【11月5日|ファンダメンタル分析レポート】英中銀は約3年ぶり利上げも連続利上げは約束せず、ドル円は157円台後半から158円台半ばへ——米雇用統計が今週の総仕上げ
1.本日の為替市場:東京で円高、海外でドル買い戻し
11月5日の為替市場は、東京時間と海外時間で流れが反転した。東京時間は、中間選挙後のドル安と原油安が続き、ドル円は朝の158.44円を高値に157.79円まで下落した。日経平均株価が1,000円超下げたこともあり、リスク回避の円買いが広がった。
ロンドン時間に入るとドルが買い戻され、ドル円は158円台を回復した。英中銀の利上げで英国債利回りが上昇し、それが米国債利回りの上昇にも波及した。米新規失業保険申請件数が約57年ぶりの低水準となったこともドルを支え、NY時間朝には158.50円と本日の高値を更新した。日本時間6日未明の時点で、ドル円は158円台半ばで推移している。
ユーロドルは東京時間に1.1268ドルまで上昇したが、海外時間には1.123ドル前後へ反落した。ドル指数は前日に約5週間ぶりの安値をつけた後、本日は下げ止まった。
選挙後のドル安・原油安という流れと、米国の労働市場の強さという流れがぶつかっている。ドル円は158.60円付近の200日移動平均線を前に、上値を抑えられる展開がここ数日続いている。
2.英中銀は約3年ぶりの利上げ、ただし連続利上げは約束せず
英中銀(BOE)は5日、政策金利を0.25ポイント引き上げて4.00%とした。利上げは2023年8月以来、約3年ぶりとなる。採決は8対1で、反対したマン委員は0.5ポイントの大幅利上げを主張した。つまり9人全員が利上げを支持しており、前回9月の6対3(据え置き)から大きく転換した。
英中銀は、中東情勢でエネルギー価格が高止まりし、それが他の物価にも波及するリスクが高まっていると説明した。インフレ率は2027年4〜6月期に4.9%程度でピークをつけると予想しており、前回の見通しから引き上げている。
ポンドは発表直後に買われ、ポンドドルは1.3451ドルから1.3482ドルへ、ポンド円は213.04円から213.55円へ上昇した。ただ、その後は伸び悩んだ。ベイリー総裁は、今回を長い連続利上げの初回と受け止めるべきではないと述べる一方、中東の紛争が解決しない限り、今回が最後の利上げになるとも考えにくいとした。次回12月の会合については明言しなかった。
先日の豪中銀と同じく、利上げそのものより「次の一手」が通貨の方向を決めた。ベイリー総裁は原油価格の下落を前向きなニュースだと評価しており、今後の利上げは中東情勢と原油次第という姿勢が鮮明になった。
3.米国:失業保険申請は約57年ぶりの低水準、金利は東京で低下後に反発
日本時間22時30分に発表された米国の新規失業保険申請件数は18.9万件と、予想の19.6万件を下回った。約57年ぶりの低い水準で、9月中旬からおおむね20万件を下回って推移している。企業が人員削減を控えており、労働市場の底堅さが改めて確認された。
米10年債利回りは、東京時間に4.835%前後まで低下した。前日の原油急落と選挙後の財政拡張期待の後退が重しとなったためだ。しかし海外時間には、英中銀の利上げを受けた英国債利回りの上昇が波及し、NY時間の取引開始時には4.90%前後へ戻した。
これで今週は、求人件数、ADP雇用統計、失業保険申請と、労働市場の強さを示す指標が続いた。市場では、FRBが12月に利上げする確率を8割近くと見込んでいる。選挙結果は政治面でドルの重しとなったが、金融政策面ではドルを支える材料が積み上がっている。
こうした状況で迎える6日の雇用統計は、選挙後の「ドル安」と労働市場の「ドル高」のどちらが勝るかを決める重要な試金石となる。
4.原油は3日続落後に下げ止まり、選挙結果が停戦期待を後押し
