【11月2日|ファンダメンタル分析レポート】原油急落でドル指数1カ月ぶり安値、ドル円は158円手前で足踏み——米ISMは予想上振れ、焦点は中間選挙へ
1.本日の為替市場:原油急落でドル全面安、ただしドル円は底堅い
11月2日の為替市場では、米国とイランの外交交渉への期待から原油価格が急落し、ドルが主要通貨に対して幅広く売られた。ドル指数は一時0.5%下落して101.45前後となり、9月30日以来、約1カ月ぶりの低水準をつけた。ユーロドルは一時1.1237ドルまで上昇し、ユーロ円も177.14円まで上値を伸ばした。
一方、ドル円は東京時間の157.39円付近から始まり、午後には157.99円、ロンドン時間には一時158.00円まで上昇した。ドル安が進むなかでもドル円が崩れなかったのは、原油安と株高でリスク回避の円買いが後退し、クロス円で円売りが優勢になったためだ。ドル売りと円売りが同時に進み、ドル円は157円台後半で綱引きとなった。
先週末の30日は、日銀の利上げ姿勢とAI関連株安を背景に一時156.95円前後まで円高が進んだ。週明けはその流れが続かず、「ドル安・円安」という組み合わせに変わった点が本日の特徴である。日本時間3日未明の時点で、ドル円は157円台後半で推移している。
なお、日本は3日が文化の日で休場となる。東京勢が不在のなかで米中間選挙の結果が出るため、薄商いのなかで値動きが大きくなる可能性に注意したい。
2.米・イラン外交への期待で原油が6%急落
本日の最大の材料は原油価格の急落だった。トランプ大統領がネタニヤフ首相に対し、少なくとも米中間選挙が終わるまではイランへの攻撃再開を控え、外交交渉を見極めたい意向を伝えたとの報道が流れた。ルビオ国務長官も、大統領は外交的な解決を望んでいると述べた。イランとカタールの協議も3日連続で行われている。
これを受け、WTI原油は1バレル100ドルを割り込み、一時97ドル台まで下落した。ブレント原油も6%超下げて106ドル台となった。10月に約15%上昇した反動もあり、積み上がっていた地政学リスクのプレミアムが一気に剥落した格好だ。
原油安は為替に二つの経路で影響した。一つは、インフレ懸念の後退を通じて米長期金利の上昇を抑え、ドルの重荷になったこと。もう一つは、株式市場の買い戻しを促し、安全資産としての円需要を弱めたことだ。米国株は寄り付きからS&P500、ダウともに1%前後上昇した。
ただし、中東情勢が解決したわけではない。ホルムズ海峡ではタンカーへの攻撃が続いており、中間選挙後に米国の対イラン姿勢が硬化するとの見方もある。原油が再び急騰すれば、今日とは逆にドル買い・円売りが進む可能性があるため、原油安を一方向のトレンドとみなすのは早い。
3.米ISM製造業は55.5に上振れ、ただし価格指数は低下
日本時間24時に発表された米国の10月ISM製造業景況指数は55.5となり、市場予想の54.6と前月の54.5をともに上回った。新規受注や生産など、構成する5項目のうち4項目が前月より伸びを高めた。一方で雇用は伸びが鈍化している。
注目したいのは、物価の動きを示す価格指数が77.9から75.2へ低下したことだ。製造業の活動は拡大を続けているものの、仕入れ価格の上昇圧力はわずかに和らいだ。原油安と合わせて考えると、インフレの加速を過度に警戒する必要は少し後退したといえる。
FRBにとっては判断が難しい結果だ。景気の強さは追加利上げを正当化する材料になるが、物価圧力の鈍化は利上げを急ぐ理由を弱める。先週はローガン・ダラス連銀総裁やムサレム・セントルイス連銀総裁がタカ派的な発言をしており、市場では12月の利上げを高い確率で織り込んでいる。今回のISMは、その見方を大きく変える内容ではなかった。
今週末には10月の雇用統計が控えている。製造業の雇用の伸びが鈍化したことが、全体の雇用にも表れるかどうかが次の焦点となる。
