【10月6日|ファンダメンタル分析レポート】ドル円158円台、日銀は追加利上げ姿勢を維持――「10月利上げ見送り」と「金融正常化」は別問題

【10月6日|ファンダメンタル分析レポート】ドル円158円台、日銀は追加利上げ姿勢を維持――「10月利上げ見送り」と「金融正常化」は別問題

10月6日の為替市場では、ドル円が157円台後半から158円台前半で底堅く推移しました。

前週末の米雇用統計では、9月の非農業部門雇用者数が2万9000人増と市場予想を大幅に下回り、失業率も4.2%へ上昇しました。

この結果だけを見れば、FRBの追加利上げ観測が後退し、ドル円には下落圧力がかかっても不思議ではありません。

しかし実際には、ドル円は156円台後半まで下落した後、週明けに158円台へ戻し、10月6日も158円台を維持しました。

その背景には、米国のインフレ圧力が完全には収まっていないこと、米長期金利が高止まりしていること、そして日本では日銀の10月利上げに慎重な見方が一部で広がったことがあります。

さらに6日は、植田日銀総裁が全国証券大会で金融政策について発言。

基調的な物価上昇率が2%に近づいていることを確認しながら、「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していく」方向性を示しました。

つまり現在の円相場では、「日銀が10月に利上げするか」と「日銀が今後も利上げを続けるか」を分けて考える必要があります。

10月6日は、この違いがはっきり表れた一日でした。

1.ドル円は157円77銭から158円25銭へ

10月6日の東京市場でドル円は、157円77銭を安値に上昇しました。

15時時点では158円07銭。東京時間の高値は158円22銭でした。

前日のニューヨーク市場終値は157円91銭前後だったため、東京市場ではドル高・円安方向へ小幅に動いたことになります。

その後、海外市場でもドル円は158円台前半を維持し、21時20分時点では158円17銭、当日の高値は158円25銭となっています。安値は157円77銭でした。

前週末の米雇用統計後に156円95銭前後まで下落したことを考えると、ドル円は短期間で1円以上戻したことになります。

この反発を単純なドル買いと見るのは適切ではありません。

むしろ、

「米雇用統計は弱かった」
「しかし米インフレ圧力は残っている」
「米金利は高い」
「日銀も追加利上げには慎重な部分がある」

という複数の要因が重なり、ドル円の下落を抑えていると考える方が自然です。

2.10月利上げには慎重、しかし日銀の利上げ路線は変わらない

10月6日の東京市場でドル円が上昇した大きな要因が、日銀の10月会合に関する観測報道でした。

一部報道では、10月の日銀会合で政策金利を追加利上げすることについて、現時点では慎重な見方が多いと伝わりました。

9月に政策金利を1.25%へ引き上げたばかりであるため、日銀としてはその効果を見極める時間を置きたいとの考えが背景にあります。

この報道を受け、ドル円は一時158円22銭まで上昇しました。

ただし、ここで重要なのは「10月に利上げしない可能性が高まった」ことと「日銀が利上げ路線を放棄した」ことは全く違うという点です。

6日に植田総裁は、基調的な物価上昇率が2%に近づいていると指摘。

さらに、金融環境は9月の利上げ後も緩和的であり、経済・物価情勢に応じて政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくとの考えを示しました。