前日4日のWTI原油は8%超下げて88ドル台で引け、1カ月ぶりの安値となった。ブレント原油も約1カ月ぶりに100ドルを割り込んだ。バンス副大統領が対イラン戦争を共和党の敗因の一つと述べ、トランプ大統領も英紙のインタビューでイランへの攻撃を直ちに行う計画はないと語ったことで、戦争終結への期待が強まった。
選挙で示された生活費の高騰への不満は、政権に紛争の早期終結を迫る圧力になるとの見方がある。原油安はインフレ懸念を和らげ、米金利とドルの重しとなっている。金価格は4日に約3%上昇し、5日も1オンス4,100ドル台で推移した。
ただし、5日の原油は下げ止まり、小幅に反発した。ホルムズ海峡ではタンカーなどの火災が伝わっており、緊張は続いている。調査会社のユーラシア・グループは、米国がイランへの攻撃を再開する確率を60%に引き下げた一方、合意に至る確率も10%へ引き下げた。攻撃が再開されれば、ブレント原油は110〜125ドルへ急騰するとの見方も示している。
原油は「停戦期待」と「交渉の停滞」の間で揺れている。原油が再び上昇に転じれば、今週の原油安・ドル安の流れが逆転する可能性がある点に注意したい。
5.日本側:日銀議事要旨はタカ派、日経平均は4日続落
日銀は5日朝、9月の金融政策決定会合(政策金利を1.25%に引き上げた会合)の議事要旨を公表した。大方の委員が、基調的な物価上昇率が2%目標を超えて上振れていくリスクがあるとの認識を共有していた。利上げに前向きな議論が確認されたことで、12月の追加利上げ観測を支える内容となり、東京時間の円買いの一因となった。
日経平均株価は1,110円安の61,077円と4日続落した。前日の米国株は大きく上昇したが、東京では半導体・AI関連の値がさ株が売られた。アドバンテストと東京エレクトロンの2銘柄だけで指数を大きく押し下げた一方、TOPIXは1%超上昇し、値上がり銘柄はプライム市場の7割を超えた。民主党の勝利でAI規制が強まるとの懸念が、半導体株に集中して表れた形だ。
高市首相は、中間選挙の結果を受けても、トランプ大統領と協力して日米関係の強化を続ける考えを示した。為替政策の面で直ちに変化が出るとの見方は少ない。
不動産の観点では、株安の中身に注目したい。指数は大きく下げたが、不動産や小売りなど内需関連は買われた。米国の政治変化でハイテク株への資金が細る一方、国内の実物資産や内需株へ資金が移る動きが続くかどうかは、不動産市場の先行きを考えるうえでも見ておきたい。
6.主要通貨ペア10組のファンダメンタル分析
以下は11月5日に報道で確認できた水準と材料をもとにした分析である。NY市場の終値は執筆時点で確定していないため、確認できていない通貨ペアは数値を避け、本日特有の材料と方向性を中心に整理する。
(1) ドル円(USD/JPY)
東京時間に157.79円まで下落した後、海外時間に158.50円まで買い戻された。日銀議事要旨と株安が円を支える一方、米金利の反発と労働指標の強さがドルを支えた。158.60円付近の200日線を抜けるかどうかは、6日の雇用統計次第となる。
(2) ユーロドル(EUR/USD)
原油安を背景に東京時間に1.1268ドルまで上昇し、4日連続の上昇となる場面があった。ただ海外時間は米金利の反発で1.123ドル前後へ押し戻された。エネルギー輸入地域である欧州にとって原油安は追い風だが、ユーロ自体の買い材料はまだ乏しい。
(3) ポンドドル(GBP/USD)
英中銀の利上げと全員一致の利上げ票を受けて1.3482ドルまで上昇したが、ベイリー総裁が連続利上げを約束しなかったことで伸び悩んだ。今後の利上げが中東情勢と原油次第となったことで、原油安はポンドの上値を抑える要因にもなりうる。
(4) ユーロ円(EUR/JPY)
