【2025年11月13日|市場分析レポート】

【2025年11月13日|ファンダメンタル分析レポート】

「ドル一強時代の終焉?米CPIショックでドル安加速、円・ユーロ・資源通貨が一斉反発」

2025年11月13日(木)の為替市場では、前日に発表された米10月CPI(消費者物価指数)が市場予想を大きく下回ったことを受けて、米ドルが主要通貨に対して全面安となった。市場では、早期利下げ観測が一気に強まったほか、「ドル一強相場の終焉」という言葉すら聞かれるようになっている。
特にドル円は一時147.80円台から145円台半ばまで急落
し、ユーロドルは1.11台を突破、豪ドル・NZドルなどの資源通貨も大幅反発となった。インフレ鈍化の兆候と米金利低下を背景に、為替市場は明確に「ポスト・ドル高」フェーズへと舵を切り始めたように見える。


1. 市場概況:CPIショックで米金利急低下、ドル全面安へ

12日に発表された米10月CPIは、

  • 前月比:+0.1%(予想+0.3%)

  • コアCPI(食品・エネルギー除く):+0.2%(予想+0.3%)

と、いずれも予想を下回った。さらに、前年比ベースでも**総合+3.0%・コア+3.3%**と、いずれも2021年以来の低水準に落ち着いた。

これを受けて米長期金利は急低下。10年債利回りは前日の4.47%から4.22%へ低下、2年債利回りも**4.73%→4.48%**と大きく下げた。金利低下を受けてドル売りが全面的に進行し、為替市場は「ドル高巻き戻し」の一日となった。


2. 主要通貨ペアの動向

(1)ドル円(USD/JPY)

  • 現状:145.65円前後(前日比-1.8円)

  • 背景:CPI鈍化によりFRBの早期利下げ観測が高まり、米金利低下とともにドル売り・円買いが加速。

  • 展望:市場では「来年3月の利下げ開始確率」が70%を超えており、ドル円は146円を明確に割り込むと、次の下値メドは144.50円付近と見られる。日本側では日銀植田総裁が「物価のモメンタムは着実に高まっている」と発言し、追加利上げ期待も微妙に再燃している。円の下支え要因となる可能性がある。


(2)ユーロドル(EUR/USD)

  • 現状:1.1113ドル(前日比+0.0080)

  • 背景:ドル安トレンドを追い風にユーロが対ドルで急伸。

  • 欧州指標:独ZEW景況感指数が+9.8と予想(+5.5)を上回り、ユーロ買いを後押し。

  • 展望:ECB理事会では利下げ圧力が残るものの、米との金利差縮小観測がユーロを支える。1.12ドル突破が視野に入る。


(3)ユーロ円(EUR/JPY)

  • 現状:162.00円前後(前日比-0.7円)

  • 背景:ユーロ自体は強いが、ドル円の急落に連れ円高が進行したため、ユーロ円も軟調。

  • 展望:短期的には161円半ばが下値支持線。CPIショック後のドル調整が一巡すれば、再び162〜163円台へ戻す余地も。


(4)ポンドドル(GBP/USD)

  • 現状:1.2940ドル(前日比+0.0100)

  • 背景:英7〜9月期GDPが前年比+0.5%と堅調で、景気後退懸念がやや後退。

  • 展望:ドル安トレンドの追い風で1.30ドルを試す展開も。英中銀(BoE)は年内利下げ見送り観測が台頭しており、相対的にポンド買い優勢。


(5)豪ドル円(AUD/JPY)

  • 現状:95.05円(前日比+0.80円)

  • 背景:CPI後のドル安でリスク選好が回復し、資源国通貨が買い戻された。

  • 展望:中国経済指標(固定資産投資・小売売上)の改善が確認されれば、96円台を試す展開。


(6)NZドル円(NZD/JPY)

  • 現状:88.45円(前日比+0.75円)

  • 背景:RBNZ(NZ準備銀行)がタカ派スタンスを維持するとの見方でNZドル堅調。

  • 展望:90円台定着は難しいが、87円台が下値サポートとして機能しやすい。


(7)カナダドル円(CAD/JPY)

  • 現状:106.80円(前日比+0.60円)

  • 背景:原油相場がWTIで1バレル=83ドル台へ上昇し、資源国通貨を支援。

  • 展望:エネルギー高+ドル安の組み合わせはカナダドルに好影響。107円台維持なら上昇トレンド再開も。


(8)スイスフラン円(CHF/JPY)

  • 現状:161.55円(前日比+0.40円)

  • 背景:リスクオン局面でも底堅さを維持する「安定通貨」。

  • 展望:円高圧力との綱引きで方向感に欠けるが、安全資産需要が再燃すれば160円後半を維持。


(9)人民元(USD/CNH)

  • 現状:7.12元(前日比-0.08元)

  • 背景:米ドル安により元高が進行。中国当局も元高容認の姿勢を見せている。

  • 展望:7.10を割り込むとテクニカル的に6.98元方向を意識。人民元安定化がアジア全体の通貨を支える。


(10)南アフリカランド円(ZAR/JPY)

  • 現状:7.83円(前日比+0.10円)

  • 背景:金相場が1トロイオンス=2,430ドルへ上昇し、ランドを下支え。

  • 展望:ドル安・資源高の流れが続けば、8円台回復の可能性も。


3. 今後の注目材料と展望

  1. 米雇用統計・PCEデフレーターへの焦点
    CPIの弱さを受け、市場は今後の**PCE(個人消費支出価格指数)**を次の判断材料とする。PCEも鈍化が確認されれば、**12月FOMCでの「利下げ示唆」**が現実味を帯びる。
    ドル円は145円割れ、ユーロドルは1.12台乗せの可能性も視野。

  2. 日本側の要因
    日銀が12月に追加の政策調整(YCC撤廃を伴う実質利上げ)を行うとの思惑も再浮上している。
    金利差縮小が進めば、円高方向の圧力が中期的に強まる

  3. 欧州と資源国の復権
    米金利が低下する一方で、欧州・豪州・カナダの金利は比較的高水準で維持される見通し。
    これにより、ユーロ・ポンド・豪ドル・カナダドルが中期的に相対強通貨として位置づけられつつある。


4. 総括:「ドルの時代」から「多極通貨時代」へ

今回のCPIショックは単なる一時的な指標サプライズではなく、ドル高基調の転換点になる可能性を秘めている。
米金利のピークアウト、世界的な景気減速、そして各国通貨の相対的な割安感――これらが重なり、為替市場は明確に新しい段階へと入りつつある。

特にドル円は、150円台定着を目指していた流れが完全に崩壊し、今後は145円→143円台への調整を警戒する局面。一方、ユーロや豪ドルなどは「ドルの調整」の恩恵を受ける形で息を吹き返している。

投資家心理も変化しており、「ドルロングを基本戦略とする時代」は一旦終わり、**分散的な通貨戦略(マルチカレンシー投資)**が主流になりつつある。


<本日の注目レンジ予想>

  • ドル円:145.20〜146.80円

  • ユーロドル:1.1070〜1.1180ドル

  • ポンドドル:1.2860〜1.3020ドル

  • 豪ドル円:94.80〜95.80円

  • カナダドル円:106.20〜107.20円

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