【11月4日|ファンダメンタル分析レポート】米中間選挙は民主党が上下両院を制覇、ドル円は157円台半ばまで急落後に158円台半ばへ——円は買われず、焦点は雇用統計へ

【11月4日|ファンダメンタル分析レポート】米中間選挙は民主党が上下両院を制覇、ドル円は157円台半ばまで急落後に158円台半ばへ——円は買われず、焦点は雇用統計へ

1.本日の為替市場:民主党圧勝でドル安・円高、その後は買い戻し

11月4日の為替市場は、米中間選挙の開票結果が最大の材料となった。東京時間の朝から民主党の優勢が伝わると、米長期金利が低下し、ドルが売られた。ドル円は前日の高値158.77円から一転し、東京時間に一時157円台半ばまで下落した。ドル指数も9月末以来の低水準をつけた。

日本株も大きく売られた。日経平均株価は一時3,000円超下落して6万円ちょうど付近まで値を下げ、終値は893円安の62,188円となった。ナスダック先物の下落につれて半導体などハイテク株が売られ、株安による円買いも重なった。

ただし、円高は長続きしなかった。民主党の勝利が確実になると「結果判明で不透明感が後退した」として、ドル円は欧州時間から買い戻された。NY時間には米ADP雇用統計が予想を上回ったこともあり、日本時間5日未明の時点で158円台半ばまで戻している。

ユーロドルは一時1.1273ドル、ポンドドルは1.3503ドルまで上昇した。ドル全体は売られたものの、円はそれ以上に売られたため、ドル円は結果的に前日の水準へ戻る一日となった。

2.中間選挙は民主党が上下両院を制覇、米金利低下でドル安

中間選挙では民主党が上下両院で過半数を獲得した。下院は218議席に達して過半数を確定させ、上院でも7議席を共和党から奪った。共和党が強い地盤とされてきた選挙区でも民主党が勝利しており、事前の予想を上回る大勝となった。来年1月からトランプ政権は「ねじれ議会」のもとで政権運営を迫られる。

市場の第一反応は「米金利低下・ドル安・株安」だった。予算の主導権を民主党が握ることで、大型の減税や財政拡張は通りにくくなる。国債の増発が抑えられるとの見方から、米10年債利回りは一時4.89%まで低下した。株式市場では、民主党がAIや大手IT企業への規制を強めるとの警戒から、ハイテク株が売られた。

ただ、この反応は一巡した。トランプ大統領は選挙結果を受け入れ、民主党と協力していく考えを示した。結果が明確になり、政治の不透明感が後退したことで、株式市場は欧州時間から持ち直した。10年債利回りも4.92%前後へ戻している。

民主党の勝利は事前にある程度織り込まれていたため、為替の反応は「勝利の大きさ」の分だけにとどまった。今後は、ねじれ議会のもとで予算や債務上限を巡る対立が強まるかどうかが、米金利とドルの中期的な材料となる。

3.ADP雇用は上振れ、ISM非製造業はやや減速

日本時間22時15分に発表された米国の10月ADP雇用統計は、民間部門の雇用者数が8.6万人増となり、予想の6.7万人増を上回った。同時に発表された9月の貿易赤字も予想外に縮小した。結果を受けてドル買いが優勢となり、ドル円は158.20円から158.47円まで上昇した。

一方、日本時間24時に発表された10月のISM非製造業景況指数は54.5と、予想の54.8と前月の54.9をいずれも下回った。新規受注や事業活動が鈍化し、3カ月ぶりの低い水準となった。ただし景気の拡大・縮小の分かれ目である50は大きく上回っており、サービス業の拡大は続いている。価格指数は73.0と前月から小幅に低下したものの、依然として高い水準にある。

前日の求人件数に続き、ADPも労働市場の底堅さを示した。ISM非製造業の減速は限定的で、物価上昇圧力も残っている。FRBが12月の利上げを判断するうえで、労働市場とインフレのどちらにも急いで引き締めをやめる理由は見当たらない状況だ。

週末6日の雇用統計が、今週の指標の総仕上げとなる。中間選挙の結果で米金利が下がった後だけに、雇用統計が強ければ金利とドルの戻りが一段と進む可能性がある。

4.原油と金:選挙後の中東情勢に警戒

WTI原油はアジア時間に96ドル台後半で推移し、NY時間に入ると下落した。選挙が終わったことで、トランプ大統領がイランに対してどのような姿勢を取るのかが次の焦点となっている。

選挙前には、選挙後に対イラン攻撃を再開するのではないかとの見方もあった。一方で、議会を民主党に握られたことで、大統領が強硬策を取りにくくなるとの見方もある。ある通貨ストラテジストは、大統領が中東での攻勢を強めれば原油が急騰し、ドルの支えになると指摘している。今回の選挙結果が外交姿勢をどう変えるのかは、まだ見極めが必要だ。

金価格は民主党の勝利を受けて時間外取引で1オンス4,034ドル付近まで急上昇し、4,000ドルの大台を回復した。米金利の低下と政治的な先行き不透明感が、金への資金流入を促した。

原油と米金利、ドルが同じ方向に動く地合いは今週も続いている。中東情勢の報道は、今後も為替を大きく動かす材料となる。

5.日本側:連休明けの株安と、円が売り戻される構図

祝日明けの東京市場は、選挙結果を受けた株安で始まった。日経平均株価は3日続落となり、一時は6万円の大台割れ寸前まで下げた。株安時には円が買われやすく、ドル円の下落を加速させた。