4.米中間選挙を前にポジション調整
3日に投票が行われる米中間選挙は、今週最大のイベントである。市場では民主党が上下両院で勝利する可能性が意識され始めている。トランプ大統領は、民主党が勝てばすべてに拒否権を行使すると発言し、選挙後の政策運営をめぐる不透明感が強まっている。
為替への影響を考えるうえで重要なのは、財政政策の見通しだ。共和党が議会を維持すれば、減税や財政拡張への期待から米国債利回りが上昇し、ドル高につながりやすい。反対に、議会がねじれれば財政拡張への期待が後退し、米金利の低下を通じてドル売り・円買いが進む可能性がある。片山財務相も、選挙結果によって米金利とドルが下がり、円高につながる可能性に触れている。
選挙前は、どちらの結果にも備えて持ち高を軽くする動きが出やすい。本日のドル売りの一部も、こうした調整によるものと考えられる。158円には大口のオプションが設定されており、ドル円の上値を抑える一因となった。
結果の判明は日本時間4日の午前以降になる見込みだ。開票の途中経過によっては、東京市場が休場の3日夜から4日朝にかけて、薄い流動性のなかで大きく動く場面も想定しておきたい。
5.日本側:財務相の牽制と日銀12月利上げ観測
日本では、片山財務相が改めて為替市場の過度な変動に対応する用意があると述べ、米国と緊密に連携していく考えを示した。これは実際の介入を示すものではなく口先での牽制だが、158円台に近づく局面では円売りを慎重にさせる効果がある。
日銀については、先週30日の会合で政策金利が1.25%に据え置かれたものの、物価見通しの上方修正と高田委員の利上げ提案を受け、12月の追加利上げ観測が残っている。市場では、日銀とFRBがともに12月に利上げする確率を70%以上と見込んでいるとの見方もある。
この点は、ドル円にとって材料が相殺し合う構図を意味する。日米がそろって利上げすれば、金利差は大きく縮まらない。そのため、円が一方的に買われる展開にはなりにくい。日本側では今週発表される賃金統計が、日銀の判断を占う手がかりとして注目される。
日本の利上げは、住宅ローンの変動金利にも直結する。政策金利がさらに上がれば、借り換えや新規購入の判断、不動産価格にも影響が及ぶ。為替だけでなく、国内の家計や不動産市場への波及にも目を向けておきたい。
6.主要通貨ペア10組のファンダメンタル分析
以下は11月2日に報道で確認できた水準と材料をもとにした分析である。NY市場の終値は執筆時点で確定していないため、確認できていない通貨ペアは数値を避け、本日特有の材料と方向性を中心に整理する。
(1) ドル円(USD/JPY)
157.39円で始まり、一時158.00円まで上昇した。ドル安と円安が同時に進み、157円台後半での攻防となった。158円には大口のオプションと財務相の牽制があり、上値は重い。中間選挙で米金利が低下すれば157円割れ、ISMの強さが意識されれば158円台定着が焦点となる。
(2) ユーロドル(EUR/USD)
一時1.1237ドルまで上昇し、ドル安の恩恵を最も受けた通貨の一つとなった。フィッチがフランスの格付け見通しを「ネガティブ」に引き下げたにもかかわらず上昇した点は、今日の相場がユーロの材料よりもドル売りに主導されていたことを示している。欧州の景気改善が伴わない限り、上昇の持続力には慎重でいたい。
(3) ポンドドル(GBP/USD)
5日の英中銀会合で、政策金利を3.75%から4.00%へ引き上げることが確実視されている。利上げ自体は織り込み済みのため、焦点は12月の連続利上げを示唆するかどうかだ。ドル安が続けばポンドは底堅いが、利上げ後に材料出尽くしで売られる可能性にも注意したい。
(4) ユーロ円(EUR/JPY)
