【10月2日|ファンダメンタル分析レポート】米雇用統計が示した「雇用減速」、ドル円は158円台から156円台へ

【10月2日|ファンダメンタル分析レポート】米雇用統計が示した「雇用減速」、ドル円は158円台から156円台へ

10月2日の為替市場は、日米双方の金融政策を意識した円買い・ドル売りが目立つ一日となりました。

東京時間では、9月の東京都区部消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回り、日銀の追加利上げ観測が意識されました。その後、夜には9月の米雇用統計が発表され、非農業部門雇用者数がわずか2万9000人増にとどまり、市場予想の約9万人増を大きく下回りました。

さらに失業率は4.2%へ上昇し、平均時給の伸びも鈍化。米10年債利回りが低下し、ドル円は一時156円台後半まで下落しました。

前日まで158円台を中心に推移していたドル円にとって、わずか1日で相場の焦点が「米金利上昇」から「米雇用の減速」へ移ったことは大きな変化です。

1.10月2日のドル円は158円22銭から156円95銭へ

10月2日の東京市場では、ドル円は158円台からスタートしました。

前日のニューヨーク市場終値は158円09銭前後。東京時間には一時158円22銭まで上昇しましたが、その後は上値が重くなりました。

朝方に発表された東京都区部CPIが円買い材料となったためです。

9月の東京都区部CPIは、生鮮食品を除くコア指数が前年同月比2.7%上昇。市場予想の2.4%前後を上回り、前月の1.8%から大きく加速しました。生鮮食品とエネルギーを除いた指数も3.0%上昇しています。

この数字は、全国CPIに先行する東京都の物価環境が再び強まっていることを示すものです。

すでに日銀は9月18日に政策金利を1.25%へ引き上げています。

そのため、今回の東京CPIは「次の利上げを急ぐ必要があるのか」という市場の議論につながりやすい材料でした。

実際、東京時間にはドル円が一時157円79銭まで下落しています。

午後になると米長期金利の低下もドル売りを後押ししました。

17時時点のドル円は157円57~59銭付近。東京時間の高値158円22銭から見ると、約65銭下の水準です。市場では日米協調介入への警戒感も残っており、158円台ではドル買いが伸びにくい状況となりました。

そして本当の値動きはニューヨーク時間に待っていました。

2.米雇用統計が予想を大幅に下回る

日本時間21時30分に発表された9月の米雇用統計は、今回最大の材料でした。

非農業部門雇用者数は前月比2万9000人増。

市場予想はおよそ9万人増だったため、大幅な下振れです。

さらに8月分は16万2000人増から13万3000人増へ下方修正。7月分も2万1000人増から1万人減へ下方修正されました。

7月と8月を合わせた過去2カ月の雇用者数は、従来発表から合計6万人下方修正されています。

失業率も4.1%から4.2%へ上昇しました。

そして市場が注目する平均時給は前月比0.1%増、前年比3.0%増。

市場予想は前月比0.3%、前年比3.1%だったため、賃金の伸びも予想を下回っています。

この結果を単純に整理すると、

「雇用者数が弱い」
「失業率が上昇」
「賃金の伸びも鈍化」

という3つの材料が同時に出たことになります。

FRBにとっては、インフレだけを警戒して利上げを続けることが難しくなる内容です。

3.ただし「米雇用が急失速」と決めつけるのは早い

今回の雇用統計は非常に弱い数字でした。

ただし、これだけで米国の労働市場全体が急速に悪化していると判断するのは慎重である必要があります。

米労働省によると、9月は主要産業の雇用が全体として大きく変化しておらず、医療は1万7000人増、建設は1万1000人増、製造業は9000人増でした。一方、金融関連は7000人減となっています。

また、直近の新規失業保険申請件数は19万7000件と低水準で、57年ぶりの低水準に近い状態でした。継続受給者数も170万1000人へ減少しています。

つまり、雇用統計そのものは弱いものの、失業者が急増している状況とはまだ距離があります。

ロイターも、今回の雇用統計にはレーバーデーの時期など季節調整の影響がある可能性を指摘しています。広範囲な解雇増加を示す材料が確認されているわけではありません。

したがって、今回の数字を「米景気後退の決定打」と見るよりも、

「労働市場がFRBの追加利上げを正当化するほど強くない」

という点が、為替市場にとってはより重要でしょう。

4.FRBの10月利上げ観測は後退

今回の雇用統計で最も大きく変化したのが、FRBの金融政策に対する市場の見方です。

9月のFOMCでは政策金利が3.75~4.00%へ引き上げられました。

これは3年ぶりの利上げでした。

当時の市場では、インフレが再び強まる場合、年内にもう一段の利上げが行われる可能性が意識されていました。

しかし、9月雇用統計は追加利上げを急ぐ必要性を弱める内容です。

ロイターによると、雇用統計発表後、市場では10月会合での追加利上げ観測が後退し、10月の利上げ確率は20%未満まで低下しました。一方で、12月の利上げについては依然として高い確率が織り込まれているとされています。