これは市場にとって重要なメッセージです。

短期的には10月利上げの可能性が後退しても、中期的には追加利上げが十分に選択肢として残っています。

そのため、ドル円が158円台から160円方向へ上昇した場合、日銀の金融正常化観測が円の上値を抑える要因になりやすいでしょう。

3.植田総裁が強調した「2%への定着」

6日の植田総裁発言で最も重要だったのは、物価の「水準」よりも「基調的な上昇率」を重視する姿勢です。

植田総裁は、基調的な物価上昇率を2%程度で安定させることが、これまで以上に重要になっていると説明しました。

背景には、原材料価格の上昇、AI関連需要の拡大、円安、地政学的要因などがあります。

日銀にとって、現在の物価上昇は単純な一時的要因だけではありません。

賃金上昇や企業の価格設定行動、サービス価格などを通じて基調的なインフレが続けば、政策金利を現在の1.25%に据え置き続ける理由は弱くなります。

一方、急速な利上げを行えば国内需要を冷やしすぎる可能性があります。

そのため日銀は、利上げを続ける方向性を示しながら、実際のタイミングについては経済・物価・金融情勢を見ながら慎重に決めるという姿勢を取っています。

この「方向性はタカ派、タイミングは慎重」という組み合わせが、現在の円相場を非常に難しくしています。

4.10月の日銀会合は「見送り」でも円安材料とは限らない

市場では10月の追加利上げ観測が後退しています。

ロイターによると、日銀内では9月に利上げした直後ということもあり、10月に連続して利上げすることには慎重な見方がある一方、12月以降の追加利上げを意識する見方が強まっています。

これはドル円にとって重要なポイントです。

仮に10月30日の会合で利上げが見送られたとしても、

「日銀は利上げをやめた」

という意味にはなりません。

むしろ、

「10月は様子を見る」
↓
「物価・賃金・景気を確認」
↓
「その後に追加利上げ」

というシナリオが市場に残ることになります。

そのため、ドル円が160円へ向かう局面では、日銀の次回利上げ時期が前倒しされるとの見方が強まり、円買いが入りやすくなる可能性があります。

この点からも、160円は単なる心理的節目ではありません。

日本の金融政策と為替政策の両面で意識される水準になっています。

5.米10年債利回りは5.32%台まで上昇

ドル円を支えたもう一つの材料が米長期金利です。

10月6日の東京市場では、米10年債利回りが一時5.32%台まで上昇しました。

これによりドル円は157円77銭付近から158円22銭まで上昇しています。

前週末の米雇用統計が弱かったため、本来なら米金利には低下圧力がかかりやすい状況でした。

しかし、米国のインフレ圧力が残っていることで、FRBがすぐに大幅な金融緩和へ転じるとの見方は強まっていません。

前日に発表された9月ISM非製造業景況指数は54.9と市場予想をやや下回ったものの、仕入れ価格指数は74.0と大幅に上昇しました。

つまり米国経済は減速しつつも、価格上昇圧力が残っています。

FRBにとっては、

景気減速なら利下げしたい
↓
しかしインフレが強ければ利下げしにくい

という難しい状況です。

このため米長期金利が簡単には低下せず、ドル円も下げ止まりやすくなっています。

6.FOMC議事要旨を前に、ドル買いは慎重

10月6日の市場では、翌7日に公表される9月FOMC議事要旨が大きな焦点となりました。

9月FOMCでは政策金利が3.75~4.00%へ引き上げられています。

ところが、その後に発表された9月雇用統計は非常に弱い内容でした。

そのため市場では、

「FOMCは雇用統計発表前にどこまでインフレを警戒していたのか」
「追加利上げを支持するメンバーはどの程度いたのか」
「利上げ継続に慎重なメンバーはどの程度いたのか」

が注目されています。

ロイター系の市場分析では、10月利上げの確率は低下した一方、12月の利上げ確率は依然として高い状態です。10月6日時点では10月利上げ確率が約22%、12月については約86%とされています。

