替市場は、米国の経済鈍化懸念と日銀政策観測がせめぎ合う中、ドル円は150円台後半で膠着した。欧州通貨はドル安に支えられ堅調だが、米金利動向や地政学リスクによって変動の幅が広がる可能性がある。オセアニア通貨やカナダドルも底堅く、押し目買いのチャンスが意識される場面があった。金は安全資産需要とドル安を背景に安定推移。ドル人民元は米中関係や資本フローの影響を受けつつ、やや元高方向に動いた。
投資家は、150円を中心としたドル円レンジを意識しつつ、米経済指標と日銀動向、資源価格・地政学リスクを注視することが重要である。市場は神経質な動きが続くため、ポジション管理とリスクヘッジを怠らないことが求められる。

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