【11月3日|ファンダメンタル分析レポート】豪中銀は18年ぶり高水準へ利上げも豪ドル安、米求人件数上振れでドル円158円台半ば——中間選挙の開票へ
1.本日の為替市場:様子見から一転、米求人件数でドル高
11月3日の為替市場は、日本が文化の日で休場となり、米国では中間選挙の投票日を迎えた。日中は結果待ちの様子見ムードが強く、ドル円は158円を挟んだ狭いレンジで推移した。豪中銀は予想どおり利上げしたが、その後の豪ドルはむしろ売られた。
流れが変わったのは日本時間24時だ。米国の9月求人件数(JOLTS)が752.3万件と予想を大きく上回り、米国債利回りが上昇した。ドル円は158.49円まで上昇し、日本時間4日未明の時点で158円台半ばで推移している。
前日の2日は、原油の急落でドルが全面安となった。WTI原油は7%超下げて96ドル台で引け、7月以来の大幅な下落となった。3日はその反動で原油が98ドル台へ戻し、ドルにも買い戻しが入った。2日間で「ドル安」から「ドル高」へと材料が入れ替わった形だ。
ユーロドルは2日の高値1.1237ドルから1.118ドル台へ押し戻された。ドル指数も101.70を挟んで方向感を探る展開となり、選挙前の持ち高調整が続いている。
2.豪中銀は18年ぶりの高水準へ利上げ、それでも豪ドルは下落
豪中銀(RBA)は3日、政策金利を0.25ポイント引き上げて4.85%とした。今年5回目の利上げで、2008年後半以来、約18年ぶりの高水準となる。中東情勢による原油高と、目標を上回るインフレが理由に挙げられた。
ただし、決定は全会一致ではなかった。9人の委員のうち3人が4.60%での据え置きを主張し、6対3の賛成多数での決定だった。さらに声明から追加利上げを示唆する文言が外れたことで、市場は「利上げはひとまず打ち止めに近い」と受け止めた。豪ドル米ドルは発表後に0.6974ドルまで下げ、約2週間ぶりの安値をつけた。
ブロック総裁は会見で、文言を外したことは利上げ終了を意味せず、選択肢を残しているのだと強調した。インフレ見通しも上方修正されており、タカ派的な要素は残っている。それでも、市場は利上げそのものよりも「次の一手」に反応した。
これは日銀を考えるうえでも示唆に富む。政策金利の水準より、今後の道筋がどう示されるかが通貨を動かす。豪中銀の次回会合は12月8日で、据え置きの見方が強まっている。
3.米中間選挙:投票日の市場の構えと結果シナリオ
中間選挙では下院の全435議席と上院の35議席が改選される。投票は日本時間3日夜から始まり、最初の投票所が閉まるのは日本時間4日の朝8時だ。結果の大半は、4日の東京・欧州時間に判明する見込みである。
予測市場では、民主党が下院で勝利する確率を9割強、上院でも過半数を取る確率をおよそ3分の2と見込んでいた(10月下旬時点)。市場は「民主党の上下両院制覇」をある程度織り込んでいるといえる。
オプション市場では、投票日当日よりも開票から週末の雇用統計までの期間に警戒感が集中している。株価の変動率を示すVIX指数は21台に上昇した。開票の行方と雇用統計が重なる今週後半に、大きな値動きが起きやすいとみられている。
為替の観点では、次のようなシナリオが考えられる。
- 民主党が上下両院を制覇:財政拡張への期待が後退し、米金利低下を通じてドル売り・円買いが出やすい。ただし織り込みが進んでいる分、反応は限定的になる可能性がある。
- 議会がねじれ(下院民主・上院共和):予測市場では3割程度の確率とされ、政策の停滞が意識される。方向感は出にくい。
- 共和党が両院を維持:想定外の結果となり、減税・財政拡張への期待からドル高・金利上昇が起きやすい。
いずれの場合も、選挙結果そのものより、米国債利回りがどちらに動くかがドル円の方向を決めると考えたい。
4.米求人件数の上振れで米金利上昇、原油も反発
日本時間24時に発表された米国の9月求人件数は752.3万件となり、予想の715万件前後を大きく上回った。5月以来の高水準で、8月分も上方修正された。自主的に離職する人の割合も2.1%に上昇しており、働き手が転職に自信を持てるほど労働市場が堅調であることを示している。同時に発表された9月の製造業受注も前月比1.8%増と予想を上回った。
この結果を受けて米国債利回りは上げ幅を広げ、ドル円は158円台半ばへ上昇した。9月の雇用統計では非農業部門雇用者数が小幅な増加にとどまっていたため、労働市場の減速を警戒する声もあった。今回の求人件数は、その見方を和らげる内容だった。FRBが12月に利上げを検討するうえで、材料の一つになりうる。
原油はWTIで98ドル台へ反発した。2日の急落は外交交渉への期待によるものだったが、カタールはイランと米国の双方が交渉の意思を示していると伝える一方で、具体的な合意には至っていない。原油高はインフレ懸念を通じて米金利を押し上げやすく、ドルの下支えとなる。
2日に「原油安・ドル安」、3日に「原油反発・ドル高」と、原油とドルが同じ方向に動いている点に注目したい。中東情勢の報道一つで為替が振れやすい地合いが続いている。
5.日本側:祝日の薄商いと200日線、介入警戒
東京市場が休場だったため、3日のアジア時間は取引参加者が少なく、ドル円は158円近辺で小動きにとどまった。日本の金融政策に関する新しい材料はなかった。
ドル円が158円台半ばへ上昇したことで、テクニカル面の節目が近づいている。200日移動平均線は158.60円付近にあり、ここを上抜けられるかが短期的な焦点だ。一方で、片山財務相は前日にも過度な変動への対応を示唆しており、159円に近づくほど介入への警戒感が強まりやすい。
