【10月8日|ファンダメンタル分析レポート】ドル円158円台、FOMCは追加利上げを示唆 それでも円安が一気に進まない理由

【10月8日|ファンダメンタル分析レポート】ドル円158円台、FOMCは追加利上げを示唆 それでも円安が一気に進まない理由

10月8日の為替市場では、ドル円が158円台を中心に推移しました。

前日のニューヨーク市場ではドル円が158円40銭まで上昇した後、157円92銭まで反落し、最終的には158円08銭前後で取引を終えました。8日の東京市場では一時157円59銭まで下落する場面があったものの、米長期金利の上昇を受けてドル買いが入り、午後には158円20銭台まで戻しています。21時台の市場では158円24~25銭付近となり、当日のレンジは157円59銭~158円30銭程度となっています。

今回の相場を理解するうえで最も重要なのは、単純な「米利上げ期待によるドル高」だけではありません。

FOMC議事要旨、米長期金利、原油価格、欧州の財政問題、そして日銀の今後の利上げ方針。

これら複数の材料が同時に動いているため、ドル円も158円台で方向感を出しにくくなっています。

FOMC議事要旨が示した「年内追加利上げ」

今回の最大の材料は、9月15~16日に開催されたFOMCの議事要旨です。

FOMCでは政策金利を0.25%引き上げ、3.75~4.00%としました。

議事要旨では、インフレ率が依然としてFRBの2%目標を上回っていることに加え、経済活動が堅調に推移しているとの認識が示されています。

さらに、多くの参加者が「年内に追加利上げを行うことが適切になる可能性が高い」と判断していました。

ここは為替市場にとって非常に重要です。

直近では、米雇用関連指標や個人消費支出価格指数が市場予想ほど強くなかったことから、「FRBは追加利上げを急がないのではないか」という見方が広がっていました。

実際、10月会合での利上げ観測は大きく後退しています。

ところが議事要旨を見ると、FRB内部ではインフレに対する警戒感がかなり強い。

つまり、

「10月に必ず利上げする」

という話ではないものの、

「年内にもう一段の利上げが必要になる可能性は十分に残っている」

という状態です。

このため、米金利が下がりにくく、ドルにも一定の下支えが入っています。

ウォラー理事も追加利上げを支持

8日にはFRBのウォラー理事も追加利上げが必要になる可能性が高いとの認識を示しました。

一方で、利上げを毎回連続して行う必要はなく、実施時期には柔軟性を持たせるべきだとの考えも示しています。

この発言は現在のFRBのスタンスをかなり端的に表しています。

インフレを放置するつもりはない。

しかし、経済指標を確認せず機械的に利上げを続けるわけでもない。

したがって、10月27~28日のFOMCでは政策金利を据え置き、12月に追加利上げを検討するというシナリオが現時点では意識されやすくなっています。

この「10月据え置き、12月利上げ」という組み合わせが、今後のドル円を左右する重要なテーマになるでしょう。

米10年債利回りがドル円を支える

8日の東京市場では、ドル円が157円59銭まで下落した後に反発しました。

その背景には米10年債利回りがあります。

午前中には米10年債利回りが5.30%台へ上昇すると、ドル買い戻しが強まりました。

前日のニューヨーク市場でも米10年債利回りは5.28%程度でしたが、時間帯によっては5.36%前後まで上昇しています。

ここまで米長期金利が高いと、日米金利差を背景にドルを買う動きは簡単には消えません。

一方で、ドル円が158円台後半から160円へ一気に上昇するには、さらに米金利が上昇するか、米経済指標が強さを示す必要があります。

現在の市場は、

「米金利は高い」

「FRBも追加利上げを否定していない」

というドル高材料を抱えながら、

「米景気がこの先も同じ勢いで強いのか」

という疑問も同時に抱えています。

このため、158円台では買いと利益確定売りがぶつかりやすくなっています。

原油価格の上昇もドルを支える

もう一つ見逃せないのが原油です。

中東情勢を背景に原油価格は一時的に90ドル台まで上昇しました。

ただし、7日のWTI先物11月限は最終的に88.28ドルまで下落し、8日朝の通常取引では88.96ドルで終えています。時間外を含めると90.98ドルまで上昇した後に反落しました。

