【10月7日|ファンダメンタル分析レポート】ドル円158円50銭へ、日銀の利上げ慎重論と米金利上昇がぶつかる
10月7日の為替市場では、ドル円が158円台前半を中心に推移し、一時158円50銭まで上昇しました。
前日の10月6日は157円77銭から158円25銭まで上昇しており、ドル円は2日続けて上値を切り上げています。
背景にあるのは、日銀の追加利上げが10月には見送られる可能性が高まったことと、米国の長期金利が5.3%前後の高水準を維持していることです。
さらに7日は原油価格が上昇し、ブレント原油が100ドルを再び上回る場面がありました。エネルギー価格の上昇は米国のインフレ懸念を強め、FRBが金融緩和を急ぐことが難しくなるとの見方につながっています。
一方で、ドル円が158円50銭を突破し続けることはできませんでした。
日本側では日銀の金融正常化方針が維持されており、円安が急速に進めば政府・日銀による対応への警戒も強まります。
10月7日は、「ドル高材料が多いのに、なぜ158円台半ばで止まるのか」を考えることが重要な一日でした。
1.ドル円は158円50銭まで上昇
10月7日の東京市場では、ドル円が朝から強含みました。
午前8時時点では158円17銭前後でしたが、米10年債利回りの上昇や前日の植田日銀総裁発言を背景に円売りが進み、午前10時には158円42銭、一時158円47銭まで上昇しました。
その後もドル買いは続き、日銀の17時時点の公表レートは158円10~11銭。
7日の東京市場では158円04銭から158円51銭の範囲で推移しました。
海外市場に入ってからもドル円は158円台を維持し、19時台には158円31銭前後で推移。
日中の高値は158円50~51銭付近となっています。
前週末の米雇用統計後には156円95銭まで下落していたことを考えると、わずか数営業日で1円50銭以上戻したことになります。
この動きだけを見ると、ドル円の上昇トレンドが再開したようにも見えます。
しかし、実際にはまだ「160円方向への再上昇が確定した」とまでは言えません。
158円50銭前後には、これまで何度も意識されてきた200日移動平均線が位置しているためです。
2.日銀の10月利上げ観測が後退
今回のドル円上昇を理解するうえで重要なのが、日銀の金融政策です。
10月6日、日銀関係者の話として「日銀は基調的な物価上昇率が2%程度に達したとの認識を示す方向で検討している」と報じられました。
一方で、10月30~31日に予定される金融政策決定会合での追加利上げについては慎重な見方が多いとされています。
この情報を市場は円売り材料として受け止めました。
「基調インフレは2%に到達」
それでも、
「10月にはすぐ利上げしない」
という組み合わせだからです。
日銀が1.25%まで利上げした直後という事情もあり、政策効果を見極める時間を置くとの判断は市場から見ても理解しやすいものです。
その結果、短期的な日米金利差縮小への期待が後退し、ドル円には買い戻しが入りました。
3.しかし「10月利上げ見送り」は円安の決定打ではない
ここで注意したいのが、10月の利上げ観測が後退したからといって、日銀が金融正常化を止めたわけではないことです。
植田総裁は6日の全国証券大会で、基調的な物価上昇率が2%に近づいているとの認識を示しました。
さらに、物価が2%を超えて上振れするリスクが経済に悪影響を与えないよう、2%程度で安定させることが重要だと説明しています。
また、日銀の佐藤綾乃審議委員も7日、政策金利を段階的に調整していく方針を支持する姿勢を示しました。9月会合で利上げに反対した理由については、個人消費の勢いがそれほど強くないことを挙げています。
ここから読み取れるのは、
「利上げに反対」ではなく、
「経済を確認しながら段階的に利上げする」
という姿勢です。
そのため、10月の利上げが見送られたとしても、12月以降の利上げ観測が残る限り、円安の上値には限界があります。
4.日本の賃金は依然として高い伸び
7日に発表された8月の毎月勤労統計では、現金給与総額が前年同月比3.8%増となりました。
市場予想は3.7%増、前回は4.3%増に改定されています。