日銀については、12月と2027年3月にそれぞれ利上げし、政策金利を1.75%まで引き上げるとの見方が多い。ただし、FRBも12月の利上げが意識されており、日米ともに引き締め方向にあるため、金利差の縮小は限られる。日本の賃金統計が出る今週後半まで、円独自の材料は乏しい状態が続きそうだ。
不動産の観点では、今回の豪中銀の利上げが参考になる。豪州では今年1ポイントの利上げで、変動金利の住宅ローン返済額が大きく増えた。日本でも政策金利が1.75%に向かえば、変動金利の借り手にとって負担増は避けられない。為替の円高・円安だけでなく、国内金利の上昇ペースにも目を配りたい。
6.主要通貨ペア10組のファンダメンタル分析
以下は11月3日に報道で確認できた水準と材料をもとにした分析である。NY市場の終値は執筆時点で確定していないため、確認できていない通貨ペアは数値を避け、本日特有の材料と方向性を中心に整理する。
(1) ドル円(USD/JPY)
アジア時間は158円近辺で小動きだったが、米求人件数の上振れを受けて158.49円まで上昇した。158.60円付近の200日線が次の節目となる。開票結果で米金利が下がれば157円台への押し戻し、上振れが続けば159円方向が意識されるが、上値では介入警戒が強まる。
(2) ユーロドル(EUR/USD)
2日の高値1.1237ドルから1.118ドル台へ反落した。原油の反発と米指標の上振れでドルが買い戻されたためだ。フランスとドイツの国債利回り差が広がっており、欧州の財政リスクがユーロの上値を抑える構図は変わっていない。
(3) ポンドドル(GBP/USD)
1.34ドル台前半で推移した。5日の英中銀会合での利上げは織り込み済みで、焦点は12月の連続利上げの可能性に移っている。豪中銀のように声明が慎重と受け止められれば、利上げ後にポンドが売られる展開も考えられる。
(4) ユーロ円(EUR/JPY)
NY時間朝の時点で176円台後半で推移した。ドル円の上昇が支えとなる一方、ユーロドルの反落が重しとなり、方向感が出にくい。欧州の財政不安と日銀の利上げ観測が上値を抑える材料として残る。
(5) ポンド円(GBP/JPY)
ポンドドルの底堅さとドル円の上昇が重なり、底堅い推移が続きやすい。ただし5日の英中銀会合の結果次第では、材料出尽くしの売りが出る可能性に注意したい。
(6) 豪ドル円(AUD/JPY)
豪中銀が政策金利を4.85%へ引き上げたが、6対3の賛否と声明の変化が慎重と受け止められ、豪ドルは売られた。豪ドル米ドルは約2週間ぶりの安値をつけている。豪ドル円はドル円の上昇で下げが和らいでいるものの、利上げ打ち止め観測が上値を抑えやすい。
(7) NZドル円(NZD/JPY)
豪ドルの下落につられやすい。NZ側の独自材料は乏しく、豪中銀の判断と世界的なリスク選好の動きを映しやすい。中間選挙後の株式市場の反応が当面の材料となる。
(8) カナダドル円(CAD/JPY)
原油が98ドル台へ反発したことは、前日に売られたカナダドルにとって支えとなる。ドル円の上昇も追い風だ。ただし中東情勢の報道で原油が上下に振れやすく、カナダドルもその影響を受けやすい。
(9) スイスフラン円(CHF/JPY)
スイスでは本日10月の消費者物価が発表された。安全資産需要は選挙待ちで目立った動きはなく、フラン円は方向感に乏しい。選挙後に株式市場が不安定になれば、フランと円の強さ比べとなる。
(10) 南アフリカランド円(ZAR/JPY)
金価格は1オンス3,900ドル台前半で上値が重く、ランドへの追い風は一服した。米金利の上昇は新興国通貨にとって逆風となる。選挙結果で米金利が大きく動けば、ランドも振れやすい点に注意したい。
7.今後の展望:開票、英中銀、雇用統計が続く
今週後半は材料が集中する。主な予定は以下のとおりである。
- 4日(水)朝8時以降:中間選挙の開票。東京・欧州時間に大勢が判明する見込み
- 5日(木):英中銀の政策金利発表と金融政策報告書
- 6日(金):米国の10月雇用統計
- 週内:日本の賃金統計
ドル円は、求人件数の上振れで158円台半ばまで上昇した状態で開票を迎える。米金利が上昇した直後のため、民主党の勝利で金利が低下すれば、その分の巻き戻しが起きやすい。反対に、共和党が予想以上に健闘すれば、200日線を上抜けて159円方向を試す可能性がある。
開票後は、市場の関心が再び経済指標に戻る。6日の雇用統計で求人件数と同様に労働市場の強さが確認されれば、FRBの12月利上げ観測が一段と強まり、ドルの支えとなる。英中銀については、豪中銀と同様に「利上げ後の声明」が通貨の方向を決めると考えたい。
まとめ
11月3日の為替市場は、東京休場と米中間選挙の投票日が重なり、日中は様子見ムードが続いた。豪中銀は政策金利を18年ぶりの高水準となる4.85%へ引き上げたが、賛否が割れたことと声明の変化から、豪ドルはかえって売られた。
夜には米求人件数が予想を大きく上回り、米金利の上昇とともにドル円は158円台半ばへ上昇した。前日の原油急落によるドル安は一日で巻き戻された格好だ。開票を前に、ドル円は200日線の手前まで来ている。選挙結果が米金利をどちらへ動かすのか。結果そのものより、金利の反応を冷静に見極めたい。

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