原油高は為替市場にとって非常に複雑な材料です。

原油が上昇すると米国を含む各国のインフレ圧力が強まり、中央銀行が利下げしにくくなります。

現在のようにFRBがすでにインフレ警戒を強めている局面では、原油高が追加利上げ期待を支える可能性があります。

その一方で、原油高が長期化すれば世界経済を圧迫します。

特にエネルギー輸入国である日本や欧州にとっては、交易条件の悪化につながりやすい。

したがって原油高は、

短期的にはドル高材料

中期的には世界景気への不安材料

という二面性を持っています。

ドル円158円台、しかし160円は簡単ではない

現在のドル円で最も重要なのが158円台後半から160円付近です。

8日の高値は158円30銭程度までとなっており、159円台にはまだ明確に乗せていません。

これは市場が日本側の材料を完全に無視しているわけではないことを示しています。

日銀については、10月会合で基調的な物価上昇率が2%程度に到達したとの認識を示す可能性が報じられています。

また、日銀の新しい政策委員である佐藤氏も、段階的な利上げを支持する姿勢を示しています。

つまり、日銀の金融正常化そのものが終わったわけではありません。

むしろ市場が警戒しているのは、

「日銀がいつ利上げするのか」

「利上げ後も追加利上げを続けるのか」

という時間軸です。

10月利上げへの期待が後退していることで、短期的には円売りが出やすい。

しかし、基調的な物価上昇が2%に達したという認識が強まれば、12月以降の利上げ期待が再び高まる可能性があります。

そのため、158~160円台ではドル買いだけを一方向に追いかけるのも危険です。

欧州通貨は厳しい状況

一方、ユーロはドルに対して弱い状態が続いています。

8日21時台のユーロドルは1.1189ドル前後。8日のレンジは1.1172~1.1213ドル程度となっています。

前日のニューヨーク市場では1.1165ドルまで下落する場面がありました。

背景にはフランスの財政問題があります。

フランス国債への懸念が強まると、欧州の金融市場全体に対する警戒感が高まり、ユーロ売りにつながりやすくなります。

加えて、欧州中央銀行による追加利上げ期待も後退しています。

米国では「年内追加利上げ」の可能性が残る一方、欧州では金融政策を引き締め方向へ大きく動かす必要性が低下している。

この金融政策の差も、ユーロドルの上値を抑えています。

ユーロ円は177円前後

ユーロ円は8日の東京市場で176円53銭まで下落した後、177円台を回復しました。

21時台では177円07銭前後となっています。

ここではドル円とユーロドルの組み合わせを見る必要があります。

ドル円が158円台を維持しているにもかかわらず、ユーロドルが弱ければ、ユーロ円の上昇には限界があります。

つまり現在のクロス円は、円売りだけで上昇しているわけではありません。

相手通貨そのものの強弱がかなり重要になっています。

主要通貨ペアの現在水準

8日夜の市場では、主要通貨の円に対する水準はおおむね以下のようになっています。

ドル円は158.20円前後。

ユーロ円は177.01円前後。

ポンド円は208.94円前後。

豪ドル円は109.90円前後。

NZドル円は88.47円前後。

カナダドル円は110.92円前後。

スイスフラン円は189.73円前後。

南アランド円は9.50円前後。

トルコリラ円は3.20円前後です。

これを見ると、クロス円全体が極端な円売り一色になっているわけではありません。

特に豪ドル円は110円を挟んで上値が重く、NZドル円も88円台半ばです。

一方、ポンド円は209円前後、スイスフラン円は190円近辺と比較的高い水準を維持しています。

通貨ごとの金融政策や景気見通しによって明暗が分かれている状況です。

ポンド円は209円が重要な分岐点

ポンド円は8日夜で208円94~95銭付近。

当日の安値は208円22銭、高値は209円06銭となっています。

209円台を明確に維持できれば、210円回復が意識されます。

しかし英国でも国債利回り上昇や財政問題への警戒が強まっているため、単純なポンド買いには注意が必要です。

高金利通貨だから強い、というだけでは説明できない相場になっています。

豪ドル円・NZドル円は上値の重さに注意

豪ドル円は109円90銭前後、NZドル円は88円47銭前後です。

豪ドル円は110円を一度上回ったものの、その後は109円台へ戻っています。

8日のレンジも109円63銭~110円15銭程度で、110円台を維持できるかがポイントです。

NZドル円も88円25銭~88円68銭のレンジとなっており、89円回復にはまだ力不足です。