しかし、その後の動きを見ると、円の買いは長続きしなかった。ドルが売られた局面でも、ユーロ円やポンド円などクロス円では円売りが目立った。これは、円が積極的に買われる材料が乏しいことを示している。日銀の12月利上げ観測は残っているものの、FRBも利上げを検討しており、日米の金利差が大きく縮まる見通しにはなっていない。

ドル円の上値では、158.60円付近にある200日移動平均線が引き続き抵抗となっている。前日は158.77円まで上昇して一時的に上抜けたが、定着はできなかった。159円に近づくほど財務省の牽制や介入への警戒が強まりやすく、上値は重い。

不動産の観点では、米国の政治の変化が国内金利に与える影響にも目を向けたい。米長期金利が低下すれば、日本の長期金利の上昇圧力も和らぎやすい。固定金利型の住宅ローンの金利は長期金利に連動するため、米国の動きが間接的に国内の借入コストにも波及する。

6.主要通貨ペア10組のファンダメンタル分析

以下は11月4日に報道で確認できた水準と材料をもとにした分析である。NY市場の終値は執筆時点で確定していないため、確認できていない通貨ペアは数値を避け、本日特有の材料と方向性を中心に整理する。

(1) ドル円(USD/JPY)

開票速報で一時157円台半ばまで下落したが、欧州時間から買い戻され、ADP雇用統計の上振れを受けて158円台半ばへ戻した。選挙という大きな材料を通過しても方向が出ず、157円台半ばの買いと158.60円付近の200日線に挟まれた展開が続いている。

(2) ユーロドル(EUR/USD)

民主党の勝利によるドル売りで、一時1.1273ドルまで上昇した。ただし、ADP雇用統計の上振れ後は1.126ドル付近へ押し戻された。ユーロ自体の買い材料は乏しく、ドルの動きに連動する展開となっている。

(3) ポンドドル(GBP/USD)

ドル安を受けて一時1.3503ドルと1.35ドル台に乗せた。5日の英中銀会合で利上げが予想されており、それを前にポンドは底堅い。ただし、結果が出れば材料出尽くしとなりやすく、声明のトーンが重要になる。

(4) ユーロ円(EUR/JPY)

東京時間に177.82円まで上昇した後、ドル円の急落につれて177.10円台まで下落し、午後には177円台後半へ戻した。ドル売りと円売りが交互に表れ、上下に振れる一日となった。

(5) ポンド円(GBP/JPY)

開票速報の株安で一時212.23円付近まで下落した。その後は円売りとポンドの底堅さで持ち直している。5日の英中銀会合が直近の最大の材料だ。

(6) 豪ドル円(AUD/JPY)

株安を受けて一時109.75円付近まで下落した。前日の豪中銀が利上げ打ち止めに近い姿勢を示したことに加え、リスク回避の動きが重なった。株式市場の持ち直しとともに下げ渋っているが、上値は重くなりやすい。

(7) NZドル円(NZD/JPY)

開票速報で一時88.24円付近まで下落した。豪ドルと同様に株価の動きに連動しやすい。独自材料は乏しく、世界的なリスク選好の回復が続くかがカギとなる。

(8) カナダドル円(CAD/JPY)

NY時間の原油安がカナダドルの重しとなる。米国の政治の変化は、カナダとの通商関係にも影響しうるため、今後の議会の対応に注目したい。

(9) スイスフラン円(CHF/JPY)

開票速報で株安となった局面では、フランと円がともに安全資産として買われた。その後の株式市場の持ち直しで、円が売られる一方、フランは比較的底堅い。

(10) 南アフリカランド円(ZAR/JPY)

金価格が4,000ドルの大台を回復したことは、金産出国の通貨であるランドの支えとなる。米金利の低下も新興国通貨にとっては追い風だ。ただし、株安などリスク回避の局面では売られやすい点に注意したい。

7.今後の展望:英中銀と雇用統計

選挙を通過し、市場の関心は再び金融政策と経済指標に戻る。残りの主な予定は以下のとおりである。

  • 5日(木):英中銀の政策金利発表と金融政策報告書
  • 6日(金):米国の10月雇用統計
  • 週内:日本の賃金統計

英中銀は政策金利を3.75%から4.00%へ引き上げると予想されている。利上げそのものは織り込まれているため、豪中銀と同様に、声明や採決の内訳が「次の利上げ」をどう示すかでポンドの方向が決まりやすい。

ドル円については、6日の雇用統計が最大の焦点となる。求人件数とADPが底堅さを示したことで、雇用統計も堅調であればFRBの12月利上げ観測が強まり、200日線を上抜けて159円を試す展開が考えられる。反対に雇用統計が弱ければ、選挙後の米金利低下と重なり、157円台への下落も視野に入る。5日にはNYカットで157.00円に大口のオプションが観測されており、下値の目安として意識されやすい。

まとめ

11月4日の為替市場は、米中間選挙で民主党が上下両院を制したことを受け、米金利低下・ドル安・株安で始まった。ドル円は東京時間に157円台半ばまで下落し、日経平均株価も一時3,000円超下げた。

しかし、結果が確定して不透明感が後退すると、反応は早々に一巡した。円は積極的に買われず、ADP雇用統計の上振れも加わって、ドル円は158円台半ばへ戻った。選挙という大きなイベントを通過しても、ドル円は157円台半ばから158円台後半のレンジを抜けられていない。レンジを抜ける材料となるのは、政治よりも6日の雇用統計とFRBの金融政策だろう。

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