【9月18日|ファンダメンタル分析レポート】

【9月18日|ファンダメンタル分析レポート】

日銀が利上げしても円安。市場が見始めた「次の利上げ」と為替介入の現実性

2026年9月18日の為替市場は、今週最大のイベントだった日銀金融政策決定会合を通過し、非常に荒い値動きとなりました。

最大のポイントは、日銀が政策金利を1.00%程度から1.25%程度へ引き上げたにもかかわらず、円が買われるどころか大きく売られたことです。

ドル円は17日のニューヨーク市場終値が155.97円だったのに対し、18日の東京市場では一時157.60円まで上昇。その後も円安基調が続き、海外市場では158円台までドル高・円安が進みました。Reutersによると、ドル円は一時158.07円まで上昇し、円は対ドルで約2週間ぶりの安値を付けています。

つまり今回の市場反応は、

「日銀が利上げしたから円高」

という単純な構図ではありませんでした。

市場が評価したのは今回の0.25%利上げそのものではなく、

「日銀は今後も連続的に利上げできるのか」

「FRBとの金利差はどこまで縮小するのか」

「日本の金融政策は本当に円安を反転させられるのか」

という、次の段階です。

9月18日の為替市場は、まさに「利上げの先」を見始めた一日だったと言えるでしょう。


日銀は政策金利を1.25%へ引き上げ

まず最も重要な材料から確認します。

日銀は18日の金融政策決定会合で、政策金利を1.00%程度から1.25%程度へ0.25%ポイント引き上げました。

これは市場予想通りでした。

今回の決定は賛成7、反対2という結果になり、浅田審議委員と佐藤審議委員が反対しました。政策金利1.25%は31年ぶりの高水準です。

しかし、ここに今回の円安の大きなポイントがあります。

市場ではすでに日銀の利上げがかなり織り込まれていました。

そのため、

「利上げをするかどうか」

ではなく、

「利上げ後にどのような政策運営をするのか」

が本当の焦点になっていました。

そして、結果として市場は今回の決定を「想定ほどタカ派ではない」と受け止めました。

7対2という投票結果も、その背景の一つです。

市場からすれば、

「日銀内部でも追加利上げについて意見が割れている」

という事実が確認されたことになります。

利上げそのものは円買い材料でも、将来の利上げペースに慎重さが残れば、短期的には円売り材料になります。

実際、日銀の決定後、ドル円は156円台から157円台へ上昇し、東京市場では157.33円まで上値を伸ばしました。


植田総裁の発言も「追加利上げを急がない」と受け止められた

午後の植田総裁記者会見では、さらに市場が反応しました。

植田総裁は、今回の利上げ後も金融環境は緩和的な状態にあるとの認識を示し、基調的な物価上昇率が2%に近づいていることから、経済・物価・金融情勢に応じて引き続き利上げしていく考えを示しました。