ここはドル円を見るうえで非常に重要です。

ドル円が158円台まで上昇していた背景には、米10年債利回りが5%台前半まで上昇し、日米金利差が改めて意識されていたことがあります。

しかし米雇用が弱くなれば、FRBの追加利上げ期待が後退し、米国債利回りにも低下圧力がかかります。

実際、米10年債利回りは雇用統計後に5.15%台まで低下しました。

金利低下とドル売りが連動し、ドル円は一時156円95銭まで下落しました。

5.ドル円は156円台まで下落、ただし157円台へ戻す

雇用統計発表直後、ドル円は157円台半ばから156円95銭まで下落しました。

その後はドル買い戻しも入り、22時46分時点では157円55銭前後まで戻しています。

ここから見えてくるのは、156円台後半に一定の買い需要があることです。

158円台では売りが出やすい。

一方で157円を割り込むと、短時間でドルを買い戻す動きも出る。

つまり、現在のドル円は一方向に走り続ける相場ではなく、米金利と日銀政策、さらに為替介入への警戒を同時に織り込みながら上下する段階に入っています。

10月2日の値動きでは、

高値:158円22銭
安値:156円95銭前後

となり、1円を超える値幅となりました。

今後の短期的なポイントとしては、まず157円を維持できるかが焦点になります。

157円を明確に割り込めば、156円台前半、さらに155円台が意識される可能性があります。

逆に157円台を維持し、米長期金利が再び上昇する場合には158円台への戻りも考えられます。

ただし158円後半から159円、160円に近づくほど、これまで同様に日本政府・日銀による円安への対応が意識されやすくなります。

6.ユーロ円は177円台へ

ユーロ円も円買いの影響を受けました。

東京時間17時時点では177円45銭前後。

この日の東京市場では177円37銭から177円91銭の範囲で推移し、ドル円同様に方向感の定まりにくい展開でした。

ニューヨーク時間ではドル円の下落を受け、一時176円62銭まで下落しました。

ただし、ユーロドルが1.1260ドル台へ反発したことで、ユーロ円も177円近辺へ戻しています。

ユーロについては米国の金利だけでなく、フランスの財政問題も重石となっています。

そのため、今後のユーロ円では「円高」だけでなく「ユーロそのものの弱さ」も確認する必要があります。

7.クロス円も全体的に上値が重い

10月2日の東京時間に確認された主要クロス円は、おおむね以下の水準でした。

  • ドル円:157円50~158円20台
  • ユーロ円:177円30~177円90台
  • ポンド円:208円台
  • 豪ドル円:109円台
  • NZドル円:88円台
  • カナダドル円:110~111円台
  • スイスフラン円:190円前後
  • 南アランド円:9円台半ば
  • メキシコペソ円:8円台後半

午前中の参考値では、ドル円158.07円、ユーロ円177.66円、ポンド円208.52円、豪ドル円109.81円、NZドル円88.93円、カナダドル円111.09円、スイスフラン円189.44円、南アランド円9.46円、メキシコペソ円8.63円などが確認されています。

なかでも豪ドル円は、10月1日の終値109円57銭に対して、2日東京時間では109円台を中心に推移しました。ポンド円は208円台、カナダドル円は111円前後が中心となっています。