一時177.14円まで上昇した。ユーロドルの上昇と円安が重なったためだ。先週はリスク回避の円買いで上値が重かったが、原油安と株高で流れが変わった。フランスの財政不安と日銀の12月利上げ観測は、引き続き上値を抑える材料となる。
(5) ポンド円(GBP/JPY)
英中銀の利上げ期待と円安の組み合わせで、支えられやすい地合いが続く。ただし、5日の会合結果が予想どおりでも、声明がハト派的と受け止められれば利益確定の売りが出やすい。円側では中間選挙後の円高リスクを考慮したい。
(6) 豪ドル円(AUD/JPY)
週明けは買いが優勢となり、111円台に乗せた。豪州の消費者物価が前年比4.3%と予想を上回ったことで、3日の豪中銀会合では0.25ポイントの利上げが予想されている。利上げが織り込まれている分、焦点は声明のトーンにある。111円台前半には売り注文も観測されている。
(7) NZドル円(NZD/JPY)
NZドルは、原油安と株高によるリスク選好の回復が支援材料となった。ニュージーランド準備銀行は先週政策金利を据え置いており、自国の材料は乏しい。豪中銀の判断や中国経済の動向に連動しやすい点に注意したい。
(8) カナダドル円(CAD/JPY)
本日の原油6%安は、産油国通貨であるカナダドルにとって逆風となる。ドル安と円安でカナダドル円の下げは限定的になりやすいが、原油の急落が続けば資源国通貨の中で相対的に弱くなりやすい。原油相場と中東情勢の報道が最大の材料だ。
(9) スイスフラン円(CHF/JPY)
先週はAI関連株安で安全資産のフランが選好されたが、本日は株高で安全資産需要が後退した。円も同じく安全資産として売られたため、フラン円は方向感が出にくい。中間選挙後に株式市場が不安定になれば、再びフランと円の強さ比べとなる。
(10) 南アフリカランド円(ZAR/JPY)
リスク選好の回復とドル安は、新興国通貨のランドには追い風となる。金価格が1オンス3,900ドル台に上昇したことも、金産出国の通貨として支援材料だ。ただし、中間選挙後に米金利が上昇すれば資金流出の圧力がかかるため、高金利だけで判断しないことが重要だ。
7.今週の展望:イベントが集中する1週間
今週は重要な材料が続く。主な予定は以下のとおりである。
- 3日(火):豪中銀の政策金利発表、米中間選挙の投票(日本は文化の日で休場)
- 4日(水):中間選挙の開票結果が判明する見込み
- 5日(木):英中銀の政策金利発表と金融政策報告書
- 6日(金):米国の10月雇用統計
- 週内:日本の賃金統計
ドル円については、中間選挙の結果が最も大きな変動要因となる。米金利が低下する結果になれば157円割れ、財政拡張への期待が強まれば158円台への上昇が考えられる。週末の雇用統計で労働市場の強さが確認されれば、FRBの12月利上げ観測が強まり、ドルの下支えになる。
原油相場の行方も引き続き重要だ。中間選挙後に米国の対イラン姿勢が変われば、本日の原油安は一時的なものに終わる可能性がある。豪中銀と英中銀はいずれも利上げが予想されており、世界的に金融引き締めの流れが続いていることも意識しておきたい。
まとめ
11月2日の為替市場は、米・イラン外交への期待による原油急落を背景に、ドルが全面安となった。ドル指数は約1カ月ぶりの低水準をつけ、ユーロドルは1.12ドル台前半まで上昇した。一方、ドル円は株高による円売りに支えられ、158円手前まで上昇する底堅い動きとなった。
米ISM製造業景況指数は予想を上回ったが、価格指数は低下し、FRBの判断を大きく変える内容ではなかった。今週は中間選挙、豪英の中銀会合、雇用統計と材料が集中する。週明けの「ドル安・円安」という組み合わせが続くのか、それとも選挙後に流れが変わるのか。東京市場が休場となる3日の動きも含め、イベントごとの反応を丁寧に見極めたい。

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