一方で、利上げのタイミングやペースについては、中東情勢、AI関連需要、為替変動などを含めて経済・物価情勢を点検しながら判断すると説明しています。

この表現は重要です。

日銀は追加利上げの可能性を閉ざしていません。

しかし、

「次回も利上げする」

と明確に約束したわけでもありません。

市場が求めていたのは、より強い追加利上げのシグナルでした。

そのため、会見開始直後には「政策の局面が変化した」という発言が円買いを誘い、ドル円は一時156.51円付近まで急落しました。

しかし、その後は再びドルが買われ、157.60円まで上昇しました。

この動きは非常に象徴的です。

一度は円買いに反応したものの、最終的には「日銀の追加利上げペースはまだ不透明」という判断が優勢になったわけです。


日本の8月コアCPIは1.7%

さらに、18日朝に発表された日本の8月消費者物価指数も市場心理に影響しました。

生鮮食品を除くコアCPIは前年同月比1.7%上昇。

市場予想の1.8%、7月の1.8%をともに下回りました。

生鮮食品とエネルギーを除いた指数は1.9%上昇でした。

この数字だけを見ると、日銀が急ピッチで利上げを続ける必要性はやや低下したようにも見えます。

もちろん、日銀が重視している基調的な物価上昇率は2%に接近しており、エネルギー価格や円安による輸入物価上昇リスクも残っています。

しかし、少なくとも今回発表されたCPIは、

「日本のインフレが急加速している」

ことを示す内容ではありませんでした。

このため、日銀が利上げしたにもかかわらず、

「次回もすぐに利上げするとは限らない」

という市場の解釈につながり、円売りが強まりました。


FRBは3.75~4.00%。日米金利差は依然として大きい

一方、米国では16日にFRBが政策金利を0.25%ポイント引き上げ、3.75~4.00%としました。

しかもFRBは今後数カ月で追加利上げを実施する可能性を示しています。

ここで日米の政策金利を単純に比較すると、

米国:3.75~4.00%
日本:1.25%

となります。

政策金利差は依然として約2.5~2.75%ポイントあります。

今回の日銀利上げによって金利差は縮小しましたが、それでも米国側の金利水準は日本を大きく上回っています。

そのため、

「日銀が利上げした=円を買う」

とはならないのです。

むしろ現在の市場では、

「FRBも追加利上げをする可能性がある」

という点まで考慮しなければなりません。

日銀が0.25%利上げしても、FRBが追加利上げを示唆すれば、日米金利差の縮小ペースは限定的になります。

これが9月18日に円安が進んだ最大のファンダメンタルズ要因の一つです。


ドル円は155円台から158円台へ

9月18日のドル円は非常に荒い動きでした。

17日の終値は155.97円。

18日の東京市場では155.87円を安値に上昇し、日銀決定後には156.86円、さらに157.33円まで上昇しました。

植田総裁会見では一時156.51円まで下落したものの、その後再び買い戻され、東京時間には157.60円まで上昇しました。

海外市場ではさらにドル高が進み、一時158.07円まで上昇しています。

ここで重要なのが158円という水準です。

158円台は単なるテクニカルポイントではありません。

日本政府・財務省による為替介入への警戒感が強まりやすい水準です。

実際、政府は円の急激な変動を警戒しており、7月には米国との協調介入も行われました。

9月18日には、今回の円安進行を受けて介入への警戒感が再び高まっています。Reutersによると、加藤財務相は円を支えるための対応を排除していません。

したがって、ドル円が158円台へ上昇したからといって、そのまま一直線に160円を目指すと考えるのは危険です。

158円台から上では、

「金利差によるドル買い」

「為替介入への警戒によるドル売り」

がぶつかりやすくなります。


ユーロ円は180円台へ

ユーロ円も大きく上昇しました。

17日の終値は179.01円でしたが、18日の東京市場では一時180.67円まで上昇しました。

17日のユーロ円は178.48~179.23円の範囲で推移していたため、18日は明確に上方向へレンジを切り上げた格好です。

16日にFRBが利上げしたことで一時ドル高が進みましたが、18日はドルそのものより「円売り」が相場全体を動かしました。

そのためユーロ円、ポンド円、豪ドル円など、クロス円全般が上昇しています。

ユーロ円については180円台が定着するかが今後のポイントになります。

ただし、ドル円と同様に円安だけで上昇している場合、日銀の追加利上げ観測が強まった瞬間には急速に反落する可能性があります。


ポンド円は210円台へ

ポンド円も円売りの影響を強く受けました。

18日朝の水準は208円台でしたが、東京市場では210円台へ上昇しています。

英国では17日にBOEが政策金利を3.75%で据え置きましたが、インフレへの警戒姿勢は維持されています。

つまり、

英国:3.75%
米国:3.75~4.00%
日本:1.25%

という金利構造です。

この金利差を考えると、ポンドやドルに対する円の弱さは依然として説明できます。

ただし、ポンドは英国の景気減速やインフレの動向にも左右されるため、ポンド円では円だけを見て判断するのは危険です。


豪ドル円は112円台

豪ドル円も上昇し、18日の東京市場では112円台に乗せています。

17日の終値はおよそ110.9円でしたから、1日で1円以上の上昇となりました。

豪ドルは資源国通貨であり、世界的なインフレ、原油価格、金属価格、中国経済など複数の要因から影響を受けます。

現在は中東情勢によってエネルギー価格が高止まりしやすい環境にあり、資源国通貨にとって一定の支援材料となっています。

一方、世界的に金利が高止まりすることで景気減速懸念が強まれば、豪ドルには逆風となります。

したがって豪ドル円は、

「円安」

だけでなく、

「資源価格」

「中国景気」

「RBAの金融政策」

をセットで確認する必要があります。


NZドル円は90円前後

NZドル円も18日は89円台から90円台を試す動きとなりました。

17日終値は89.34円前後で、18日朝の水準は89円台でしたが、東京市場では90円台へ上昇しています。

NZドルは金利差を反映しやすい通貨です。