伸び率自体は前月から鈍化しています。
ただ、3%台後半という数字は、日銀が賃金と物価の好循環を確認するうえで十分に無視できない水準です。
物価が上昇し、賃金も比較的高い伸びを維持するのであれば、日銀が「物価安定目標2%の達成」を理由に金融政策を正常化していく余地は残ります。
つまり、日本のファンダメンタルズは円安を全面的に支持しているわけではありません。
10月利上げが見送られる可能性と、中長期的な追加利上げの可能性が同時に存在していることが、現在の円相場を複雑にしています。
5.米10年債利回りは5.3%前後
ドル円を支えたもう一つの柱が米長期金利です。
7日の東京時間には米10年債利回りが5.3%前後で高止まりしました。
ドル円にとっては非常に重要な水準です。
前週末の弱い米雇用統計を受ければ、本来なら米金利低下→ドル売りという流れが強まってもおかしくありません。
しかし、米国では雇用だけでなくインフレも問題になっています。
5日に発表された9月ISM非製造業景況指数は54.9と市場予想をやや下回りましたが、仕入れ価格指数は74.0まで上昇しました。
景気の減速感が出る一方、価格圧力は残っています。
さらに7日は原油価格が上昇し、ブレント原油が100ドル台へ戻りました。中東情勢による供給不安などが背景です。
原油高はガソリンや輸送費などを通じてインフレ圧力を高める可能性があります。
そのため市場では、
「米雇用は弱い」
一方で、
「インフレは簡単には収まらない」
という相反する材料が意識されています。
これが米長期金利を押し下げきれない要因になっています。
6.原油100ドルが再びドルを支える
7日の相場で見逃せないのが原油価格です。
ブレント原油は100ドルを上回る場面があり、ドルは主要通貨に対して買われました。ロイターによると、ドル指数は102.49まで上昇し、前日の下落から反発しています。
原油高とドル高が同時に進むのは、現在の市場環境を象徴しています。
通常、原油高は資源国通貨を支える材料になります。
しかし今回の原油高が「世界的な需要拡大」ではなく「中東の供給不安」によるものであれば、意味が変わります。
供給不安による原油高は、インフレを押し上げながら景気を圧迫する可能性があるためです。
FRBにとっては厄介な状況です。
景気が弱くなれば利下げしたい。
しかし原油高によってインフレ率が上昇すれば、利下げを急ぎにくい。
このため市場では安全資産としてドルが買われやすくなっています。
7.FOMC議事要旨が最大の焦点
10月7日の夜から8日未明にかけて、最大のイベントとなるのが9月15~16日に開催されたFOMCの議事要旨です。
FRBは9月会合で政策金利を0.25%ポイント引き上げ、3.75~4.00%としました。
2023年以来となる利上げでした。
しかし、その後に発表された米雇用統計は弱い内容でした。
そのため市場が議事要旨から確認したいのは、「9月時点でFRB内部にどの程度の利上げ継続論があったのか」です。
ロイターによると、9月会合では全会一致で利上げを決定したものの、今後の政策については意見の幅が大きいとみられています。
インフレ抑制のため追加利上げが必要と考えるメンバーがいる一方、雇用やインフレの鈍化を踏まえて慎重な姿勢を取るメンバーもいます。
市場では10月利上げ確率が21.6%まで低下し、1週間前の約51%から大きく後退しました。
12月利上げについては68.6%が織り込まれています。
つまり現時点の市場は、
「10月は利上げ見送り」
「12月はまだ利上げの可能性あり」
という見方を中心に形成されています。
議事要旨がタカ派的なら、米金利上昇とドル買いが強まりやすいでしょう。
逆に慎重な意見が多ければ、ドル円は158円台から下押しされる可能性があります。
8.ドル円の最大の壁は158円50銭
10月7日のドル円は158円51銭近辺まで上昇しました。
これは単なる偶然の数字ではありません。
現在の市場では200日移動平均線が158円50銭前後に位置しており、テクニカル面で重要な抵抗線になっています。
7日の日銀公表レンジも158円04銭~158円51銭でした。
つまり、ドル円はちょうど重要な抵抗帯に到達したところです。