両通貨とも世界的なリスク選好が弱まる場面では売られやすいため、米国株や中国経済、原油価格の動きも確認する必要があります。

カナダドル円は111円がポイント

カナダドル円は110円92銭前後。

8日の高値は111円09銭、安値は110円52銭です。

カナダドルは原油との相関が比較的強いため、原油価格が90ドル台へ戻るようなら111円台を維持しやすくなります。

ただし原油価格が急落すれば、カナダドルも上値を抑えられる可能性があります。

スイスフラン円は190円目前

スイスフラン円は189円73銭前後。

当日の高値は189円98銭と、190円の大台に接近しました。

スイスフランは安全資産として買われる局面がある一方、世界的な金利上昇局面では米ドルが優位になりやすい。

190円を突破して定着できるかは、単純な円安だけでなく、欧州の信用不安や地政学リスクがどう変化するかにも左右されそうです。

10月9日に向けて注目したいポイント

今後のドル円を考えるうえでは、次の三つが重要です。

第一は、米10年債利回りです。

5.30%前後を維持するのか、それとも再び低下するのか。

ドル円158円台の持続力を判断するうえで最も分かりやすい材料です。

第二は、原油価格です。

90ドル台を超えて上昇が続けば、インフレ警戒からFRBの追加利上げ期待が強まりやすくなります。

逆に80ドル台後半へ落ち着けば、利上げ期待の一服を通じてドル高圧力が弱まる可能性があります。

第三は、日銀の利上げ姿勢です。

日銀が基調的な物価上昇率2%を確認し、今後の利上げ継続を明確にしてくれば、158~160円台のドル円には円高方向からの圧力が強くなります。

ドル円の今後のシナリオ

現状では、ドル円は「上昇基調だが、159~160円では簡単に上値を追えない」という見方が妥当でしょう。

まず158円50銭前後。

ここを明確に突破できれば、159円台が次のターゲットになります。

さらに159円台後半まで上昇すれば、160円が心理的な節目として意識されます。

ただし、160円が近づくほど日本政府・日銀による円安けん制への警戒感も強まります。

反対に下方向では、157円60銭前後が最初のポイントです。

8日の安値が157円59銭だったため、この水準を割り込むと短期的なドル買いの勢いが弱まったと判断されやすくなります。

さらに157円台前半を割り込めば、156円台後半から156円台前半までの調整が視野に入ります。

つまり現在は、

158円50銭突破なら159円台

157円60銭割れなら下値調整

という比較的分かりやすい攻防になっています。

まとめ

10月8日の為替市場は、一見するとドル円が158円台で落ち着いているだけに見えます。

しかし、その裏ではかなり大きなテーマが動いています。

FOMC議事要旨では年内追加利上げを支持する見方が多く、FRBのインフレ警戒は依然として強い。

ウォラー理事も追加利上げの必要性を示しつつ、利上げのタイミングには柔軟性を持たせる考えを示しました。

一方で、10月の利上げ期待は低下しており、市場は12月以降に軸足を移しています。

米10年債利回りが5.30%前後という高水準にあることはドルを支えていますが、原油高や世界的な国債利回り上昇は、同時に景気への不安も強めています。

日本では日銀の基調的な物価上昇率が2%に到達する可能性が意識されており、金融正常化そのものが終わったわけではありません。

そのため、現在のドル円は「円安が止まった」のではなく、「米国の高金利と日本の金融正常化が正面からぶつかっている」状態と見るべきでしょう。

ドル円158円台は、米国の金融政策だけを見ればまだドル買いが優勢になりやすい水準です。

しかし159~160円に近づくにつれて、日銀・日本政府側の円安対応への警戒感が高まります。

今後は「米国が利上げするか」だけではなく、「米金利がどこまで上昇するのか」「原油高がインフレを再加速させるのか」「日銀がいつ追加利上げに動くのか」の三点を同時に見る必要があります。

目先のドル円は158円50銭を突破できるかが重要です。

ただし、突破したからといって160円まで一直線に上昇するとは限りません。

むしろ現在の相場では、159円台から160円にかけて、ドル高要因と円高要因が最も激しくぶつかる可能性があります。

短期的には米金利がドル円を支え、中期的には日銀の正常化が円の下支えになる。

この二つの力関係が変化するまで、158円を中心とした高値圏での荒いレンジ相場が続く可能性が高いと考えます。

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