クロス円を見る際には、単純な円相場だけでなく各国の金融政策も必要です。

豪ドル円なら豪州のインフレとRBA、NZドル円ならニュージーランドの景気とRBNZ、カナダドル円なら原油価格とカナダ中銀の政策が材料になります。

今回のように米雇用統計をきっかけに世界的な金利低下が起きる場合、高金利通貨に対する円売り圧力も弱まりやすくなります。

8.今回の米雇用統計で「ドル高の前提」が少し変わった

9月末から10月初めにかけての為替市場では、米10年債利回りが5.3%台まで上昇する場面があり、ドル円は158円台へ上昇しました。

そこでは、

「米国金利が高い」
↓
「ドルを保有する魅力が高い」
↓
「ドル円が上昇する」

という流れが形成されていました。

しかし10月2日の雇用統計は、このシナリオに修正を迫る内容でした。

雇用者数が2万9000人増にとどまり、過去分も下方修正され、失業率は4.2%、平均時給の前年比も3.0%へ鈍化。

これによって「FRBが10月にも追加利上げを行う」という見方は弱まりました。

もちろん、米国のインフレ率が完全に落ち着いたわけではありません。

原油価格や地政学情勢によるインフレリスクも残っています。

そのため、今回の雇用統計だけでFRBが年内の利上げを完全に放棄したと考えるのは早いでしょう。

むしろ今後は、雇用とインフレのどちらをFRBがより重視するのかを確認する局面に入ります。

9.日本では東京CPIが日銀の追加利上げ材料に

一方、日本側では円高材料が増えています。

9月の東京都区部コアCPIは2.7%。

前月の1.8%から大きく上昇し、市場予想も上回りました。

日銀がすでに1.25%まで政策金利を引き上げたことを考えると、今後の焦点は「次の利上げがあるか」だけではありません。

「次の利上げがいつなのか」
「どの程度のペースになるのか」
「物価上昇が一時的なのか、基調的なのか」

この3点が重要です。

特にドル円が158~160円に接近する局面では、日米金利差だけでなく日本側の政策対応も強く意識されます。

したがって、米雇用統計が弱かったことによるドル売りと、東京CPIを受けた円買いが重なると、ドル円には二重の下押し圧力がかかる可能性があります。

10.10月相場は「金利差」だけでは説明できない

10月に入って為替市場の構造は少し変化しています。

9月までは米国の長期金利上昇がドル円を押し上げる力として非常に強く働きました。

ところが10月2日には、

日本の物価上昇
↓
日銀追加利上げ観測

米雇用の鈍化
↓
FRB追加利上げ観測後退
↓
米長期金利低下

という両方向から円高要因が生まれています。

ここに為替介入への警戒が加わります。

この3つが重なると、158~160円を簡単に上抜けるのは難しくなる一方、米金利が再び上昇すればドル円が急反発する余地も残ります。

つまり、10月のドル円は「ドル高トレンドが終わった」と判断する段階でも、「160円方向へ一直線」と見る段階でもありません。

米金利と日銀政策の変化をその都度確認する必要があります。

11.10月3日以降に注目したいポイント

週末を挟んだ来週の為替市場では、今回の米雇用統計をFRBがどのように評価するのかが重要になります。

特に確認したいのは以下の4点です。

第一に、米10年債利回りです。

今回の雇用統計後には5.15%台まで低下しました。ここから5%を割り込む方向へ向かうのか、それとも再び5.2%台へ戻るのかによってドル円の方向性は大きく変わります。

第二に、米雇用統計の弱さが一時的なのかどうかです。

季節調整要因が指摘されているため、次回以降の雇用関連指標も合わせて確認する必要があります。

第三に、日本の物価動向です。

東京CPIが2.7%まで上昇したことで、今後発表される全国CPIでも基調的な物価上昇が確認されれば、日銀の追加利上げ観測がさらに強まる可能性があります。

第四に、158~160円付近での政府・日銀の対応です。

これまでにも円安が急速に進む局面では、為替市場へのけん制や介入警戒が相場を大きく動かしてきました。

したがって、ドル円が再び159円、160円へ向かう場合には、金利差だけでなく政策当局の発言にも注意が必要です。

まとめ

10月2日の為替市場は、9月末まで続いていた「米金利上昇=ドル高」という流れに変化が出た一日でした。

東京時間では9月東京都区部CPIが2.7%まで上昇し、日銀の追加利上げ観測から円買いが優勢となりました。

その後、米雇用統計では非農業部門雇用者数が2万9000人増と市場予想を大きく下回り、失業率は4.2%、平均時給の前年比は3.0%へ鈍化しました。

これを受けて米10年債利回りが低下し、ドル円は158円22銭から一時156円95銭まで下落。

その後157円台へ戻したものの、158円台では上値の重さが確認されています。

今後のドル円を見るうえでは、157円が短期的な分岐点になりそうです。

157円を維持できれば158円台への再上昇余地が残りますが、156円台を明確に割り込む展開になれば、155円台が次の下値候補として意識されます。

一方で、米雇用統計が弱かったとはいえ、米国の労働市場全体が急速に崩れていると判断するにはまだ材料が不足しています。

だからこそ10月相場では、単一の経済指標だけを見るのではなく、米雇用、賃金、インフレ、米長期金利、日銀の金融政策、そして為替政策を一つの流れとして捉えることが重要になります。

9月末に158円台へ上昇したドル円は、10月2日に156円台まで押し戻されました。

この動きは単なる短期的な調整なのか、それとも10月相場の方向性が変わる入り口なのか。

その答えを判断するうえで、今後の米金利と日銀の政策姿勢が大きな意味を持つことになりそうです。

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