そのため、世界的な利上げ局面では相対的に底堅くなりやすい一方、世界景気への不安が強まると売られやすい特徴があります。

今回の円安局面ではNZドル円も上昇しましたが、90円台を明確に維持できるかは、今後のリスク選好とニュージーランドの金融政策次第でしょう。


カナダドル円は112円台

カナダドル円も18日は111円台から112円台へ上昇しました。

17日の終値は111円台でしたが、18日の東京市場では112円台半ばまで上昇しています。

カナダドルは原油との関係が比較的強い通貨です。

現在は中東情勢を背景にエネルギー価格が高止まりしており、カナダドルには一定の下支えがあります。

ただし、原油価格が急落すれば状況は変わります。

今回も原油価格が一時100ドル台を超える一方、サウジアラビアからの供給改善観測などによって原油価格が低下する場面がありました。

エネルギー価格が今後どう動くかは、カナダドルだけでなく、米ドルや円にも影響する重要テーマです。


スイスフラン円は190円台

スイスフラン円は18日に190円台へ上昇しました。

17日の終値は189円前後でしたが、18日は190円台まで円安が進んでいます。

スイスフランは安全資産として買われることがありますが、今回のように円そのものが売られる局面では、スイスフラン円も上昇しやすくなります。

今後、地政学リスクがさらに高まった場合には、ドル、スイスフラン、円のどこに資金が流れるのかを見る必要があります。


南アランド円、メキシコペソ円も円安の恩恵

南アランド円は18日、9.6円台後半まで上昇。

メキシコペソ円も9円台半ばから上方向へ動いています。

高金利通貨は、世界的な金利上昇局面では相対的に注目されやすい一方、株式市場が急落するようなリスクオフ局面では急速に売られる可能性があります。

その意味では、現在の円安はすべてのクロス円に同じ意味を持つわけではありません。

ドル円は日米金利差、豪ドル円は資源価格と中国、メキシコペソ円は高金利と米国経済、南アランド円は資源価格と新興国リスクというように、通貨ごとの背景を分けて考える必要があります。


9月18日の主要通貨ペアを整理

18日の市場水準を整理すると、東京時間を中心に以下のような動きとなりました。

ドル円:155.87~157.60円
ユーロ円:178.94~181.02円
ユーロドル:1.1474~1.1492ドル
ポンド円:208円台から210円台
豪ドル円:110円台後半から112円台
NZドル円:89円台から90円台
カナダドル円:111円台から112円台
スイスフラン円:189円台から191円近辺
南アランド円:9.5円台から9.6円台
メキシコペソ円:9.0円台から9.1円台

特にドル円とクロス円の上昇が目立つ一日となりました。


今後の最大テーマは「日銀が次にいつ動くか」

今回の相場を今後につなげて考えると、最大のテーマは日銀の次の利上げです。

今回の利上げは市場にとってサプライズではありませんでした。

したがって、次に円を本格的に買う材料になるのは、

「日銀が追加利上げを早める」

という見方が強まることです。

逆に、日銀が慎重姿勢を続け、FRBが追加利上げを行えば、日米金利差が再び意識され、ドル円には上昇圧力がかかりやすくなります。

つまり今後のドル円は、

日銀の追加利上げ観測

米国の追加利上げ観測

米10年債利回り

日本国債利回り

為替介入への警戒

という複数の要素で決まっていくことになります。


ドル円の重要水準

短期的には157円台が重要です。

18日の高値圏である157.60円付近を明確に上抜ければ、158円台が次の焦点になります。

そして158円台に入ると、為替介入への警戒感が急速に強まる可能性があります。

一方、下方向では157円、156円が最初のサポート。

156円を割り込めば155円台、さらに154円台が意識されるでしょう。

特に今回のように日銀会合後でも円安になった相場では、

「日銀が利上げしたから円高になる」

という固定観念を捨て、

「市場が次の利上げをどの程度織り込んでいるか」

を見ることが重要です。


まとめ

2026年9月18日の為替市場は、日銀が政策金利を1.25%へ引き上げたにもかかわらず、円安が進むという非常に象徴的な一日になりました。

今回のポイントを整理すると、

第一に、日銀は0.25%利上げし、政策金利は1.25%へ上昇しました。

第二に、しかし利上げは市場予想通りで、7対2という投票結果も含めて追加利上げへの慎重姿勢が意識されました。

第三に、日本の8月コアCPIは1.7%と市場予想を下回り、急速な追加利上げを裏付ける材料にはなりませんでした。

第四に、FRBはすでに3.75~4.00%まで利上げしており、日米金利差は依然として大きく残っています。

第五に、ドル円は158円台まで上昇し、今後は為替介入への警戒感が一段と重要になります。

そして最も重要なのは、今回の円安が「日銀の利上げ失敗」という単純な話ではないことです。

日銀は確実に金融政策を正常化する方向へ進んでいます。

しかし、市場はそれ以上のペースを期待していた。

だからこそ、利上げそのものが円買い材料にならず、むしろ材料出尽くしによる円売りにつながりました。

今後の為替市場では、日銀が次回以降どの程度のペースで利上げを続けられるのか、そしてFRBが追加利上げをどこまで進めるのか、この二つの金融政策を比較することが最も重要になります。

ドル円が158円台に入った現在、市場は再び「160円」という数字を意識し始める可能性があります。

ただし、その上昇を単純に追いかける局面とも言い切れません。

158円近辺では為替介入への警戒が強まり、日銀の追加利上げ観測が強まれば一気に円高方向へ戻る可能性もあります。

今後のドル円は、上昇トレンドと介入警戒が真正面からぶつかる局面に入ったと考えられます。

9月後半の為替市場では、米国の金融政策、日本の追加利上げ観測、原油価格、そして為替介入。

この4つがドル円を動かす主要な材料になるでしょう。

特に重要なのは「金利差がまだ大きい」という事実と、「日銀が利上げ局面に入った」という事実が同時に存在していることです。

この二つの力がぶつかることで、ドル円は今後も一方向ではなく、非常に荒い値動きを続ける可能性があります。

9月18日は、その新しい相場環境がはっきりと表れた一日でした。

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