議事要旨で追加利上げへの支持が広かったことが確認されれば、米金利上昇とドル買いにつながる可能性があります。

反対に、内部で意見の相違が大きかったことが明らかになれば、ドルの上値を抑える材料になります。

10月6日のドル円が158円台で伸び悩んだ背景には、このイベントを前に積極的なポジションを取りにくい事情もありました。

7.米8月貿易赤字は1056億ドルへ拡大

ニューヨーク時間には米8月貿易収支が発表されました。

赤字額は1056億ドル。

市場予想の1020億ドルを上回り、7月の928億ドルから大幅に拡大しました。

貿易赤字の拡大は、単純にドル買い材料とは言えません。

輸入が増えれば米国の国内需要の強さを反映する側面がある一方、海外への資金流出や成長率への影響という面ではドルの重石になります。

今回も、指標発表前には雇用関連の材料を受けてドル円が158円22銭まで上昇しましたが、貿易赤字が予想以上に拡大したことでドルはやや反落しました。

ドル円は158円00銭付近から158円08銭前後へ戻しています。

ただし、為替市場全体を動かすほどの材料にはなりませんでした。

現在は貿易収支そのものより、FOMC議事要旨とFRB高官の発言の方が市場に与える影響は大きいと考えられます。

8.ユーロドルは1.12ドル台へ反発

10月5日に大きく売られたユーロは、6日に反発しました。

ユーロドルは前日に1.116ドルまで下落し、約17カ月ぶりの安値をつけました。

しかし6日にはフランス国債利回りが低下したことで財政不安が一服し、ユーロドルは1.1252ドルまで上昇しました。

フランス10年国債利回りは8bp低下して4.7824%となりました。

前日に急拡大していたフランスとドイツの国債利回り差が縮小したこともユーロの買い戻しにつながっています。

また、原油価格が下落したことも欧州債券市場を支えました。

中東からの原油供給が改善するとの見方が広がり、原油価格が低下。

エネルギー価格上昇によるインフレ懸念がやや後退したことで、欧州の長期金利にも低下圧力がかかりました。

ユーロはまだフランスの財政問題や政治不透明感を抱えているため、本格的なユーロ高へ転換したと判断するのは早いでしょう。

ただし、1.116ドル付近で下げ止まったことで、短期的には売られ過ぎの修正が入りやすくなっています。

9.ユーロ円は177円から178円台へ

ユーロ円は10月6日、177円03銭から178円33銭のレンジで推移しました。

21時20分時点では178円28銭となり、前日比で1円以上のユーロ高・円安となっています。

これはユーロドルの反発とドル円の底堅さが重なった結果です。

前日にユーロ円は176円台まで下落していたため、6日の動きは急落後の反発として見ることもできます。

ただしフランスの財政問題そのものが解決したわけではありません。

欧州の財政状況が再び悪化すればユーロ円にも下落圧力がかかるため、178円台後半から180円付近では慎重な値動きになりやすいでしょう。

10.主要クロス円は円安方向へ

10月6日21時20分時点の市場レートでは、主要通貨は次のような水準でした。

  • ドル円:158.17円
  • ユーロ円:178.28円
  • ポンド円:210.01円
  • 豪ドル円:110.45円
  • NZドル円:88.84円
  • カナダドル円:111.00円
  • スイスフラン円:190.43円
  • 南アランド円:9.59円

