【11月20日|ファンダメンタル分析レポート】 「市場は“ドル新局面”に入りつつある──通貨の力関係が静かに塗り替わる日」

【11月20日|ファンダメンタル分析レポート】

「市場は“ドル新局面”に入りつつある──通貨の力関係が静かに塗り替わる日」

11月20日の為替市場は、これまでの“ドル一強時代”の延長線にありながらも、確実にその性質を変えつつある1日となった。
前日の米指標の柔らかさ、米債利回りの低下、そして欧州・オセアニア通貨の反発力。これら複数の要因が複雑に絡み合い、市場は「ドルの相対的な強さは維持しつつも、他通貨の巻き返し余地が明確に広がっている」という、いわば“移行期の相場”を迎えている。

本日のレポートでは、主要10通貨以上を対象に、
・前日の振り返り
・当日の材料整理
・通貨ごとのファンダメンタル評価
・具体的な相場水準を踏まえた展望

を包括的にまとめていく。


◆前日のマーケット総括(11月19日)

■米国:指標はまちまちだが、ドル買いが“決定的”にはならない理由

11月19日の米国市場は、小売関連データが想定より弱く、住宅関連は底堅い、という「強弱混在」の内容だった。
しかしもっと重要なのは、米長期金利が伸び切らなかったことだ。

・米10年債利回り:4.41%前後へ小幅低下
・米2年債利回り:4.90%台で上値重い

本来なら金利が下がればドル売りが強まっても不思議ではないが、現在の市場は「米景気は減速しつつもハードランディングには至らない」という中途半端なコンセンサスにより、
ドル買いもドル売りも決定打を欠く展開
となっている。

■欧州:インフレ再燃観測により“売られ過ぎ修正”が顕著

ユーロは、ここ数週間続いた弱材料が一巡し、
ユーロ高修正が入りやすい地合い
となっている。

ユーロドルは1.07台前半まで反発。
ユーロ円は162円台前半まで上昇。

特にユーロ円は、ドル円の膠着を横目に、ユーロ単独の買い戻しで強さを維持している。

■オセアニア:底打ち感が強まる

豪ドル・NZドルは、米金利の鈍化と中国関連株の反発を背景に底堅さを見せた。

豪ドル円は97円台後半、
NZドル円は89円近辺まで上昇。

リスクオンの軽い回復も支えとなり、
「戻りやすい通貨」へ徐々に変化している。


◆11月20日の主要通貨ファンダメンタル分析

以下では、市場実勢の水準と経済材料を踏まえ、
ドル円からマイナー通貨まで12通貨ペア以上を網羅する。


◆ドル円(USD/JPY)

《現状》:153円後半~154円台前半での揉み合いが継続
ドル円は米金利の方向感のなさをそのまま映し、154円を挟んで静かな展開が続く。

《ファンダ材料》
・米金利低下 → 上値を抑制
・日本の物価は上向きだが、日銀は慎重姿勢
・リスクオンの資金流入が円売りを維持

《展望》
152円台後半〜154円台後半まで広めのレンジを想定。
大きく動くには米指標かFOMCが必要。


◆ユーロドル(EUR/USD)

《現状》:1.07台前半で反発基調
インフレ再燃観測がユーロの支えとなり、久々にユーロに「地合い改善」の空気が戻っている。

《展望》
1.065〜1.078のレンジ想定。
ユーロ単独の買戻しが続く可能性も。


◆ユーロ円(EUR/JPY)

《現状》:162円台前半の高値圏維持
弱材料が出尽くし、今は“戻りの相場”。

展望
161〜163.5円の広めのレンジ。
しばらく上値試しが続きやすい。


◆ポンドドル(GBP/USD)

《現状》:1.24台を維持
英国のインフレは鈍化してはいるが、米金利との相対評価ではポンドがやや優位。

展望
1.238〜1.252を中心に推移。


◆ポンド円(GBP/JPY)

《現状》:191円台前半
円売りとポンド個別の強さで高値維持。

展望
188.5〜192.5円のレンジ。


◆豪ドルドル(AUD/USD)

《現状》:0.66台前半
中国株反発とリスクオンが豪ドルの支え。

展望
0.652〜0.668の上昇バイアス。


◆豪ドル円(AUD/JPY)

《現状》:97円台後半で底堅い
リスクオンの流れで上値を追う展開が継続。

展望
96.5〜98.8円。


◆NZドル円(NZD/JPY)

《現状》:89円近辺
豪ドル同様に底打ち感が強い。

展望
88〜90.5円。


◆カナダドル円(CAD/JPY)

《現状》:112円台前半
原油高の支えはあるが勢いは限定的。

展望
110.5〜113.8円。


◆スイスフラン円(CHF/JPY)

《現状》:170円台半ば
フラン高のピーク感が漂い始めている。

展望
168.8〜171.8円。


◆ユーロポンド(EUR/GBP)

《現状》:0.86台前半
ユーロ買い戻しで反発しやすい地合い。

展望
0.855〜0.863。


◆11月20日の総合展望:市場は“ドルの圧倒的優位”から“相対評価の世界”へ

11月20日の為替市場は、明確に以下の構図へ変わりつつある。


■①「ドルが主役」→「各通貨が自力で動く相場」へ

これまで半年にわたり、
米金利の動き=為替全体の方向性
という完全な一本足打法だった。

しかし今は、

・ユーロ → インフレ再燃観測
・豪ドル/NZドル → 中国関連の回復
・ポンド → サービスインフレの粘り
・円 → 日銀ギャップの修正待ち

など、各通貨がそれぞれのファンダで動く地合いへと変化してきた。


■②ドル円は膠着だが、他通貨は“解き放たれた”ように動く

ドル円は154円を挟んで動きづらいが、
ユーロ円・豪ドル円・ポンド円が動意づきやすくなっている。

特にユーロ円は強く、
豪ドル円も戻り余地を拡大している。


■③今後の主役通貨は「ユーロ」「豪ドル」「NZドル」

これまで売られ続けた通貨ほど、反発のエネルギーを溜めやすく、
まさにその典型が
ユーロ・豪ドル・NZドル
である。

ドルの優位は変わらないが、
市場は“次の主役”を探し始めている。

それが11月20日の最大のテーマである。


◆まとめ:11月後半は「ドルからの資金シフト」がじわじわと進む相場

11月20日の市場は、
ドルの相対的な強さは残しつつも、他通貨の巻き返しが本格化する過渡期の相場
である。

・ユーロ:買戻し優勢
・豪ドル/NZドル:底打ち反発
・ポンド:個別の強さ維持
・円:依然として買い材料は乏しい
・ドル:唯一の主役ではなくなるフェーズへ

今週だけを見ても、ドルがゆっくりと存在感を“薄められていく”過程に入っているのがわかる。

11月下旬に向けては、
「ドルの強弱」ではなく「通貨ごとのファンダ差」で勝負する局面
となるだろう。

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