ここを明確に上抜ければ、
158円50銭
↓
159円
↓
160円
という流れが想定されます。
ただし、159~160円に近づくほど円安けん制への警戒が強まります。
一方、158円50銭を超えられずに157円台へ戻れば、まず157円、次に156円台後半が意識されます。
前週末の156円95銭は、短期的な重要サポートです。
9.ユーロドルは再び1.12ドル割れを意識
10月7日のユーロは大きく売られました。
東京時間17時のユーロドルは1.1189~91ドル。
日中レンジは1.1185~1.1257ドルでした。
19時台には1.1174ドル付近まで下落しています。
ユーロが弱い最大の理由は、フランスの財政問題です。
フランスでは財政赤字をめぐる政治的不透明感が強く、国債利回りの上昇が続いています。
さらにスペインでも政治的不安が加わり、欧州全体の財政リスクが意識されました。
ロイターによると、ユーロは1.1166ドルまで下落し、17カ月ぶりの安値に近づいています。
このため、現在のドル高には米国側の金利だけでなく、欧州側のユーロ安も寄与しています。
ドル円だけを見るとドル全面高のように見えますが、ユーロドルを見ると「欧州側の弱さ」がかなり大きな要因になっています。
10.ユーロ円は177円割れ
ユーロ円もユーロドルの下落を受けて軟調でした。
日銀17時時点では176円91~95銭。
日中のドル円が158円50銭まで上昇したにもかかわらず、ユーロ円は177円を割り込みました。
19時台では176円84銭前後まで下落しています。
これは非常に興味深い値動きです。
ドル円では円安が進んでいるのに、ユーロ円では円高方向に動いています。
その理由は、円よりもユーロの弱さが大きいためです。
つまり現在の為替市場では、すべてのクロス円が同じ方向に動いているわけではありません。
通貨ごとのファンダメンタルズを見る必要があります。
11.主要クロス円の水準
10月7日夜の主要通貨の参考水準は以下の通りです。
- ドル円:158円20~30銭台
- ユーロ円:176円80銭前後
- ポンド円:208円90~209円00前後
- 豪ドル円:110円前後
- NZドル円:88円50銭前後
- カナダドル円:111円前後
- スイスフラン円:190円前後
- 南アランド円:9円50銭前後
- トルコリラ円:3円20銭前後
- メキシコペソ円:8円台後半
19~21時台の市場データでは、ドル円158円26銭前後、ユーロ円176円84銭、ポンド円208円93銭、豪ドル円109円99銭、NZドル円88円48銭、カナダドル円111円00銭、スイスフラン円190円00銭、南アランド円9円48銭付近でした。
ポンド円は一時210円21銭まで上昇しましたが、その後は209円前後へ下落。
豪ドル円も110円64銭まで上昇した後、110円前後まで押し戻されています。
クロス円全体では、円安が進んでいるというより、通貨ごとの強弱がはっきりしてきたと見るべきでしょう。
12.日経平均は大幅安、円相場への影響は限定的
7日の日経平均株価は7万35円71銭と、前日比648円27銭安となりました。
一方、ドル円は158円台で底堅く推移しています。
通常であれば、日本株が大きく下落するとリスク回避による円買いが強まる可能性があります。
しかし今回は円買いが限定的でした。
その背景には米金利の高さがあります。
日本株の下落だけで円高になるほど、現在のドル円市場は単純ではありません。
むしろ、
日本株安
↓
リスク回避
と、
米金利高
↓
ドル買い
がぶつかり、結果としてドル円は158円台にとどまりました。
このような状況では、米国債利回りの変化が円相場を左右する力が大きくなります。
13.10月相場は「160円突破」が簡単ではない
ここまでの値動きを整理すると、ドル円は156円95銭から158円50銭まで反発しています。
しかし、この上昇がそのまま160円突破につながるとは限りません。
理由は3つあります。
第一に、米雇用統計が弱いこと。
9月非農業部門雇用者数は2万9000人増にとどまり、失業率も4.2%へ上昇しました。