ドル円は前日比27銭高、ユーロ円は1円10銭高、ポンド円は1円29銭高、豪ドル円は46銭高でした。

特にポンド円は210円台まで戻しています。

ポンドは対ドルでも底堅く推移しており、円売りとポンド買いが重なった形です。

豪ドル円は110円台前半、NZドル円は88円台後半まで戻しました。

これらの通貨はリスク選好が強まる局面で買われやすいため、世界的な株高と米金利の高止まりがクロス円を支えました。

11.株高と円安が同時に進んだ理由

10月6日は世界の株式市場が堅調でした。

米国株ではS&P500が8月中旬以来初めて最高値を更新する場面があり、ナスダックも高値を更新しました。

世界株高の背景には、原油価格の下落と債券利回りの低下があります。前週に高まっていたフランス財政問題への警戒もやや後退しました。

通常、米金利低下はドル円の下落要因です。

しかし今回は米金利が完全に低下トレンドへ転じたわけではなく、5.3%近辺の高水準を維持しています。

そのため株式市場のリスク選好とドル円の底堅さが同時に発生しました。

ただし、この状態が長続きするかは米金利次第です。

FRBが追加利上げを見送るとの見方が急速に広がり、米10年債利回りが5%を大きく割り込むようなら、ドル円は再び156~157円方向へ下落する可能性があります。

12.158円50銭が依然として重要な上値

10月6日のドル円は高値158円25銭。

前日の高値158円30銭にも届きませんでした。

つまり、158円台前半までは買われても、その上では売りが出ています。

前日まで意識されていた200日移動平均線は158円50銭前後に位置しており、現在のドル円にとって最初の大きな上値抵抗になっています。

今後、

158円30銭突破
↓
158円50銭突破
↓
159円台

という流れを形成できるかが重要です。

158円50銭を明確に超えれば、次は159円、さらに160円が意識されます。

ただし159~160円では日本政府・日銀による円安けん制や為替介入への警戒感が強まります。

一方、157円を割り込めば、156円台後半、さらに156円前後が次の下値候補です。

現時点では157~158円50銭が短期的な攻防ラインになっていると考えられます。

13.日銀とFRB、どちらが先に動くのか

現在のドル円を考えるうえで、最も重要なのは日米中央銀行の政策方向です。

FRBは9月に利上げしましたが、10月の追加利上げ観測は後退しています。

一方の日銀は9月に利上げし、10月の追加利上げには慎重ながらも、今後も政策金利を引き上げる姿勢を維持しています。

つまり、

FRB=追加利上げを急がない方向

日銀=追加利上げを続ける方向

という組み合わせになりつつあります。

この差が明確になれば、日米金利差の縮小から円高方向へ動く可能性があります。

しかし現時点では米国の金利水準が高いため、日銀が1回利上げしただけで日米金利差が急激に縮まるわけではありません。

したがって短期的にはドル円の上昇余地が残り、中期的には円高要因が徐々に蓄積しているという見方が妥当です。

14.10月7日はFOMC議事要旨が最大の焦点

10月7日の為替市場で最大の材料となるのが、9月FOMC議事要旨です。

今回の議事要旨は、弱い9月雇用統計が発表された後ではなく、その前に開催されたFOMCについての記録です。

したがって、市場が知りたいのは、

「FRBは当時、雇用市場をどの程度警戒していたのか」

「インフレ上昇リスクをどこまで重視していたのか」

「追加利上げを支持するメンバーはどれだけいたのか」

という点です。

市場では、10月利上げの確率が約22%まで低下している一方、12月利上げは約84~86%が織り込まれています。

議事要旨がタカ派的なら、10月利上げ観測が多少戻り、ドル円が158円50銭を試す可能性があります。

逆に、利上げに慎重な意見が多ければ米金利が低下し、ドル円が157円を割り込む展開も考えられます。

まとめ

10月6日の為替市場は、ドル円が157円77銭から158円25銭まで上昇し、158円台を維持しました。

前週末の米雇用統計が弱かったにもかかわらずドルが崩れなかった背景には、米長期金利の高止まりと、FRBがすぐに大幅な利下げへ向かうとは限らないとの見方があります。

一方、日本では植田日銀総裁が金融正常化を続ける姿勢を明確にしました。

基調的な物価上昇率が2%に近づいており、金融環境も依然として緩和的であることから、今後も経済・物価情勢に応じて政策金利を引き上げていく考えを示しています。

ただし、10月会合での連続利上げには慎重な見方が広がっています。

このため短期的には円売りが入りやすいものの、中期的には日銀の追加利上げが円を支える構図が残ります。

欧州ではフランスの財政問題への警戒がやや後退し、ユーロドルは1.116ドルの17カ月ぶり安値から1.125ドル台へ反発しました。ユーロ円も178円台まで戻しています。

米国では8月貿易赤字が1056億ドルへ拡大しましたが、為替市場への影響は限定的でした。

ここからのドル円で重要なのは、158円50銭を突破できるかどうかです。

突破できれば159円、さらに160円が視野に入ります。

しかし、157円を割り込めば156円台後半から156円付近が意識されるでしょう。

そして、その方向を決める最大の材料が米金利です。

10月7日のFOMC議事要旨でFRBの追加利上げ姿勢が確認されればドル買いが強まりやすく、逆に慎重な議論が多かったことが分かればドル円の上値は抑えられます。

現在の相場は、米国では「雇用の弱さ」と「インフレの粘着性」、日本では「10月利上げへの慎重姿勢」と「中期的な追加利上げ方針」がぶつかっています。

そのため、ドル円は単純なドル高・円安トレンドではありません。

158円台を維持できるか、それとも157円を割り込むか。

この攻防を見ながら、米長期金利と日米中央銀行の政策スタンスを追うことが、10月相場の方向性を判断するうえで最も重要になりそうです。

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