東京時間は177.69〜178.05円の狭い範囲でもみ合った。ユーロドルの上昇と円高が打ち消し合い、方向感は出ていない。前日は178.48円まで上昇しており、178円台半ばでは上値の重さが意識される。
(5) ポンド円(GBP/JPY)
英中銀の発表後に213.04円から213.55円まで上昇した。英国の利上げで日英の金利差が広がり、円売り・ポンド買いが入りやすい地合いだ。ただし、ベイリー総裁の慎重な姿勢で上昇の勢いは限られた。
(6) 豪ドル円(AUD/JPY)
豪州の9月貿易黒字は28.26億豪ドルと、予想の10億豪ドルを大きく上回った。ただ、豪中銀が利上げ打ち止めに近い姿勢を示したことや、日本株の下落によるリスク回避が上値を抑えている。
(7) NZドル円(NZD/JPY)
ニュージーランドでは7日(土)に総選挙が予定されている。週明けの市場では結果への反応が出る可能性があり、週末を前にNZドルの持ち高を減らす動きが出やすい点に注意したい。
(8) カナダドル円(CAD/JPY)
原油は前日の急落から下げ止まったが、水準は1カ月ぶりの安値圏にある。産油国通貨のカナダドルにとっては逆風が続く。中東情勢の報道で原油が急反発すれば、カナダドルも持ち直しやすい。
(9) スイスフラン円(CHF/JPY)
日本株の下落局面では、フランと円がともに安全資産として買われやすい。両通貨の強さが拮抗しやすく、フラン円は方向感に乏しい。世界的な株価の動きが当面の材料となる。
(10) 南アフリカランド円(ZAR/JPY)
金価格が1オンス4,100ドル台へ上昇したことは、金産出国の通貨であるランドを支える。ただし、ドル円の振れが大きく、米金利の反発は新興国通貨にとって逆風となる。雇用統計後の米金利の動きに注意したい。
7.今後の展望:米雇用統計が今週の総仕上げ
今週最後の大きな材料は、6日(金)日本時間22時30分に発表される米国の10月雇用統計である。非農業部門雇用者数は6.5万人前後の増加、失業率は4.2%で横ばいが予想されている。同日にはミシガン大学消費者信頼感指数の速報値も発表される。週末の7日にはニュージーランドの総選挙もある。
ドル円のシナリオは次のように整理できる。
- 雇用統計が予想を上回る:今週の求人件数、ADP、失業保険申請に続いて労働市場の強さが確認され、FRBの12月利上げ観測が一段と強まる。米金利の上昇とともに、158.60円付近の200日線を上抜けて159円を試す展開が考えられる。
- 雇用統計が予想並み:12月利上げの見方は維持され、ドル円は157円台後半から158円台のレンジにとどまりやすい。
- 雇用統計が予想を下回る:選挙後の米金利低下と原油安に重なり、ドル売りが加速しやすい。157円台前半から157円割れが視野に入る。
今週は、中間選挙、豪中銀、英中銀と大きなイベントを通過しても、ドル円は157円台半ばから158円台後半のレンジを抜けられなかった。雇用統計がそのレンジを破る材料になるかが焦点となる。なお、159円に近づく局面では介入への警戒も意識しておきたい。
まとめ
11月5日の為替市場は、東京時間の円高と海外時間のドル買い戻しが交錯した。東京では日銀議事要旨のタカ派的な内容と日経平均の4日続落で円が買われ、ドル円は157.79円まで下落した。海外では英中銀の利上げを機に米金利が反発し、失業保険申請の低水準も重なって、ドル円は158.50円まで戻した。
英中銀は約3年ぶりに利上げしたが、ベイリー総裁は連続利上げを約束せず、今後の判断を中東情勢と原油に委ねた。豪中銀に続き、「利上げ後の姿勢」が通貨を動かす展開となった。選挙後のドル安と労働市場の強さによるドル高がせめぎ合うなか、6日の雇用統計がどちらに軍配を上げるのか。週末を前に、レンジを抜ける材料を見極めたい。

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