第二に、FRBの10月利上げ観測が大幅に後退していることです。
10月利上げ確率は21.6%まで低下しています。
第三に、日銀が金融正常化を続ける方針を維持していることです。
10月利上げには慎重でも、基調的な物価上昇率が2%に近づいていることを確認し、将来的な追加利上げを否定していません。
この3つを考えると、158円50銭を突破しても159~160円では再びドル売り・円買いが入りやすくなります。
14.一方で157円割れも簡単ではない
反対に、ドル円の下落も簡単ではありません。
米10年債利回りが5.3%前後で推移しているためです。
また、原油価格が100ドルを超える局面では、米インフレが再加速する可能性が意識されます。
FRBが利下げを急げないとの見方が残る限り、ドルを大きく売り込む材料も不足します。
したがって、短期的には157~158円50銭程度のレンジが意識されます。
158円50銭を上抜けるか。
それとも157円を割り込むか。
この2つのどちらかを確認してから、次の方向性を判断するのが現時点では妥当でしょう。
15.FOMC議事要旨で確認したい3つのポイント
10月7日から8日にかけて発表されるFOMC議事要旨では、特に3点に注目したいところです。
一つ目は、9月利上げに対する認識です。
単なるインフレ対応なのか、それとも今後も継続的な利上げを想定していたのか。
二つ目は、雇用市場に対する評価です。
9月雇用統計は会合後に発表されたため、議事要旨では現在の弱い雇用統計は反映されていません。
しかし、会合時点で雇用市場のリスクをどの程度警戒していたのかは確認できます。
三つ目は、12月の政策判断です。
9月FOMCでは2026年中にもう一段の利上げを見込む参加者が多かった一方、その後のデータで市場の見方は変化しています。
議事要旨から12月利上げの可能性を読み取ることができれば、ドル円の次の方向性を考える材料になります。
まとめ
10月7日の為替市場は、ドル円が158円50銭付近まで上昇し、9月25日以来の高値圏に到達しました。
東京時間10時には158円47銭まで上昇し、17時時点でも158円10~11銭と158円台を維持しています。
ドル円を押し上げたのは、米10年債利回りが5.3%前後で高止まりしたこと、原油価格が100ドル台へ上昇したこと、そして日銀の10月利上げ観測が後退したことです。
特に日銀については、「10月の利上げ見送り」と「今後の利上げ継続」を分けて考える必要があります。
植田総裁は基調的な物価上昇率が2%に近づいていると説明しており、金融正常化の方向性そのものは維持しています。
一方、米国では9月雇用統計が弱く、10月FOMCでの利上げ観測は21.6%まで低下しています。
それでも米長期金利が高く、原油価格が上昇しているため、ドル売りが一方向に進む状況にはなっていません。
欧州ではフランスの財政不安が再びユーロ売りを誘い、ユーロドルは1.12ドル割れをうかがう水準まで下落しました。ユーロ円も176円台後半へ下落しています。
現在のドル円にとって最大のポイントは158円50銭前後です。
ここを明確に突破すれば159円、さらに160円が意識されます。
ただし160円に近づくほど日本側の円安けん制や為替介入への警戒は強まりやすくなります。
反対に157円を割り込めば、156円台後半、さらに156円付近が次の下値として意識されるでしょう。
そして、10月7日夜から8日未明にかけて最大の材料となるのがFOMC議事要旨です。
9月会合では利上げが全会一致だった一方、今後の政策についてはFRB内部にかなり幅広い意見があるとみられています。
そのため今回の議事要旨では、単に「利上げした」という事実を見るのではなく、「次の利上げをどの程度必要と考えていたのか」を確認する必要があります。
米雇用は弱い。
米インフレは完全には収まっていない。
米金利は高い。
日銀は10月利上げに慎重だが、中期的な追加利上げ姿勢を維持している。
この4つが現在のドル円を動かしています。
158円50銭を突破できるか、それとも跳ね返されるか。
10月相場の次の方向を決めるうえで、この水準とFOMC議事要旨の組み合わせが重要な分岐点になりそうです。

コメント